山桜は、野生の桜の代表的な種類です。多くの和歌に詠まれる、古くは桜といえば山桜のことを指していました。寿命が長いことから、大木になるものが多くありますよ。特に「吉野の桜」として知られていることは有名なのではないでしょうか。
今回は、そんな山桜の花言葉や育て方、名所、種類についてご紹介します。
山桜(ヤマザクラ)の花言葉とは?
『あなたに微笑む』『純潔』『高尚』『淡白』『美麗』
「あなたに微笑む」という花言葉は、木々が芽吹く前に、山の中でひっそりと咲く上品な花の姿を見て、人々がおもわず顔をほころばせる様子にちなんでつけられました。「淡白」は、花の寿命が短いことを表現した花言葉となっています
山桜(ヤマザクラ)の花の色や別名は?
- 学名
- Cerasus jamasakura
Prunus jamasakura
- 科・属名
- バラ科・サクラ属
- 英名
- Wild cherry blossom
- 原産地
- 日本、台湾、韓国
- 開花期
- 3~4月
- 花の色
- 白、薄いピンク、薄い紅紫
- 別名
- 白山桜(シロヤマザクラ)
山桜(ヤマザクラ)の開花時期や見頃の季節は?どんな花を咲かせる?
桜の仲間では、寿命が長く、樹高10~25mに生長し、大きい株だと30m以上になります。3月下旬~4月上旬に、葉っぱと花が同時に開くのが特徴です。花は1週間ほどで散ってしまいますが、1つ1つの株ごとに開花時期がずれるため、長い間花を楽しむことができます。5枚の花びらは、白や淡いピンク色をしています。
山桜は、日本の野生の桜を代表する品種です。本居宣長が詠んだ「敷島の大和心を人問はば、朝日に匂ふ山桜花」という和歌は、耳にしたことがあるかもしれません。
山桜(ヤマザクラ)の名所は?
吉野山
住所 | 奈良県吉野郡吉野町吉野山2430Map |
見頃 | 4月上旬~中旬 |
吉野山は、全国的に知られる桜の名所の1つです。古くからシロヤマザクラを中心に、約200種3万本の桜が植えられています。山の下から上に向かって桜が順番に開花していきますよ。一目で1,000本の桜が見えるほど、たくさんの桜の花が咲いている様子を見ることができます。
三多気
住所 | 三重県津市美杉町三多気204Map |
見頃 | 4月上旬~下旬 |
吉野山の桜と同様に、国の名勝に指定されているスポットで、伊勢本街道から真福院への参道に植えられた約500本のヤマザクラを観賞できます。見頃になる4月中旬には、桜まつりも開かれ、多くの観光客が足を運びます。高低差があり樹齢の長い多いことから、長い期間花見を楽しめることが魅力です。
山桜(ヤマザクラ)の種類や品種は?
山桜と共通点の多い品種の桜を、「ヤマザクラ群」と呼びます。今回は、ヤマザクラ群の中から、代表的なものをいくつかご紹介します。
大島桜(オオシマザクラ)
大島など伊豆諸島に分布する品種です。大きな花からはよい香りがただよい、丈夫で生長が早いことが特徴です。山桜とおなじように花と葉が同時に開き、葉っぱの塩漬けは桜餅に利用されます。ソメイヨシノの親株となった品種とされています。
大山桜(オオヤマザクラ)
北海道の山地から本州、四国地方に分布しています。葉っぱや花が山桜に比べて大きいことから、名付けられました。また、花色は紅色であることから、「紅山桜(ベニヤマザクラ)」、北海道に多く自生していることから「蝦夷山桜(エゾヤマザクラ)」とも呼ばれます。
霞桜(カスミザクラ)
北海道や本州、四国に分布している品種で、山桜よりも標高の高い山地に多く自生しています。花や葉っぱに毛が生えていることが特徴で、「ケヤマサクラ」という別名をもっています。
山桜(ヤマザクラ)の種まきと苗植え!鉢植え、地植えの時期と方法は?
種まき
2月中旬~2月下旬が種まきの適期です。種は市販されていないことから、採取したものを植えます。適期を迎えるまで、種は湿った紙に包んで0~3度の冷蔵庫か、湿った腐葉土の中で保管しておきます。鉢や地面に植え替えるまでに3年ほどかかるので春と秋に植え替えを繰り返し、丈夫な苗を育てましょう。
1. 深さ10~20cmほどの鉢やプランターに、粗目の川砂を敷く
2. その上から赤玉土(小粒)を10cmほど被せる
3. 2~3cm間隔で1粒ずつ種をまく
4. 赤玉土(小粒)を1cmほど種に被せる
5. 土が乾燥しないよう水やりをして管理する
6. 発芽し、10~15cmほどの苗に生長したら、鉢や地面に植え替える
苗植え
11~12月か、2~3月に鉢植えか地植えにして育てます。鉢植えは、7~8号鉢に植え付けるとよいですよ。地植えは、日当たりと水はけのよい場所を選び、苗よりも1~2回り大きな植え穴を掘って植えていきます。いずれの場合も、根が長い場合は切りそろえてから植え付けてください。
山桜(ヤマザクラ)の土作り、水やり、肥料の与え方?
