土を使わず、見た目もオシャレに植物を育てられるハイドロカルチャー。特に小さい観葉植物を育てるときにはぴったりの栽培方法です。今回ははじめての人でもわかりやすいように、水やりや植え替え方法、カビ対策といった、観葉植物をハイドロカルチャーで育てるためのポイントをご紹介します。
ハイドロカルチャーとは?
ハイドロカルチャーは、植物を栽培するために、人工の土壌であるハイドロボールを利用する方法です。ハイドロボールは、特殊な素材から作られ、水を吸収したり保持することができ、植物の根が水や酸素を取り入れるために必要な環境を提供します。ハイドロカルチャーは、「水」を意味する「ハイドロ」と、「栽培」を意味する「カルチャー」を組み合わせた言葉です。
最近では、ハイドロカルチャーは、ハイドロボールに限らず、カラーサンドや他の異なる土壌を使って植物を育てる方法を含む、幅広い意味で使われるようになってきています。
また、ハイドロカルチャーは「水栽培」と混同されがちですが、「水栽培」は、水だけで植物を育てる方法で、水に肥料を混ぜて育てることを「水耕栽培」と呼びます。
ハイドロカルチャーと水栽培は、土を使わないで育てるという共通点がありますが、ハイドロカルチャーは「土の代わりとなる土壌を使う」という特徴があり、これによって植物の根が、水や酸素を取り入れるための環境を提供しています。
観葉植物をハイドロカルチャーで育てる4つのメリットとは?
では、ほかの栽培方法とハイドロカルチャーでは何が違うのでしょうか?4つのメリットをご紹介します。
1. 清潔・無臭
ハイドロボールは、無菌・清潔なので病気や害虫が寄りつきにくく、室内を汚すこともありません。また、ハイドロボールには匂いがないため、室内で植物を育てるのに向いています。
2. 繰り返し使えて劣化しにくい
ハイドロボールは約1,000度の高温で焼き固められており、劣化の心配がほとんどありません。また、水で洗って何度も使いまわせるので経済的です。
3. 水の管理が楽
ハイドロカルチャーは、透明な容器に入れて育てれば水の残量が見えます。根が呼吸できずに腐る「根腐れ」を起こしたり、水不足になったりする心配が少ないです。
鉢底穴から水が流れ出ることもないので、長期の旅行などでも水不足の心配がありません。
4. 容器を選ばない
室内に合わせた容器を利用することができます。人工の土にも砂状・石状・ゼリー状など種類がたくさんあるので、インテリア性が高いといえます。
観葉植物のハイドロカルチャーで用意するものは?準備は大変?
- 根が生えた観葉植物
- 底穴の空いていない容器
- ハイドロボール(発泡煉石)
- 水耕栽培用の液体肥料またはイオン交換樹脂栄養剤
- 根腐れ防止剤
- (水位計)
ハイドロカルチャーで用意するグッズは大きく5つあります。それぞれにどんな役割があるのか、土で育てる方法と比較しながら具体的にご紹介します。
1. 根が生えた観葉植物
「観葉植物」は水挿しなどで、あらかじめ増やして根が出ているものを使います。
2. 底穴の空いていない容器
底穴の空いていない容器は、土の栽培でいうところの「鉢」です。ガラスの器や陶器のお皿、マグカップ、空きビンなど素材はなんでもかまいません。初めての人は、水の残量がわかる透明の容器がおすすめです。
3. ハイドロボール(発泡煉石)
ハイドロボールは土の栽培でいう「土」です。植物の体を支える役割があります。粒の大きさには様々な種類があるので、大きい植物には大粒、小さい植物には小粒を選んであげましょう。
炭が原料のネオコールやレンガ石で作られたレカトン、ゼオライト製のカラーサンドなども代わりに使えますよ。
4. 水耕栽培用の液体肥料またはイオン交換樹脂栄養剤
水耕栽培用の液体肥料またはイオン交換樹脂栄養剤は、「肥料」の役割です。本来、植物は土から栄養を受け取りますが、ハイドロボールには栄養が含まれていないので、肥料成分を混ぜる必要があります。
5. 根腐れ防止剤
ハイドロカルチャーならではのグッズが、この「根腐れ防止剤」です。水が循環しないので、腐らないように老廃物を吸着する役割があります。
6. 水位計(透明でない容器を使う場合のみ)
水位計は、透明でない容器の中の水の量を確認できるグッズです。
観葉植物をハイドロカルチャーにする手順は?
