ポンポンのようにたくさんの花びらをつける八重桜。4月中旬~5月上旬頃に、無数の花びらを散らせる姿は、春の終わりと夏の訪れを告げてくれます。今回は、そんな八重桜の花言葉や種類、品種、開花時期、育て方などについてまとめました。
八重桜(牡丹桜)の花言葉は?
『豊かな教養』『善良な教育』『しとやか』
「豊かな教養」「善良な教育」という花言葉は、幾重にも重なった花びらに、積み重ねられた知識や知恵をなぞらえたものといわれています。
「しとやか」は、ふっくらとした大きな花をつけながらも、ほかの桜と同じように短期間のうちに散りゆく姿に、上品で奥ゆかしい印象を受けることにちなんでいます。
八重桜(牡丹桜)の花の色や別名は?
- 学名
- ー
- 科・属名
- バラ科・サクラ属
- 英名
- Double cherry blossom
Double flowered cherry tree
- 原産地
- 日本
- 開花時期
- 4月中旬~5月上旬
- 花の色
- 白、ピンク
- 別名
- 牡丹桜(ボタンザクラ)
里桜(サトザクラ)
菊桜(キクザクラ)
八重桜(牡丹桜)とは?
八重桜は、バラ科サクラ属の落葉広葉樹で、花びらがたくさんある桜の総称です。通常の桜の花びらは5枚なのに対し、八重桜は何枚もの花びらを重ねてつけることが特徴です。
1輪の花に平均10~130枚ほどの花びらがつき、「菊桜」「菊咲き」と呼ばれる種類になると、300枚以上の花びらをつけます。
また、花と同時に葉っぱをつけるものが多いことも、通常の桜との大きな違いです。品種改良によって生み出されたものが多いことから、山桜と対になる「里桜」とも呼ばれます。また、花の姿が牡丹と似ていることから、「牡丹桜」という別名がつけられました。
八重桜(牡丹桜)の開花時期は?
八重桜の開花時期は4月中旬~5月上旬頃と、ソメイヨシノや山桜よりも1~2週間ほど遅くなっています。花と同時に新葉を枝につけるため、ピンク色の花と新緑の葉っぱの色合いが優しい印象を与えてくれますよ。
八重桜(牡丹桜)の花の種類は?
八重桜は、人の手によって作られた園芸用品種が多く、その数は300以上とされています。今回は、その中でもよく知られているものをいくつかご紹介します。
関山(Prunus lannesiana Wils. cv. Sekiyama)
日本に古くから存在する、八重桜の代表的な品種の1つです。25~40枚の花びらをつけ、葉色が濃いことが特徴です。
花を塩漬けにしたものは、あんぱんやおにぎりの飾りつけに利用されています。
普賢象(Prunus lannesiana ‘Alborosea’)
室町時代より観賞されてきた品種で、先端のそり返った雄しべを、普賢菩薩が乗った象の鼻先に見立てて名付けられました。
直径4~5cmほどの大きな花は、うっすらと紅色を帯びた30~40枚の花びらをつけます。散り際に赤みを増し、さらに美しくなりますよ。
八重紅枝垂(Prunus pendula ‘Pleno-rosea’)
野生種「江戸彼岸」の園芸品種です。江戸時代より観賞され、明治時代の仙台市長遠藤庸治氏によって京都の平安神宮に献上されたことで知られます。
15~25枚の花びらをつける枝垂れ桜で、「遠藤桜」「仙台八重枝枝垂」「平安紅枝垂」とも呼ばれます。
一葉(Prunus lannesiana Wils. cv. Hisakura)
30~40枚ほどの花びらは、外側が薄桃色で内側になるほど白色が強くなります。花の中心部から葉っぱのような雄しべが1本突き出ていることから名付けられました。
鬱金(Prunus lannesiana Gioiko)
花びらに葉緑体をもち、唯一黄色の花をつけるの品種です。花色がウコンと似ていることにちなんで鬱金(ウコン)と、名付けられました。
ソメイヨシノが終わる頃に15~20枚の花びらからなる大輪の花を咲かせ、散り際に花色がピンク色に変化します。
福禄寿(Prunus lannesiana ‘Contorta’)
大輪花で知られる「大島桜」系の品種です。直径4.5~5cmほどの円形の花は、濃淡のあるピンク色をしており、波打つように15~20枚ほどの花びらがみっちりとつきます。
花つきがよく、並木や公園樹として広く利用されています。
奈良の八重桜(Prunus verecunda ‘Antiqua’)
野生種「霞桜」の変種で、直径2.5~3cmほどの小ぶりな花にたくさんの花びらがつきます。
1,000年ほど前にはすでに、鑑賞用として楽しまれていたとされ、奈良県の県花にも選ばれている希少な品種です。通常の八重桜に比べて開花時期が遅く、4月下旬~5月上旬頃に花が咲きはじめます。
兼六園菊桜(Prunus lannesiana ‘Sphaerantha’)
350~380枚もの花びらをつける菊咲きの八重桜です。兼六園にある原木は、天然記念物に指定されていましたが、現在は後継樹を残すのみとなっています。
開花直後は濃い紅色で、咲き進むにつれて白っぽくなり、花びらを散らすことなく花ごと落下します。
八重桜(牡丹桜)は庭木にできるの?