土作り
水はけのよい土を好みます。鉢植えは、赤玉土(中粒)5:川砂3:腐葉土2か、赤玉土(小粒)4:腐葉土3:黒土3の割合で混ぜた土がおすすめです。鉢底に赤玉土(中~大粒)や鉢底石を引くと水はけがよくなります。地植えは、植え穴を掘った土に、2~3割腐葉土を混ぜて水はけをよくしておきます。
水やり
鉢植えは、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。地植えは、夏場に日照りが続いたとき以外は、水やりの必要はありません。
肥料の与え方
植え付けるときに、固形の骨粉入り醗酵油かすや鶏糞と堆肥を混ぜたもの、油かすと腐葉土や堆肥を混ぜたものといった、有機肥料を株元から離れたところに施します。また、2~3月と、5~6月にも、同じ肥料を与えると生育がよくなります。根に肥料が当たると、肥料焼けを起こすので注意してください。
山桜(ヤマザクラ)の剪定の時期と方法は?
山桜の剪定は控えめに行いましょう。切り口から雨水や雑菌が侵入すると、株が腐ったり、枯れたりしやすくなります。
12~3月頃、病気になった枝や枯れ枝、折り重なって密集している枝を切る程度にし、切り口には癒合剤や防腐剤を塗ります。特に太い枝を切ったときは、癒合剤を塗り忘れないようにしてください。
山桜(ヤマザクラ)の植え替えの時期と方法は?
鉢植えは、2~3年に1回、12~2月頃に1回り大きな鉢へ植え替えをします。根についた土を半分ほど落とし、はみ出した根を切って新しい土に植え替えます。手順は、植え付け時と同じです。
山桜(ヤマザクラ)の増やし方!挿し木の時期と方法は?
山桜は、種まきや挿し木で数を増やすことができます。種まきは、植え付けでご紹介した方法と同じです。挿し木は2~3月か、6~7月が適期です。2~3月は新芽のついている枝、6~7月はその年に伸びた新しい枝を使ってください。
挿し木
1. 枝を10~15cmに切り取る
2. 枝の切り口を斜めに切る
3. 3時間ほど切り口を水につける
4. 枝を水から出し、切り口に発根促進剤をつける
5. 中粒の鹿沼土に枝を5~6cmほど挿す
6. 根付くまでは、土が乾かさないよう水やりをして管理する
7. 根が十分に生えて育ったら、鉢に植え替える
山桜(ヤマザクラ)の育て方で注意する病害虫は?
てんぐ巣病
一部の枝に、たくさんの小枝がほうき状に出てくる病気です。放っておくと樹勢が悪くなるほか、花が咲かなくなります。冬に病気にかかった枝を元から切り取って焼却し、切り口にトップジンMペーストなどの癒合剤を塗りましょう。
根頭がん腫病
苗木がよくかかる病気で、根が異常に大きくこぶ状になり、やがて腐ってしまいます。病気にかかった株は生育が悪くなり、やがて枯れてしまいます。土を通して感染する病気なので、見つけたらすぐに掘り起こして株ごと焼却し、土を消毒する必要があります。
アメリカシロヒトリ
6月と8月下旬~9月中旬ぐらいに発生しやすい、葉を食べてしまう害虫です。枝先に糸を張って巣を作り、その中に毛虫が群がります。落ち葉の下で越冬しているさなぎを見つけて駆除し、幼虫が小さいうちは1週間おきに2~3回オルトランやスミチオンなどの薬剤を散布しましょう。
オビカレハ
4~6月ぐらいに発生する害虫で、葉を食べてしまいます。太い枝の分岐部分に巣を作り、灰青色で背にオレンジの帯のある幼虫が発生します。冬に枝へリング状に産み付けられた卵の塊を見つけたら、すぐに取り除きます。幼虫が小さいうちは、スミチオンなどの薬剤をまいて駆除します。
山桜(ヤマザクラ)の育て方のポイントは?
日当たりがよく、水はけのよい場所で育てることがポイントです。日本の気候が栽培に適していることから、放任でもよく育ちます。ただ、生育が早く、鉢植えにしてもすぐに植え替えをしなければならなくなるため、広いスペースに地植えにするのがおすすめです。
優しく上品な花言葉を持つ山桜(ヤマザクラ)の花を見に出かけよう
桜は日本人にとても馴染みの深い花です。特に山桜は、古くから私たちの周りに植えられており、たくさん並び咲く姿は美しいですよね。見頃の季節になったら、観光の計画を立てて、山桜のある並木道を散歩してみると、春のおとずれを感じることができますよ。
更新日: 2021年05月19日
初回公開日: 2015年12月05日