芍薬は、牡丹や百合と並んで、美しい女性を表す花として知られています。春になると上品な花を咲かせ、私たちの目を楽しませてくれますよね。今回は、そんな芍薬の育て方について、苗の鉢植え、植え替えなど栽培のポイントをご紹介します。
芍薬(シャクヤク)はどんな花が咲くの?
芍薬は、春になるとピンクや赤色の大きな花を咲かせる植物です。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉の通り、美人の代名詞とされてきました。
ボタン科ボタン属の植物で、花の形は牡丹によく似ています。
芍薬(シャクヤク)の苗植え!鉢植えや地植えの方法は?
芍薬の苗は、9~10月が植え付けの適期です。苗は、新芽が数個ついているものを選ぶのがポイント。また、苗の根についた古い土はきれいに落として、病害虫を予防しましょう。
鉢植え
- 8〜10号などできるだけ大きく深さのある鉢を用意する
- 鉢底にゴロ土(※1)を敷き、1/3ほど土を入れる
- 苗を土の表面から5cmほどの深さに植える
- たっぷりと水を与え、風通しのよい半日陰で管理する
※1 ゴロ土とは、鉢植え時に水はけや通気性をよくする目的で鉢底に入れる粒の大きな土。赤玉土の大粒などがよく用いられる
地植え
- 風通しのよい半日陰に深さ50cm、幅30~40cmの穴を掘る
- 2週間かけて土作りをする
- 芽が土の表面から5cmほど出るよう苗を植える
芍薬(シャクヤク)を種から育てる方法は?
芍薬の種は出回っていないので、自分で育てた株から採取して育てていきます。種からだと2〜3年ほどと、牡丹よりも早く開花しますよ。
また、発芽率が高く、オリジナルの芍薬ができることもあるので、時間がかかる分楽しみも広がります。
- 花が咲いたあとの8~9月に実がなる
- 実の中から完熟した青~暗い紅色の種を取り出す
- 水をたっぷり入れたバケツの中に種を入れる
- 浮いてきた種は捨て、沈んだ種の水気はきる
- 浅皿に湿った脱脂綿を敷き、その上に種を5~7日間ほど置く
- 鉢植え、地植えともに種はばらまきにして土を被せる
- 土が湿った状態で、風通しのよい日陰で管理する
- 翌年の春に発芽する
- 十分に根が生えたら、土が乾燥してから水やりをする
- 株が育ってきたらより大きな鉢か庭に植え替える
芍薬(シャクヤク)の土作り、水やり、肥料の与え方は?
土作り
芍薬は、水はけのよい土を好みます。鉢植えは、赤玉土(中粒)4:鹿沼土4:腐葉土1〜2:もみ殻燻炭1の割合で混ぜた土がおすすめです。
地植えなら、植え穴を掘った土に完熟堆肥や腐葉土を1/3ほど混ぜ込み、1〜2週間ほど寝かせたものを使いましょう。
水やり
鉢植えは、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。10月頃から根が育ちはじめるので、水切れを起こさないよう注意してください。
地植えは、特に水やりの必要はありません。乾燥した日が続いたときは、日が沈んだあとから朝方にかけて、水を少しずつ地中に染み込ませていくとよいですよ。
地中深くまで水やりをするときは、ゆっくり長時間かけることが大切です。
肥料
花を大きく育てるのはリン酸を多く含んだ肥料です。植え付けのときに、リン酸が少し多めに入った緩効性化成肥料を1㎡あたりコップ1〜1.5杯分ほど混ぜ込んでおきます。
あとは、年4回のタイミングで追加の肥料を与えてください。
■ おすすめの肥料の成分
- 3月初旬:窒素8:リン酸8:カリウム8
- 5月下旬:窒素3:リン酸6:カリウム5
- 9月中旬:窒素8:リン酸16:カリウム10
- 10月下旬:窒素5:リン酸10:カリウム8
芍薬(シャクヤク)の栽培中に注意する病気や害虫は?
