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ヒガンバナ(曼珠沙華)の毒は危険?毒抜きの方法は?

ヒガンバナは、その名の通り秋のお彼岸に合わせて花の見頃を迎えます。土手やあぜ道に独特の形をした赤い花がいくつも並ぶと、目にとまりますよね。

しかし、その美しい花とは裏腹にヒガンバナは毒をもっているので取り扱いには注意が必要です。今回はヒガンバナの毒性についてや毒抜きの方法などを詳しくご紹介します。

ヒガンバナ(曼珠沙華)は毒をもった草花なの?

ヒガンバナは、7~10月頃に開花期を迎える赤色の花びらと、花が咲き終わってから葉っぱが生える特殊な性質をもった草花です。

お彼岸にあたる秋分のあ日の前後3日間だけ花を咲かせることが名前の由来で、リコリスや曼珠沙華(曼珠沙華)という別名でも知られています。

ヒガンバナは、花全体にリコリンやガラタミンなど約20種の有毒アルカロイドをもっています。

毒は特に球根に多く含まれ、毒抜きせずに食すと30分以内に激しい下痢や嘔吐に見舞われ、ひどい場合は呼吸不全や痙攣、中枢神経麻痺といった深刻な症状を引き起こします。

ヒガンバナ(曼珠沙華)の毒の作用や致死量は?

ヒガンバナは、草姿がノビルやアサツキに似ている植物です。そのため、誤って食べてしまい体調を崩すことがよくあります。

誤って食べた場合、特別な解毒剤などはないため、催吐薬や下剤を投与しての対症療法を行う必要があります。

ヒガンバナは、球根1gあたりに約0.15mgのリコリン、0.019gのガラタミンを含んでいるとされています。リコリンの致死量は10gなので、球根を1個食べても重篤な症状に至ることは基本的に少ないです。

ただ、乳幼児が摂取して中毒症状が起こった場合、嘔吐物が気管内に吸い込まれて窒息してしまう場合があるので注意してください。

ヒガンバナ(曼珠沙華)がお墓の近くに植えてあるのはなぜ?

ヒガンバナは、球根に毒をもつ植物として古くから知られており、地中の動物にも効果があると信じられてきました。

そのため、昔からヒガンバナをお墓の近くに植えることでもぐらやネズミ、土中の生き物から土葬した遺体を守り、傷つけられないようにするためお墓の近くに植えられているのです。

ヒガンバナ(曼珠沙華)は毒を抜けば食用にできる?

ヒガンバナは、その毒性によって畑や田んぼ、お墓の近くに植えて作物や遺体を守る役割を果たしてきました。また、鎌倉時代や戦時中には、作物を守るだけではなく救荒作物として利用されていたのです。

大きなたまねぎのような形をした球根には、デンプンが豊富に含まれています。

有毒植物なので年貢の対象外とされていたことから、食料が手に入らないときや深刻な米不足が起こったときには、イモと並ぶ貴重なエネルギー源とされていました。

昭和初期には、ヒガンバナからデンプンを製造する企業もあったんですよ。

ヒガンバナ(曼珠沙華)の毒抜きの方法は?

ヒガンバナは、しっかりと毒抜きを行うことではじめて食べることができる植物です。正しく毒抜きができていないと、嘔吐や下痢などの症状を引き起こし、皮膚が弱い方が触れるとかぶれる可能性があります。

特に切り口から出る汁には注意してください。食用のための毒抜きは、慣れている方以外は行わないのが賢明です。

方法

1. 球根の外側を覆っている黒い皮を剥ぐ
2. おろし金やすり鉢を使って丹念にすりつぶす
3. 水でよく洗い、最低7回以上流水にさらして数日間毒を流す
4. 鍋で煮込み、天日干しにしてよく乾燥させて粉状にする

ヒガンバナ(曼珠沙華)の毒は薬になる?

「毒と薬は表裏一体」というように、精製されたヒガンバナの球根は、「石蒜(セキサン)」や「ヒガンバナ根」の名で漢方薬として利用されることがあります。

消炎作用や利尿作用があり、茎を刻んで搾取した汁で患部を流すとよいとされているほか、根をすりつぶしたものを張り薬にすると、むくみやあかぎれ、関節痛を改善する効果が期待されます。

また、最近ではヒガンバナに含まれるガランタミンが記憶機能を回復させるとして、アルツハイマー型認知症の薬に利用されるようになりました。

ただ、薬として使用するには、毒の量を調節できる正しい知識と的確な処置が必要なので、専門家でない限り家庭薬としての利用は控えるようにしてください。

ヒガンバナ(曼珠沙華)の毒は知ることが大切

ヒガンバナは、人間に被害を及ぼすなど毒があることから嫌われることの多い草花です。

しかし、「情熱」「また会う日を楽しみに」「転生」といった花言葉があるように、飢饉を救うほど豊富な栄養や薬用、もぐらやネズミを寄せ付けない効果があるなど、私たちの生活に恩恵をもたらしてくれる場合もあります。

毒による悪い面だけでなく、よい面もあることがわかると、ヒガンバナを好きになれるかもしれませんね。

参考文献: 福岡市保健環境研究所保健科学課「HILIC-MS/MS によるヒガンバナ科植物中の
リコリンおよびガランタミンの分析」

更新日: 2019年12月03日

初回公開日: 2015年08月04日

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