土で周りが汚れたり、虫がわいたりといったトラブルが起こって、観葉植物の栽培にとまどっている人も多いのではないでしょうか。そんな心配を解消してくれるのが、「ハイドロカルチャー」という方法です。
丈夫で育てやすいパキラなら、ハイドロカルチャーで栽培を楽しめますよ。
今回は、パキラをハイドロカルチャーで育てる方法や、植え替えをする方法をご紹介します。
ハイドロカルチャーとは?パキラは土がなくても育つ?
そもそも土には「植物を支える」「水や栄養を根に送り届ける」「根を有害物質や衝撃から守る」といった役割があります。
この土の役割を他のものに置き換えるのが「ハイドロカルチャー」で、パキラはもともと丈夫な特徴もあってこの方法で育てられます。
パキラをハイドロカルチャーで育てるときは、ハイドロボールやカラーサンドなど土以外のものに植えて体を支えます。そして、肥料を溶かした水を与えて大きくします。
土を使わないので、虫が寄り付きにくく、清潔な環境で栽培できますよ。
パキラをハイドロカルチャーで栽培するために必要なものは5つ
ハイドロカルチャーという単語だけ聞くと、むずかしい技術や高価なグッズを揃える必要がありそうだと感じませんか?
実際にはそんなことはなく、そろえるグッズは5つだけ。どれも園芸店やインターネットで簡単に手に入りますよ。ここでは、必要なグッズについて詳しくまとめました。
1. ハイドロボール(発泡煉石)
ハイドロボールとは、土の代わりとなるもので、パキラの体を支える役割があります。発泡煉石(はっぽうれんせき)とも呼ばれ、粘土を粒状にして高温で焼いて作られています。
焼き上げるときに不純物がなくなって清潔なうえ、表面に小さな穴がたくさん空いていることで根が空気を取り入れやすくなっています。
粒の大きさには幅があり、違う大きさのハイドロボールがミックスされているものも販売されているので、育てるパキラのサイズに応じて小粒と大粒を選びます。
ほかにも、炭が原料のネオコールやレンガ石で作られたレカトン、ゼオライト製のカラーサンドなども土の代わりに使えますよ。
2. 根腐れ防止剤
根腐れ防止剤とは、イオン交換樹脂剤や、ゼオライトとも呼ばれるものです。根から出る老廃物を吸着し、パキラへ栄養を行き渡りやすくする働きがあります。
通常の鉢での栽培なら、鉢底から水が流れます。しかし、ハイドロカルチャーの場合は、水が流れ出ない容器を使うため、これを入れることで清潔な水を維持させるわけです。
『ミリオンA』や『ブロックシリコ』を使えば、ミネラル分を補給しながら水の状態を清潔に保てます。また、粒が少し大きい『ゼオライト』を使えば、1. のハイドロボールの役割も兼ねることができますよ。
3. 「水耕栽培用の液体肥料」または「イオン交換樹脂栄養剤」
植物は本来土から栄養をもらいますが、ハイドロカルチャーは水だけで栽培するので栄養が足りなくなってしまいます。そのため、水耕栽培用の液体肥料を水に薄めて植物への栄養を補給します。
先ほどの根腐れ防止剤(イオン交換樹脂剤)に栄養剤の要素をもたせたイオン交換樹脂栄養剤もあるので、これを使えばそろえるグッズは4つですみます。
4. 底穴の空いていない容器
ハイドロカルチャーでは、容器の底に少しだけ水がたまればOK。ガラスの器や陶器のお皿、マグカップ、空きビンなど、底に穴が開いていなければ好きな容器で楽しめます。はじめてハイドロカルチャーにチャレンジするなら、水の残量や根の状態がひと目で分かる透明な容器がおすすめです。
5. 水位計
透明ではない容器を使うときに便利なのが水位計。ハイドロカルチャー用のものなら、ちょうどよい水位が一目でわかり、針が下がりきってから2〜3日後に水をつぎ足すだけと管理が楽になります。
パキラをハイドロカルチャーにどうやって植え替える?
