お刺身の彩りや和え物として楽しまれる食用菊。日本の伝統的なエディブルフラワーの1つであり、おいしく食べながら健康になる花として、長きにわたって親しまれてきました。今回は、そんな食用菊とは何か、栄養や効能、栽培方法や食べ方についてご紹介します。
食用菊とは?
食用菊とは、色や香りを楽しみながらおいしく食べられる菊のことです。中国では、古くから9月9日の重陽の節句に、不老長寿を願って菊のお酒やお茶を飲む習慣があり、漢方薬としても利用されてきました。日本へは奈良時代に、この風習とともに薬酒の原料として菊がもたらされました。ただ、この頃はまだ食べられることはなく、食べられるようになったのは江戸時代からです。
今では、ゆでておひたしにしたり、酢の物にしたり、サラダに加えたりと、エディブルフラワーの1つとして親しまれています。
食用菊の種類や品種は?「もってのほか」が有名
食用菊は、山形県や新潟県で主に栽培されています。紫花の「延命楽(もってのほか・カキノモト)」と黄花の「阿房宮(あぼうぎゅう)」が有名です。これらは観賞用の菊に比べて花が大きく、苦みが少なくほのかに甘みがあることが特徴です。
愛知県が全国シェアの9割を占めるつま菊(小菊)には、「秋月」「こまり」などがあり、こちらは主に刺身のつまや料理の飾り付けに利用されます。
食用菊の栄養・効能は?
食用菊には、抗酸化作用をもつビタミンC、血行をよくするビタミンE、皮膚や粘膜を丈夫にするビタミンB2など、美肌やアンチエイジングに効果的な栄養素がたくさん含まれています。
また、菊の花を刺身などの生ものに添えるのは、優れた殺菌・解毒効果を期待してのこと。有効成分の働きによって、体内の抗酸化物質グルタチオンの生成を促進し、毒素の吸収を防ぐとともに、香りの忌避作用で害虫を遠ざける効果があります。
ほかにも生活習慣病を予防、改善するとして注目されているのは、菊に含まれるポリフェノールの一種クロロゲン酸と、独特の苦みのもとであるイソクロロゲン酸です。これらは悪玉コレステロールを抑制して中性脂肪を減らし、発ガンを抑制するといわれています。
食用菊の栽培方法は?
基本的には観賞菊と同じように育てられます。ただ、食べるものなので、安全な農薬や肥料を使うことが大切です。食用菊は草丈50cm~1mと大型で、上手に育てると1株に300~500個もの花をつけます。大きくなると雨や風で倒れやすいため、花同士がすれ合って傷まないよう、30~40cmになったらネットを張るか、支柱を立てて固定しましょう。また、美しい花色を保つためには秋~冬の霜よけも欠かせません。ていねいに育てられた食用菊は、つま菊は通年、延命楽や阿房宮は10~11月頃に旬を迎えます。
食用菊の食べ方、ゆで方、保存方法は?
食べ方
食用菊はあっさりした上品な味なので、アイデアしだいで色々な食べ方ができます。新鮮な食用菊は、生のまま衣をつけて揚げる天ぷらがおすすめです。また、花びらをゆでたものは、おひたしや酢の物にしたり、サラダに加えたりもよく行われる食べ方となっています。
不老長寿の霊薬とされる菊酒も、食用菊200gを焼酎など35度以上のアルコール900gと氷砂糖100gと一緒に約1ヶ月半漬け込むだけと簡単に作れます。薄い飴色でふわりと香る、本格的な味わいに仕上がります。つま菊をむしって刺身醤油に散らしたり、花を1輪日本酒に浮かべたりしてほのかな香りを楽しむのもよいですね。味にクセがないので、アレンジしだいでレシピのバリエーションが広がりますよ。
ゆで方
ポイントは、鮮やかな色を保つために必ず少量の酢を入れること。そして、鍋のお湯が沸騰してから菊を入れ、30~40秒くらいサッとくぐらせる程度にとどめます。ゆで時間が長いとシャキシャキとした歯ごたえがなくなってしまいます。
1. 花びらを摘み取る
2. 花びらをボールに入れ、流水でサッとすすいで汚れを落とす
3. 鍋にお湯を沸かし、沸騰したら水1ℓに大さじ2~3杯ほど酢を加える
4. 花びらを鍋に入れ、菜箸で泳がすように1~2回軽く混ぜる
5. 再び沸騰したら手早くザルにあげ、冷水にさらす
6. 熱が取れて冷たくなったら水から引き上げ、手で軽く絞って水気を切る
保存方法
ゆでたものは冷蔵庫で1週間ほど日持ちします。小分けにしてラップで包み、保存袋に入れて冷凍すれば、半年くらいは保存できますよ。食べるときは、冷蔵庫で自然解凍して使用してください。
色々な食用菊のレシピを楽しもう
彩り、香り、風味の三拍子がそろった食用菊。9月9日の菊の節句はもちろん、祝いごとの料理やおせちにあしらうと、日本の風情を感じさせてくれます。これまであまり馴染みがなかった方も、ちょっと料理に加えてみてください。いつものレシピにアレンジを加えて、楽しむことができますよ。
更新日: 2015年12月25日
初回公開日: 2015年12月25日