植物は清潔な土で育てないと病気や害虫の被害にあいやすくなります。そのため、新しい植物を育てれば育てるほど、古い土がどんどんたまる…。
特にベランダでガーデニングを楽しんでいる方は、土の処分に困ることが多いのではないでしょうか。今回は、古くなった土を再生させる土壌改良材と、その方法についてご紹介します。
土壌改良材とは?土壌改良剤と肥料の違いは?
土を施し、物理的や化学的、生物的な性質を変化させるものを「土壌改良材」「土壌改良資材」といいます。
土壌改良材は、肥料取締法によって定められた「肥料」と、地力増進法によって定められた「土壌改良剤」、そしてその他の土壌改良剤の3種に大きく分けることができます。中には、肥料と土壌改良剤の両方に含まれるものもあります。
効果
土壌改良剤の効果は、種類によって異なります。例えば、通気性や水はけを改善したり、土を柔らかくしたり。土のpHを調整する石灰類も土壌改良剤と思われがちですが、これらは肥料に含まれます。
一度使った古い土は、栄養が減り、土の粒が崩れて水はけが悪化しています。また、病原菌やセンチュウが潜んでいると植物がうまく育たたない可能のある土は、土壌改良材と混ぜあわせ、適切な消毒をすることで再利用が可能になります。
肥料との違いは?
肥料は、植物に栄養を与えるために施すのに対して、土壌改良剤は、土の質自体を改善して、植物の育ちやすい環境を作る作用があります。
そのため、古い土に施して状態を回復させるだけでなく、はじめて使う土にも利用できます。
土壌微生物「土壌菌」ってなに?
土壌菌は、「土壌微生物」とよばれる土の中に生息する微生物のことです。バクテリアや糸状菌(カビ)、放線菌(土壌酵素)、センチュウなど、植物の生長によい影響や悪い影響を与える可能性を秘めています。
小さじ1杯の土の中には、約1億もの土壌菌が生息し、微生物同士がお互いをけん制したり、共存したりして、増減を繰り返しているのです。
ガーデニングや家庭菜園においては、偏った土壌菌のバランスを土壌改良剤で調整することが大切になってきます。
土壌改良剤の種類8種とその効果は?
1. バーミキュライト
バーミキュライトは、ひる石を高温で焼き、膨張させて作られた鉱物です。薄い層が積み重なった構造をしており、表面にたくさんの穴が空いていることから、水はけと通気性をよくし、土の温度を保つ働きがあります。
また、水を吸収することから、水もちと肥料もちをよくする効果も。さらに無菌でpHもほぼ中性なことから、土壌改良剤としてだけでなく、種まきや挿し木用の土としてもおすすめです。
2. パーライト
パーライトは、黒曜石、真珠岩を高温で焼き、粉状に加工した白色の発泡体です。土の水もちを改善するためによく用いられ、粒が小さければ小さいほど水もちがよくなります。
真珠岩のものは0.1~5mm、黒曜石のものは0.5~5mmほどの大きさをしています。
3. くん炭/もみ殻くん炭
くん炭は、もみ殻をいぶして灰にしたものです。保水性と通気性に優れ、有機肥料や堆肥のにおいを消臭する効果があります。また、アルカリ性なので酸性土壌の中和にも活用できます。
4. ゼオライト
ゼオライトは、沸石もしくは沸石を含む凝灰石を粉状にしたものです。表面には、目に見えないたくさんの穴が空いているのが特徴です。
活性炭のような役割を果たし、アンモニアガスなどの毒素や防臭、除湿といった効果をもたらします。また、イオン交換機能があるころから、土の肥料もちを改善してくれます。
5. ピートモス
ピートモスは、コケ類が積み重なって固まったものを、乾燥・粉砕したものです。もともと水の中にあったものなので、保水性が高く、土の通気性や肥料もちをよくしてくれます。
また、強酸性なので、土を酸性に傾けたいときにも使われる土壌改良剤です。
6. 腐葉土
腐葉土は、広葉樹の枯葉や枝など植物性の有機物が積み重なり、土状になったものです。排水性、通気性、保肥性といった土の総合力を高める働きがあり、痩せた土を再生させてくれます。
7. 堆肥
堆肥は、肥料取締法によって「特殊肥料」に分類されるとともに、地力増進法によって「地力増進法政令指定土壌改良資材」の適用を受ける肥料兼土壌改良剤です。植物性と動物性のものがあり、原料とするものによって効果が異なります。
土壌改良剤としては、肥料成分をほとんど含まないバーク堆肥がよく利用されます。バーク堆肥は、樹木の皮を原料に発酵させたもので、保水性が高いことから土を柔らかくし、水はけと水もちのバランスをよくしてくれます。
8. ミミズの糞
ミミズの糞には、植物の根が吸収しやすい良質なタンパク質、カリ、リン酸、カルシウム、マグネシウムなどの栄養が少しずつバランスよく含まれています。市販されているものは糞を乾燥させて粉末状にしたものです。
鉢やプランターの土の再生方法は?リサイクルできる?
鉢やプランターでは、限られたスペースで植物を栽培します。そのため、特定の栄養素や微生物が増えすぎたり減りすぎたりしてしまい、バランスが崩れがちです。少なくとも年に1回は容器から土を出して、栄養補給と消毒を行っていきます。
土の再生までには2週間前後かかります。すぐに土を再生させたいときは、乾燥させた土に苦土石灰、腐葉土、少量の殺虫剤を混ぜ込む方法が手軽です。
手順
- 土を乾燥させる
- 乾燥させた土をふるいにかけ、鉢底石、古い根、枯葉を取り除く
- ふるいに残った土を黒いビニール袋に入れる
- 水をたっぷりかけて土を湿らせ、袋の口をきつく縛る
- 日の当たるコンクリートの上に2週間放置する
- ひと握りの苦土石灰または古土の再生材、肥料を加えてよく混ぜる
庭や畑の土の再生方法は?
庭や畑の大量の土を再生するときは、その場でできる方法が適しています。畑や庭をいくつかの区画に分けて、違う科の植物をローテーションで栽培することと連作障害のリスクを減らすことができます。
古い土をふるいにかけることから、再生させた土は、もとの量よりも目減りします。土の量が足りなければ、赤玉土などを加えて調節してください。
手順
- 土を30cmほど掘り返し、古い根や枯葉を取り除く
- 苦土石灰を1㎡あたりコップ一杯分(100~150g)をまく
- 上下の土を入れ替えるようにしてよく耕す
- 掘り返した土を2週間ほど日光に当てる
- 再生した土の状態を見て各種土壌改良材を混ぜて仕上げる
自分にあった土壌改良材で土を再生しよう
土の再生方法には、今回ご紹介したもの以外にいろいろな方法があります。「寒ざらし」といって、冬の厳寒期に土を掘り返して外気に当てる方法もよく行われますよ。
また、茶殻やコーヒーかす、卵の殻なども身近なものも土の再生に役立ちます。工夫をして、植物本来の力を引き出す土を作ってみてくださいね。
更新日: 2018年07月18日
初回公開日: 2016年01月06日