ハイドロカルチャーへの植え替え方法は、通常の土の植え替え作業に似ています。根の土を洗い流すこと以外、特別な作業は必要ありませんよ。ここからは、パキラをハイドロカルチャーに植え替える手順を、写真とともにご紹介します。
■ 植え替えの手順
1. 植え付ける容器の底に根腐れ防止剤を入れる
2. 軽く水洗いしたハイドロボールを容器の1/3ほどまで入れる
3. イオン交換樹脂栄養剤を適量ふりかける(液体肥料を使う場合は不要)
4. パキラを土から引き抜く
5. 根に付いた土をほぐして水洗いし、きれいに取り除く
土に植えられていたパキラを植え替えるときは、苗を抜き出して水を張ったバケツに根を浸し、水中で土をふるい落とすようにゆすぐときれいになります。
6. 容器の中心に苗を入れ、ハイドロボールの高さを調節する
7. 苗の周りにハイドロボールを敷き詰めて、ぐらつかないようにする
8. 容器の1/5~1/4まで水を注ぐ
※イオン交換樹脂栄養剤を使わないときは液体肥料を水に溶かして与える
パキラをハイドロカルチャーへ植え替える時期は?
パキラのハイドロカルチャーは、いつはじめてもよいわけではありません。生長が盛んな5月中旬〜9月中旬頃が最適です。
植え替えをすると、パキラの根は少なからず傷つき、ダメージを負います。よく生長する時期に行うと、負ったダメージから回復するのも早く、環境の変化にも対応でき、枯れる心配が少ないです。
最適な時期以外に植え替えをすると、根がおったダメージから回復できず、環境の変化にも対応できずに枯れる可能性が高まります。できるだけ時期は守るようにしてくださいね。
パキラのハイドロカルチャーを育てる方法は?
パキラはもともと乾燥に強い植物なので、容器に水分が残っている間なら水やりの必要はありません。容器の中の水が完全になくなったら、容器の高さの1/5〜1/4まで水をためればOKです。
パキラがよく育つ5〜9月頃は、1〜2週間に1回液体肥料を水に加えるのを忘れないようにしてください。
イオン交換樹脂栄養剤の有効期間は約3〜4ヶ月なので、効果が切れたらハイドロボールの表面に直接ばらまき、上から水を注いで容器の内側へ流し込んでください。
生育が鈍くなる冬の間は、ハイドロボールが乾いて2〜3日経ってから水を与えましょう。
パキラのハイドロカルチャーで注意することは?
パキラのハイドロカルチャーならではの注意するポイントがいくつかあります。ここでは、日頃気をつけていきたい注意点をまとめました。栽培している中で、トラブルの兆候があらわれたら確認してみてください。
根腐れ
パキラをハイドロカルチャーで育てるとき、最も注意したいのが根が腐る「根腐れ(ねぐされ)」です。たとえ根腐れ防止剤を入れていても、水の与えすぎや気温が高い時期に湿度が高まると引き起こされます。
ハイドロボールから異臭がしたり、水をあげているのに葉っぱがしおれるなどの症状が現れたら、すぐに水やりをやめて、とにかく乾燥させてパキラを回復させます。
幹を触ってみて、ふやけたようにやわらかかったり、スカスカして堅さがなかったりするときは、かなり深刻な状態です。
葉焼け
パキラのハイドロカルチャーは、午前中は日が差し、午後は日陰になる場所へ置くのがベストです。直射日光が長時間当たると葉っぱが焼けて枯れます。あっという間に葉っぱが全て落ちてしまった…なんてことも少なくありません。
ただ、日光が足りないとひょろひょろとした弱い枝が生えてくるので注意してください。日当たりが心配なときは、日差しよけのあるベランダへ2〜3日に1回出してあげるとよいですよ。
害虫
室内で行うハイドロカルチャーは、害虫の心配が比較的少なくすみます。ただ、ときおり葉っぱの裏に小さな「ハダニ」という虫がつきます。そのままにしておくと葉っぱが全部食べられるので、見つけたら早めに駆除しましょう。
ハダニは水に弱いので、たまにてっぺんからシャワーをかけて株を洗い流すと駆除や予防ができます。たくさん発生したときは、専用の殺虫剤で一気に駆除してください。
パキラをハイドロカルチャーで育ててみよう
パキラは原産地では水辺に生えている場合も多く、丈夫な観葉植物であることから、きちんと水の量を守っていればハイドロカルチャーでも長く楽しめます。
きちんと植え替えて、水や日光の量に気を配ってあげるのがポイント。見た目も清潔感があるので、小さなパキラのハイドロカルチャーをキッチンや玄関に飾るとおしゃれですよ。
更新日: 2017年02月02日
初回公開日: 2016年03月19日