通常の桜と同じように、庭木として地植えしたり、鉢植えにし、日当たりと風通しのよい場所で育てることができます。まだ木が幼いときは、風で倒れやすいので、支柱を立てて支えてあげると安心です。
八重桜(牡丹桜)の苗植えの時期と方法は?
苗の植え付けは、11~3月中旬の休眠期に行います。ただ、真冬は株にダメージを与える恐れがあることから、12月中旬~2月中旬の植え付けは避けた方がよいですよ。
鉢植えは、深さ20cm以上で、円周が苗よりも1~2回り大きい鉢に植えていきます。地植えは、幅50~60cm、深さ30~40cmほどの植え穴を掘って、苗を植えていきましょう。
根のはりが浅かったり、踏まれたりすると弱ってしまうので注意してください。
八重桜(牡丹桜)の土作り・水やり・肥料の与え方は?
土作り
弱酸性で水はけさえよければ、どんな土でもかまいません。鉢植えは、赤玉土(中粒)5:川砂3:腐葉土2の割合で混ぜた土か、市販の庭木用の培養土を使います。
地植えは、植え穴を掘った土に2~3割腐葉土を混ぜておくとよいですよ。
水やり
地植えは、植え付け直後に1~2ヶ月ほど土が乾いたら水やりをすれば、後は降雨のみでも育ちます。鉢植えは、土の表面が乾きかけたら早めに水やりをします。
つぼみがふくらみはじめた頃の水切れに気をつけてください。
肥料の与え方
地植えは、2月と花後の5月の年2回、油かすと骨粉を等量で混ぜあわせた有機質肥料か、ゆっくりと効く緩効性化成肥料を与えます。
鉢植えはこれに加えて、3月と10月にも液体肥料を与えるとよいですよ。
八重桜(牡丹桜)の剪定の時期と方法は?
昔から「桜切る馬鹿」といわれるほど桜は剪定に弱く、切り口に害虫がつきやすく、病気になりやすい植物です。
大きく樹形が乱れていない限りは、地表から生えるヒコバエや、花後と落葉後の年に2回ほど徒長枝を間引く程度で十分です。切断面は腐りやすいので、枝を切った後は必ず癒合剤を塗っておきましょう。
八重桜(牡丹桜)の植え替えの時期と方法は?
鉢植えは、1年に1回、12~3月に植え替えます。苗を鉢から抜き出したら、伸びすぎた根をハサミで切り、根についた土を半分くらい落とし、根っこを1/2~1/3ほどの長さに切りそろえましょう。合わせて剪定も行い、根と地上部のバランスをとるようにしてください。
八重桜(牡丹桜)の増やし方!挿し木や接ぎ木の時期と方法は?
八重桜は、挿し木や接ぎ木で数を増やすことができます。初めての人は、剪定で切り落とした枝を挿し木に利用すると効率的ですよ。
八重桜(牡丹桜)の育て方で注意する病害虫は?
根頭がん腫病
広葉樹がかかりやすい、土の中に潜む細菌が原因の病気です。根に小さなこぶを作り、生長とともに肥大して樹木全体を弱らせます。
効果的な薬剤がなく、一度発病すると回復はむずかしいとされています。根っこが踏まれたり、水切れしたりといった環境によるストレスで体力が落ちると、かかりやすくなります。
サクラコアブラムシ
新葉の裏について栄養を吸い取るアブラムシの仲間です。寄生された葉っぱは縮れて丸くなり、先端に紅色の虫こぶができます。
葉っぱの中にいる虫に薬剤がとどきにくくなるため、4~6月頃、早めに殺虫剤を散布して予防しておきましょう。
八重桜(牡丹桜)の花は塩漬けにしてみるのがおすすめ
八重桜は鉢植えでも育てられる品種が多く、最近では種から育てた苗を盆鉢など小さな容器に植えて楽しむ方が増えています。また、たくさんつく花びらは、塩漬けに利用しやすく、花が散った後も楽しみがありますよ。
更新日: 2021年06月09日
初回公開日: 2015年11月30日