高貴な花として知られている君子蘭(クンシラン)。国内での流通数が少なく、鮮やかな花色とつやのある葉っぱが特徴です。今回はそんなクンシランの植え替えや株分けの時期や方法など、手入れや育て方についてご紹介します。
目次
君子蘭とはどんな花?育て方は簡単?
クンシランは、南アフリカのナタール地方に生える多年草です。年間を通して平均気温が22~25度の日本でいうと春や秋のような寒くも暑くもない過ごしやすい気温で育ちます。
花を咲かせるには気温や置き場所などコツが必要なので、それを守りながら育てると初心者でも楽しめるかもしれません。
君子蘭の種まきと苗植え!鉢植えや地植えの時期、方法は?
種まき
11月下旬〜翌年の1月中に採種した種を保管し、3~4月頃に種をまきます。実がついた状態で花を切り取り、そのままビニール袋に入れて5〜10度ぐらいの環境で保管します。
もしくは、水苔と一緒にビニール袋に入れ、種まきまで冷暗所で保管する方法もあります。この場合、4月上旬に種まきをします。
種をまくときは、果皮と果肉をむきとり水洗いをして種を取り出します。種には針でつついたような茶褐色の斑点があり、ここから発根してくるので、この部分が横向きになるように植えるのがポイントです。
浅鉢に種子が少し見える程度の深さに植え、土の表面が乾かないように水苔を薄く敷き、乾燥を防ぎます。1ヶ月ぐらいたつと新芽が伸びはじめるので、本葉と根が生長したら1回り大きな鉢に植え替えます。
苗植え
5月頃が苗木の植え付けの適期です。鉢植えは、1年たつと葉も伸びてくるので、3.5〜4号の深鉢に1株を植えます。
鉢底に軽石を1/4ほど敷き、傷めないように根についた土をそっともみ落とします。植え込みが終わったら、バケツに水を張って、鉢をその中に沈め、鉢底から十分に水を吸わせたら水からあげて完了です。
最低7度ぐらいを保てる暖地であれば、地植えでの越冬も可能です。ただ、着生ランなので、園芸では、鉢で育てるのが一般的です。
君子蘭の育て方!土作り、水やり、肥料の時期と方法は?
土作り
土は特に選びません。水はけと水もちのよい土を好みます。赤玉土単体でも育ちますが、川砂4:赤玉土3:腐葉土3の割合で混ぜた土が一般的です。
8mm、5mmのふるいで大、中、小粒に土を分けて、鉢底用、植え土、化粧土と使い分けてください。
水やり
葉が生長する春から秋までは、鉢の乾き具合を見て、鉢土の表面が乾いたら鉢縁に沿って鉢中に水を注いでください。葉に水がかからないよう注意しましょう。
目安として、4〜10月頃までは2~3日に1回、11〜3月頃は3〜4日に1回、午前中に水やりをしてください。
2~3年目の苗は、生育が旺盛で水の吸収もよいので、鉢土の表面が乾きはじめたらたっぷり水を与えましょう。
冬期は、10度以上保てる場所であれば、休むことなく生長を続けるので1〜2日に1度ほど水を与えてください。
肥料
植え付け時に、油カスに骨粉入りの有機質固形肥料を与えます。有機肥料が発酵するときに発生するガスによって葉を傷めるので、葉の下側には置かないようにします。
2月中旬頃には葉の前後に4〜5個ほどを1回、3〜5月と10〜11月は1ヶ月に1回は肥料を置くようにします。
液肥を薄めて、水やりの代わりに数回与えてもかまいません。夏場は、休眠期なので肥料は不要です。
君子蘭の花が咲かないのはなぜ?
君子蘭の花が咲かない原因は、気温約10度の環境にあたっている時間が短いか、暖房をつけた室内など、暖かい環境の期間が長いことが考えられます。
花を咲かせるには、最低5〜10度の低温で、60〜70日ほど育てます。玄関や軒下など霜や雨のあたらない涼しい場所に移動したり、室内なら窓を開けて換気したりを心がけてください。
愛好家の方たちは、温室、サンルーム、ビニールハウスなど、湿度や温度を管理しやすい環境で栽培されることが多いんですよ。
君子蘭の剪定や切り戻しの仕方は?
