夏から秋にかけて、独特の花をつける蓮の姿を見に、名所に訪れる方が多くいます。みなさんは、蓮の葉っぱに水がたまっている様子を見たことがありますか?実は、この蓮の葉っぱの水をはじく効果が、現在の撥水技術(はっすいぎじゅつ)に役立っているのです。今回は、そんな蓮の葉とはなにか、撥水するロータス効果、お茶の効能についてご紹介します。
蓮(ハス)の葉とは?歴史や言い伝えは?
蓮は、浮葉植物と呼ばれる水生生物の1種です。水の底に根っこを張り、そこから長い茎を伸ばして花や葉っぱを水面に浮かべます。
水の底につくる塊茎という大きな根っこは、蓮根(れんこん)と呼ばれ、食べられます。また、仏教では、蓮の花は人間の現在、実は過去、葉は未来を表すといわれています。特に葉っぱは、泥の中であっても、撥水効果で汚れないことから「煩悩に満ちた世の中を清浄に保つもの」の象徴とされてきました。
他にも、古代中国では、蓮の葉っぱを盃にしてお酒を飲むと、長生きができるという言い伝えがあります。蓮の葉にお酒を注ぎ、茎をストローのようにしてお酒を飲むことを、象が鼻で飲むことに見立てて、「象鼻酒」「象鼻杯」といいます。
蓮(ハス)の葉のロータス効果とは?
蓮の葉っぱの表面が水をはじくことを、ロータス効果(ハス効果)といいます。葉っぱの表面には、ワックスのような物質でできた無数の突起があります。そのため、水が表面に広がらず、水滴のまま葉っぱの上を滑り落ちます。これによって、葉っぱの表面についた汚れや虫を絡めとり、きれいな状態を保つことができます。
このロータス効果は、ナノテクノロジーや薄膜技術、繊維の分野で注目されており、私たちの生活用品に応用できないか世界各国で研究が進められています。例えば、家の外壁に使う塗料や屋根材にロータス効果があるものを使えば、掃除の手間を省くことができます。
サトイモの葉や、バラの花びらにも、同様に水をはじく効果があります。しかし、これらは表面についた水滴は、蓮の葉っぱのように表面から浮いているわけではありません。これは、「花弁効果」と呼ばれる水滴を吸着する現象で、ロータス効果とは異なります。
蓮(ハス)の葉のお茶の効能は?
蓮の葉は、漢方医学の世界では、「荷葉(カヨウ)」と呼ばれ、乾燥させたものがお茶にして飲まれていました。血液中のコレステロールを減らし、脂肪や老廃物を排出する働きがあるとされています。また、ビタミンCやミネラルが多く含まれています。そのため、美容やダイエットに効果があるとされ、健康食品として販売されています。世界3大美女の1人である楊貴妃も、好んで蓮の葉茶を飲んでいたそうですよ。
蓮(ハス)の葉っぱを知ろう
蓮は大きな池や沼に生息しているので、お寺や公園、庭園などに行かないとなかなか見かけることはありません。また、その独特の花姿に目がいきがちです。でも、花以外の葉っぱや実にも特徴や効果があります。
ちなみに、古くは蓮の巻葉を小さく刻み、温かい御飯に混ぜ、大きな蓮の葉に盛って食べる「蓮飯」は、江戸っ子に愛されていた料理なんですよ。それぞれの部位のことを知ると、蓮を見たときに一層楽しめそうですね。
更新日: 2021年10月27日
初回公開日: 2015年12月10日