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睡蓮の育て方を徹底解説!植え替えの時期、株分けでの増やし方は?

水面に美しい花を咲かせる睡蓮(スイレン)は、モネの絵画でも知られるように、私たちの心に残る花の1つですよね。池に植わっているものが多いことから栽培が難しそうに見えますが、実は家庭でも育てることができます。今回は、そんな睡蓮の育て方をご紹介します。

睡蓮(スイレン)とはどんな植物?

スイレン 睡蓮

睡蓮は、世界中の熱帯から温帯の広い範囲に分布する植物で、深い切り込みが1本入った円形の葉と、水面に浮かぶ花が特徴です。

大きく分けて、ヨーロッパや北アメリカ等の温帯地方が原産の「温帯(耐寒性)スイレン」と、東南アジアやアフリカ等の熱帯地方が原産の「熱帯スイレン」があります。

温帯スイレンと熱帯スイレンの違い

「温帯スイレン」は根茎が横に這いながら成長(年間20㎝ほど伸びます)し、大きく葉を広げるため広い水面を必要とします。一方の「熱帯スイレン」は、横に広がらず比較的小さな器でも栽培できる(水面が広ければ大きく育ち、狭ければ小さく育つ)のが特長です。

さらに、花の咲き方にも違いがあり、水面に浮かぶように咲く優雅な「温帯スイレン」に対し、「熱帯スイレン」は水面から高く立ち上がって咲き、ダイナミックな姿を見せてくれます。熱帯スイレンはすばらしい香りも特徴で、切り花にして部屋に飾ればその香水のような香りで室内を満たしてくれます。

スイレン 睡蓮

また、熱帯スイレンの中には、葉の中央にムカゴのできるムカゴ種と呼ばれる系統があり、小型で栽培しやすいため、この仲間が園芸店にはたくさん出回っています。

睡蓮の育て方!苗の植え方と時期は?

スイレン 睡蓮 苗

睡蓮は、水に浮かんで花を咲かせる水生植物のため、苗を睡蓮鉢などの大きな鉢や池に沈めて栽培します。

家庭で睡蓮を育てる場合は、睡蓮鉢を用いるのが一般的です。以下に耐寒性と熱帯性の2つの場合に分けて、睡蓮鉢への植え付け方法と時期をご紹介します。

温帯スイレンの場合

温帯スイレンの植え付けの適期は3~4月です。7号以上の浅鉢に植え付け、直径40㎝以上のスイレン鉢に入れると花が咲きやすくなります。

「スイレンの土」または赤玉土や荒木田土に水を混ぜてこねた粘土質の土を用意し、芽が伸びてゆく方向を空けて、苗を植え付けます。このとき、芽の先が土に埋まらないよう浅植えにしますが、根茎が浮いてしまわないよう注意します。

植え付けが終わったら、水を張ったスイレン鉢にそっと沈め、日当たりのよい場所で管理していきます。肥料は植え付け後に新芽が動き出すのを確認してから「スイレンの肥料」やコーティングタイプの緩効性肥料を株元から離れたところに埋め込みます。

このとき、肥料が水に溶け出さないよう、土でふたをしておくのがポイントです。

熱帯スイレンの場合

熱帯スイレンの苗が出回るのは6月頃なので、そのころに植え付けます。小さな鉢でも育ちやすいので、5~6号の浅鉢に芽が土の上に出るように浅植えにしてください。スイレン鉢も直径20㎝以上あれば花が咲きます(40㎝以上あったほうが花はたくさん咲いてくれます)。

あとの植え方は温帯スイレンと同様です。

睡蓮(スイレン)の育て方!土作り、水やり、肥料の与え方は?