種を採取しない場合は、花が終わったら花茎を早めに切り取ります。花茎は、中央部をにぎり、横前に引くように倒すと折れますよ。
枯れた花を残しておくと、来春の株や花芽への養分を枯れた花に送り続け、花つきが悪くなります。
君子蘭の植え替えの時期や方法は?
鉢植えの場合、2〜3年に1回、5月上旬〜6月中旬か10月初旬~中旬頃に植え替えをします。
植え替えを行う前の5〜6日は水やりを控え、鉢土を乾かしぎみにしておくと根がやわらかくなり、作業がしやすくなりますよ。
1. 鉢から株を抜き出し、傷めないように根についた土をほぐして取り除く
2. 1回り大きな深鉢の底に大粒の鹿沼土や赤玉土か、水苔を入れる
3. 根の真ん中に水苔があたるように植え、周りを水苔で固める
4. 割り箸などでつつきながら、鉢の隅々まで水苔で固定する
5. 鉢底から流れるまで水を十分に与えるか、水を張ったバケツにつけて吸水させる
6. 2週間ほど土を乾燥させないように日陰で管理し、徐々に明るい日陰に移動させる
君子蘭の増やし方!株分けの時期と方法は?
5月上旬〜6月中旬頃か、10月上旬〜中旬が適期です。こぶしで鉢の側面を叩きながら苗を抜き出し、清潔なナイフやハサミなどで切り込みを入れて、根のからみをほぐしながら親株から切り分けます。
株分け用の子株は、最低3本以上根をつけている必要があります。腐敗菌などに侵されないように、切り口に殺菌剤(チオファネートメチル剤など)を筆で塗って30分ほど乾かします。
あとは、植え替えと同じ手順で植え付けます。
君子蘭の育て方で注意する病害虫は?
白絹病、炭疽病、軟腐病、カイガラムシなどの病気や害虫が発生しやすいです。特に高温多湿時には注意が必要です。水の量や換気などに注意して病気を未然に防いでください。
白絹病
鉢の表面にクモの巣のような白い菌が発生し、株元が薄茶褐色に変化します。病気が進むと根茎部から倒れてしまいます。
炭疽病
葉の全面に茶褐色の斑点があらわれ、進行すると全部の葉に広がっていきます。斑点の出た葉は早めに切り捨て、風通しをよくしましょう。アミスター10などの薬剤を散布すると予防効果があります。
軟腐病
昨日まで健全に育っていた株が、一夜にして葉が黒褐色になって弾力性がなくなります。軟腐病はクンシランの病気の中で最も恐ろしい病気で、特殊な腐敗臭が漂います。
コナカイガラムシ
葉の裏側に発生し、急速に繁栄して葉緑素を吸い取り、黄褐色の斑点が出てきます。
ナメクジ、カタツムリ
新芽や新根を食い荒らします。ビールを容器に貯めて罠を仕掛けるか、置き型の忌避剤で予防しましょう。
君子蘭の育て方のポイントは?
君子蘭を育てるポイントは気温の管理です。20度前後の気温なら花を咲かせずに育ち、10度未満の気温で直射日光のあたらない薄暗い環境で約2ヶ月ほど育てると花を咲かせます。
花を咲かせる際、窓際は夜間に気温が下がって凍害で葉を傷める場合があるので、夕方になったら室内の中央部へ鉢を移動させると安心です。
君子蘭をガーデニングで育ててみよう
君子蘭は、ランよりもユリに近い植物です。オレンジ色の花がランに似ていることから名付けられました。「高貴」など、お祝いごとにピッタリな花言葉を持っていますよ。
また、流通数が少ないことから貴重な存在なので、ぜひ、大切な人へプレゼントしてみてください。
更新日: 2023年03月01日
初回公開日: 2015年12月02日