準備が整ったら、さっそくハイドロカルチャーへ植え替えましょう。手順は次の通りです。合わせて作業上の注意点もご紹介するので確認しておいてくださいね。
■ 植え替えの手順
- 容器の底に根腐れ防止剤を入れる
- 水洗いしたハイドロボールを容器の1/3ほどまで入れる
- イオン交換樹脂栄養剤を適量ふりかける(液体肥料を使う場合は不要)
- 容器の中心に植物を入れ、ハイドロボールの高さを調節する
- 周りにハイドロボールを敷き詰めて、ぐらつかないようにする
- 容器の1/5~1/4まで水を注ぐ(液体肥料を使う場合は水に溶かして与える)
植え替えたら、明るい日陰で管理します。直射日光のあたる場所で管理するとハイドロボールの劣化が早くなったり、コケが生えたり、葉焼けで葉っぱが黄色く枯れ始めたりするので気をつけましょう。
■ 作業の注意点
- 購入したばかりのハイドロボールは、使用前に1度水洗いして汚れを落として乾燥させておく。再利用する場合も、水洗い後乾燥させる
- 使用するハイドロボールがカラカラに乾いた状態の場合は、一度容器の1/3程度まで水を入れてハイドロボールに水を吸わせる
- 植えるときに、器の側面などに根が直接あたらないよう注意する
ハイドロカルチャーの水やりや肥料の与え方は?
移し替えが終わったら、あとは日々の手入れです。土で育てているときのように頻繁に水を与える必要がないので、手間はかかりませんよ。
水やり
水やりは、容器の底に水がなくなって2~3日後のタイミングです。ハイドロボールの約1/5の高さまで水を入れます。15度くらいの常温の水を与えると、植物への負担が少なくすみますよ。
水がなくなる前につぎ足してしまうと、根腐れする原因になってしまいます。特に冬は植物の生長が穏やかになるので、水やりの回数が夏に比べて少なくなることを覚えておいてくださいね。
肥料
肥料は植えて2~3週間程度経過し、根がある程度定着してから与え始めましょう。5〜10月は水耕栽培用の液体肥料を1週間に1回のペースで与えます。
ただし、濃すぎる肥料は逆に根を腐らせてしまうので、表記に合わせた量を与えましょう。
観葉植物のハイドロカルチャーがかかる病気は?
ハイドロカルチャーで植物を育てていると、ハイドロボールに白っぽいものがついていることがあります。
これをカビだと思って心配する人がいますが、多くは水道水のミネラルが結晶化したものか、肥料の塩分です。心配する必要はありませんよ。
ただし、白くフワフワしたものが植物の葉っぱやハイドロボールの表面に付着している場合は、カビの可能性が高いです。
容器から植物を取り出し、ハイドロボールを水洗いして乾燥させましょう。日々、風通しのよい場所で管理するのが予防につながります。
ハイドロカルチャーで根腐れを防ぐ方法は?
ハイドロカルチャーで植物を枯らせてしまう原因は、「根腐れ」がほとんどです。
根腐れは、水のあげすぎによる酸素不足か、根が排出する有害な老廃物の蓄積によって起こります。水を吸いにくくなって土に近い葉っぱから枯れたり、腐って異臭を放ったりします。
以下の2つのポイントを守ることで根腐れが起きにくくなりますよ。
乾いてから水を与える
ハイドロカルチャーの場合、植物の根は水がなくなったのを見計らって、ハイドロボールの間にたまった酸素を吸います。
そして、新たな水やりによって古い空気が押し出され、新鮮な空気が送り込まれるというサイクルになっています。
水をあげすぎると水を吸収し続けるしかないので、呼吸ができない状態を作り出してしまいます。そのため、容器の底に水がなくなっても、2~3日はそのままにしておくことが大切です。
有害な分泌物を蓄積しない
植物は根から老廃物を分泌します。土に植えている場合であれば、この分泌物は土の中の微生物が分解してくれますが、ハイドロボールには微生物がいないため蓄積され続けます。
そこで、微生物の代わりに根腐れ防止剤を入れます。半年~1年で効果が薄まるので、植え替えをする際に忘れずに加えてあげることが大切です。
ハイドロカルチャーも植え替えは必要?
ハイドロカルチャーは半年から1年に1回、「ハイドロボールの土の洗浄」と「根腐れ防止剤を入れ直す」ために植え替えが必要です。植え替えタイミングの目安としては、「根が張りすぎている」「葉の一部が枯れてしまったり、元気がない」といったポイントです。
一旦、容器に入っているものを全て取り出します。そして、根が汚れている部分や、腐っている部分を清潔なハサミで切り落とします。
根の処理をしている間に、ハイドロボールは水洗いして乾燥させておき、植え替えの手順で再度植え直しましょう。
ハイドロカルチャーで観葉植物を楽しもう
ハイドロカルチャーは土で育てるときよりも植物の生長が緩やかになるので、ある程度形を維持しながら育てることができます。
また、ハイドロカルチャーの一種であるカラーサンドを使うことでインテリア性を高めることもできるので、植物を育てるのがもっと楽しくなります。自分なりの楽しみ方をみつけてくださいね。
更新日: 2023年01月28日
初回公開日: 2015年08月10日