スイレン 睡蓮

土作り

睡蓮は田土のような粘土質の土を好みます。そのため、市販の「スイレンの土」か、荒木田土を用いるのがはじめて育てる方にはおすすめです。赤玉土(小粒)を練ったものでも使うことができます。

水やり

睡蓮は水に沈めて育てる植物なので、基本的に水やりをする必要はありません。また、特別な水を用意する必要はなく、水道水を用いてかまいません。ただし、水が不足すると枯れてしまうので、鉢の水が減ってきたときは足しましょう。夏場は特に、水が減るので注意してください。

また、水が濁ってしまうと日光が株元に当たらなくなってしまうので、藻が生えたり、水が濁ったりするようなら、新しい水に入れ替えて生育環境を整えてあげましょう。

夏場はボウフラが発生することがあるので、鉢にメダカや金魚を放っておくと対策になります。

肥料の与え方

肥料は元肥として固形のスイレン用肥料かまたはコーティングタイプの緩効性肥料を株元から離れたところに埋め込みます。昔は煮干しなどを肥料として使っていたのですが、生育障害を起こすことがあるのでやめておきましょう。

肥料が水に溶け出すと障害を起こすので、溶け出さないよう土にしっかりと埋め、土でふたをしておきます。葉の色が薄くなってきたり、展開する新葉が小さくなってきたら肥料切れです。花が咲かなくなってくるので、そうなる前に追肥を行います。

温帯スイレンは7月まで、熱帯スイレンは9月まで、月に一度スイレン用肥料を元肥と同様に株元から離して埋め込みます。スイレン用肥料がない場合、大粒の緩効性化成肥料でも構いません。

睡蓮の育て方!花の咲かせ方と花後の手入れ

きれいに花を咲かせるコツ

睡蓮は、初夏から夏にかけて葉がどんどんと茂ります。葉が茂りすぎると株元に日光が当たりづらくなり、花が咲かなくなる原因になるといわれています。葉が重なってきたり、黄色くなった葉が出てきたら、早めに摘み取りましょう。これが花を咲かせるポイントとなります。

また、スイレン鉢で栽培していると、葉が鉢から飛出し水面から離れてしまうことがありますが、問題ありません。はじめは葉の縁が多少傷むこともありますが、慣れてくると葉が硬くなり、傷まないようになってきます。

花が終わったあとの管理

咲き終わった花は水に潜りますが、この花がらを放置しておくと水が汚れるので、早めに摘み取りましょう。小さめのスイレン鉢での栽培では花がらが外に出て虫の発生源になるので、忘れずに摘み取ります。

睡蓮(スイレン)の育て方!冬越しの方法は?

スイレン 睡蓮 冬越し

温帯スイレンであれば、水面が凍りつく程度であれば、そのまま植えたままでも冬越しできます。熱帯スイレンは屋外での越冬は難しいため、休眠させた球根を掘り上げ、軽く湿らせた水ゴケやピートモスで包んでポリ袋に入れ、春まで室内で保管します。

このとき、完全に休眠させるのがポイントで、10月頃から水深を減らし株元が水から出るようにしておく(腰水状態)と生育が止まり、休眠体制に入ります。新芽の展開が完全に止まり、生長点が丸みを帯びてきたら完全に休眠に入ったサインです。土から掘り上げ古根も切って保存しましょう。暖かい窓辺があれば水の入ったコップに球根を入れ、そのまま春まで保存することもできます。

もう一つの方法として、ムカゴ種の睡蓮であれば、8月頃にムカゴの着いた葉を切り離し水に浮かべておくとムカゴが育ち小さな球根ができるので、これをコップに入れて窓辺で越冬させる方法も簡単です。

睡蓮の育て方!植え替えの方法と時期は?

スイレン 睡蓮

鉢植えで睡蓮を育てている場合は生育が早く、根詰まりをおこしやすいので、毎年必ず植え替えが必要です。特に温帯スイレンは芽数が増えやすく、小さな鉢で密集してしまうと花が咲かなくなります。

温帯スイレンの場合

植え替えの時期は、10~11月がおすすめです(温帯スイレンの場合は3~4月でも構いません)。秋のうちに植え替えておけば、春の生育開始も早くなり花が早く咲いてきます。

古根をすべて切って土を落し、1芽ずつに切り分けた根茎を植え付けましょう。根茎の長さは7~10㎝程度あれば十分で、小さなワキ芽は邪魔になるのでカキ取っておきます。7号以上の浅鉢に土を入れ、根茎を横にして芽が土に潜らないよう植え付けますが、芽の成長してゆく方向を空けておくのがポイントです。

根茎が水に浮かないよう、お尻の部分を土に埋めるか、または針金でUピンをつくって押さえておきます。

熱帯スイレンの場合

熱帯スイレンの場合、越冬後4月下旬以降の暖かい水中で芽出しを行い、芽が動いてきたものを植え付けます。寒さにふれるとまた休眠してしまうので、気温が十分暖かくなってから行いましょう。6月頃になっても構いません。

