山椒の実には独特な風味があります。葉をそのまま彩りとして添えたり、果皮を粉にしてうなぎの蒲焼きに振りかけたり、七味唐辛子の薬味に使われることでも知られる植物です。「山椒は小粒でもピリリと辛い」ということわざをご存知の方も多いのではないでしょうか?ただ、花や木の姿はあまり知られていません。今回は、そんな山椒の実の効果や花言葉、種類についてご紹介します。
山椒(サンショウ)の学名・原産国・英語
- 学名
- Zanthoxylum piperitum
- 科・属名
- ミカン科・サンショウ属
- 英名
- Japanese pepper
- 原産地
- 日本
- 開花期
- 4~5月
- 花の色
- 黄、黄緑
- 別名
- ハジカミ(椒)
山椒とは?どんな花や実をつける植物?
サンショウ(山椒)は、日本から朝鮮半島、中国に分布する落葉低木です。雌雄異株で、樹高は2~5mほどに生長し、枝にはトゲがあり対生します。
4~5月に黄緑色の5mmほどの小さな花を咲かせ、花が咲いたあと、雌株だけに球形の青緑色の果実をつけます。その後9~10月頃に赤褐色に熟すと裂開して、黒い種子が飛び出ます。
サンショウは花や芽、若葉、蕾、果実が食用され、舌が痺れるような辛味と、柑橘のようにさわやかでスパイシーな香りが特徴です。
名前の由来は?
サンショウ(山椒)の「椒」の字には芳しいという意味があり、「山にある香り高い植物」から和名が付けられました。別名の「ハジカミ」は、古くから辛いものに対して使われる言葉で、ショウガのことを指す場合もあります。またサンショウの若葉を「木の芽(キノメ)」と呼ぶ地域もあります。
学名の「Zanthoxylum」にはギリシャ語で「黄色い木材」、「piperitum」には「コショウのような」という意味があります。
山椒の実の効能は?毒もみ(根流し、毒流し)に使われた?
サンショウの実には、タンパク質や炭水化物、ビタミンB1やB2、その他カルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、鉄などのミネラル類が含まれています。葉や果実にはシトロネラール、リモネン、ゲラニオールなどの精油が含まれており、これらがサンショウ特有のさわやかな香りを特徴づける成分です。
またサンショオールやサンショアミドなどの辛味成分は、大脳を刺激し、内臓器官の働きを活発にさせる作用があるとされ、胃腸の働きが弱くなった消化不良、腹の冷え、腹部のガスの停滞やそれに伴う腹痛に効果があります。
山椒を使った「毒もみ(根流し、毒流し)」
サンショウに含まれるサンショオールは、魚にとって麻痺効果のある毒性成分です。
かつてはサンショウの木の皮などを臼でついて細かくしたものを、木灰とあわせて川の中に入れて流し、魚をしびれさせて漁をする「毒もみ」という漁法に使われていました。現在では、水産資源保護法によってこの漁法は禁止されています。
山椒(サンショウ)の種類や品種は?
主な種類
- イヌザンショウ(犬山椒):Zanthoxylum schinifolium
サンショウ同様に日本各地の山野に自生しますが、果実や葉、幹に特有の臭いがあり食用には向きません。サンショウに比べて小葉が細長く、開花期も7~8月頃と遅く、トゲが互生するのが特徴です。接ぎ木苗の台木として使われます。
- カラスザンショウ(烏山椒):Zanthoxylum ailanthoides
明るい場所にまっ先に育つパイオニアプランツのひとつで樹高は6~8m、大きいものは15mほどに生長する高木です。葉や果実に独特の強い臭気があり食用には向きません。葉軸や枝、幹にトゲがあります。
- ヒレザンショウ(鰭山椒):Zanthoxylum beecheyanum var. alatum
本州南部~沖縄に見られる常緑低木です。葉はツヤがあり先端が丸いのが特徴で、互生し、薬用になります。葉や果実には柑橘のような爽やかな香りがあります。
- カホクザンショウ(華北山椒):Zanthoxylum bungeanum
中国原産で、中国に広く分布しています。「ホアジャオ(花椒)」と呼ばれる果実には強い辛味と風味があり、特に四川料理のしびれるような辛味のもととなっています。ミックススパイス「五香粉」や、薬用にも使われています。
主な栽培品種
- アサクラザンショウ(朝倉山椒)
トゲのない品種で雄雌株に分かれておらず、1本で果実を付けることができます。果実は、大粒で香りがよく、果皮から種子を簡単にはがせることが特徴で、主に生果で流通利用されます。兵庫県(旧・養父郡)養父市八鹿町朝倉が原産とされ、ほか各地にも分布が見られます。
- ブドウザンショウ(葡萄山椒)
アサクラザンショウを親とする品種です。樹高は低く、小さなトゲがあります。大粒の果実をたたわにつけることが特徴です。果実を乾燥させてうなぎなどにふりかける香辛料や生薬として使われます。
山椒(サンショウ)の花言葉、由来は?
『健康』『魅惑』『好意』
「健康」という花言葉は、お正月に飲む「お屠蘇(おとそ)」に山椒が使われることに由来し、お屠蘇は1年の邪気を払い、身体を蘇らせるために、無病長寿を願って飲まれる風習にちなんでつけられたといわれています。
「魅惑」は、食欲のないときでも、山椒の花や実がもつ独特な香りにひきつけられることからきているといわれています。
山椒(サンショウ)の木を栽培して、実を味わい尽くそう
画像提供: 一般社団法人 和ハーブ教会(『和ハーブ図鑑』200頁)
サンショウの若葉は「木の芽」と呼ばれ、和食料理の彩りに欠かせない食材です。苦味が少なく香りや食感の良い「花山椒」も珍重されており、雄木の開花前のつぼみを摘みとって利用します。そのほか、太い幹や枝は、すりこぎの材として使われてきました。
このようにサンショウの木は葉・花・果実と、まるごと食に利用でき、美容や健康の機能性にも優れていることが魅力です。ぜひ、山椒の木をおうちで栽培してみてくださいね。
更新日: 2023年06月14日
初回公開日: 2015年10月20日