病気
芍薬は、炭そ病、灰色かび病、褐斑病、立ち枯れ病、うどんこ病、モンパ病に注意が必要です。これらは土の状態や栽培環境によって起こる病気です。
水はけのよい土に植え付け、風通しのよい環境を作ってあげましょう。
特につぼみに灰色かび病がつくと花は咲かないので、芽が出る3~4月に殺菌剤を散布して予防してください。
害虫
高温多湿の環境では、アブラムシやヨトウムシ、ネコブセンチュウがよってきます。春~夏にかけて発生しやすいので、定期的に殺虫剤を散布すると安心です。
殺菌剤の代わりに、乳酸菌や米酢を使うと病気と害虫両方の予防になりますよ。
ただ、ネコブセンチュウは地中にいるため、地上からの殺虫剤は効果がありません。微生物資材等により土壌環境を普段からよくすることが効果的な予防策です。
芍薬(シャクヤク)のお手入れ!芽かき、摘蕾、花がら摘みの方法は?
芽かき
芽かきを行うと株の風通しがよくなり、病害虫を防ぐことができます。また、余分な茎を取り除くことで、太い茎に栄養が集中するので、花つきがよくなりますよ。
混み合っている茎や細い茎、つぼみのない茎は間引いていきましょう。
摘蕾
株が大きくなると、芽も増えていきます。この芽を全て育ててしまうと、株全体に栄養が行き渡らなくなってしまいます。
そのため、1本の茎につぼみが1つだけになるように、脇から出ているつぼみは根元から切り取ります。
花の咲いている期間を長くしたい場合は、脇の芽も半分くらい残すのもおすすめ。鉢植えの場合は、1株につぼみ3~5個ほどが目安です。
花がら摘み
芍薬の花を咲いたままにしておくと、実をつけます。この実を成熟させると栄養がとられてしまうので、咲き終わった花は首元から切り取っていきます。
種を取りたいときは、その分の花だけを残してください。
芍薬(シャクヤク)の植え替えの方法は?
芍薬は、根が繊細なため定着するまで時間がかかり、植え替えを嫌います。しかし、鉢植えは、根がよく張り、土の質が低下しやすいので、3~5年ごとに9〜11月頃植え替えをする必要があります。
まずは、1回り大きな鉢を用意します。株を取り出し、根についた古い土をきれいに取り除きましょう。あとは、鉢植えの手順と同じです。
植え替えると根に負担がかり、翌年の花つきが悪くなることがあるので、ていねいに植え替えをしてください。
芍薬(シャクヤク)の増やし方!株分けの方法は?
芍薬は、9~11月に株分けで増やすことができます。植え替えの時期と重なることから、同時に行うと株へのダメージが少なくてすみますよ。
また、切り口から腐ることがあるので、株分けをしたあとはしっかり殺菌消毒をしてください。
- 十分に育った株を土から掘り起こす
- 根の周りの土を落とす
- それぞれの株に2つ以上の芽がつくよう、根をハサミで切り分ける
- 切り口を殺菌剤や微生物資材、草木灰に浸して消毒する
- 苗植えと同じように株を植え付ける
芍薬(シャクヤク)の栽培のポイントは?
日当たりと水はけのよい土地で栽培することポイントです。
土の温度が高くなると、根が弱って生長が悪くなってしまいます。庭木の下など葉によく日が当たり、地面は影になるような場所が植え付けには最適です。
また、太い根を張り、葉が大きくなるので、育てるスペースはたっぷりと確保してあげましょう。
芍薬(シャクヤク)のきれいな花を咲かせよう
芍薬は宿根草なので、日常の管理をきちんと行うことで、毎年きれいは花を咲かせてくれます。また、日本の環境に合っている植物なので、それほど育てる手間はかかりません。
芽かきや摘蕾などの手入れを行なって、きれいな芍薬の花を咲かせてくださいね。
更新日: 2022年04月27日
初回公開日: 2015年08月17日