5~6号の浅鉢に土を入れ、中心に芽がくるように植え付けます。植え込むとき、新芽が土で埋まらないよう浅植えにしますが、球根が大きい場合邪魔になるので、球根本体を横にねかせて植えると植えやすくなります。古い球根からは発根しないので埋める必要はありません。

また、根が長く伸びていたら、新芽に絡んでしまうので、すべて埋めてやるか、邪魔な場合は切り詰めても構いません。少しわかりにくいですが、球根から複数の芽が出ていると花が咲きにくくなるので、一番大きな芽だけ残し、あとは芽カキして植え付けると花が早く咲いてきます。

睡蓮の増やし方!株分けの方法と時期は?

睡蓮は、基本的に植え替えのときに「株分け」で増やすことができます。とくに温帯スイレンは芽数が増えやすく、放置すると咲かなくなるので、必ず毎年株分けして植えなおすと良いでしょう。

掘り上げた根茎を1芽ずつに切り分けますが、この時根茎の長さは7~10㎝程度で十分です(品種により多少違います)。芽が多すぎるとすぐに咲かなくなるので、多すぎる芽は取ってしまいます。特に小さなワキ芽は邪魔になるので、かき取っておきます。

熱帯スイレンの場合は、丸い球根がいくつかついていたらそれを分けて植え付けますが、小さな球根でも開花するので、大きさにこだわる必要はありません。芽出しをしてから植え付けますが、この時複数の芽が出ていたら余分な芽をカキ取って植え付けます。カキ取った芽を植え付けても増やすことができます。

スイレン 睡蓮 ムカゴからできた苗

また、ムカゴ種であれば、7月頃にムカゴの着いた葉を切り離し逆さまにして水に浮かべておくとムカゴから発芽発根し、3週間ほどで苗ができるのでこれを植え付ければ簡単に増やすことができます。うまくいくと年内に花が咲くのでぜひやってみると良いでしょう。

睡蓮の育て方で注意する病気・害虫は?

ヨトウムシは葉を食べる害虫なので、発見し次第捕殺するようにしましょう。アブラムシは、葉や花茎に発生しやすく、養分を吸汁してしまうので、大量発生する前に薬剤などで駆除するようにします。

いずれの害虫も、初期であればオルトランなどの殺虫剤をスプレーで吹きかけて駆除することもできますよ。ただし、睡蓮と一緒にメダカや金魚を飼っている場合は、薬剤で死んでしまうことがあるため、「魚毒性」の表記のない薬剤を選ぶようにしましょう。

メダカや金魚を飼っていなければ、オルトランDX粒剤などを水中にばら撒いても効果があります。

睡蓮(スイレン)の育て方のポイントは?

紫色のスイレンの花の画像

睡蓮は日光を好む植物で、太陽の光に当たるほど生長し、花つきが良くなるので、株元までしっかりと日光が当たる場所で育てるようにします。また、株元が水から出てしまうと成長が止まるので、最低でも10㎝以上の水深は確保して育てましょう。

睡蓮には「耐寒性(温帯スレン)」と「熱帯性(熱帯スイレン)」の2種類があり、気候との相性があります。耐寒性のものは水面が凍っても冬越しできますが、水中の根茎まで凍らないように気をつけてください。

熱帯性の睡蓮は小さな容器でも育てられるのが特徴で、夏の間非常に良く花を咲かせますが冬の寒さには弱く、球根を掘り上げて室内で越冬させます。

どちらの種類でも家庭で育てることができますが、それぞれに特徴があり、性質を理解して育てればその魅力を十分に味わうことができます。

睡蓮の育て方を覚えて美しい花を咲かせよう

朝早くから花を開き、午後~夕方には閉じてしまう睡蓮の花は、幻想的。また、水面に美しい花を咲かせる様子は、夏の暑さを少し和らげてくれそうですね。

水生植物なので、ほかの植物と育て方は違いますが、きちんと管理すれば簡単に育てることができるので、ぜひ一度栽培にチャレンジしてみてください。

更新日: 2023年04月05日

初回公開日: 2015年07月14日

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