藤(フジ)は、春にたおやかな花房から甘い香りを漂わせる植物です。古事記の時代から鑑賞されており、名所も全国各地にあります。公園で藤棚になっているのを見かけると自宅で育てるのは難しそうに感じてしまいますが、適切な管理を行えばたくさんの花を楽しむことができますよ。今回は、藤の育て方をご紹介します。
藤(フジ)はどんな花が咲くの?
藤はマメ科のつる性落葉低木です。4~6月に蝶のような形の小花を房状に垂れ下げ、幹の方から先端に向かって咲き進めます。マメ科なので、花の後には10~20cmのいんげん豆のような細長い実をつけます。
和名は、風に吹かれて花が舞い散る様子から「吹き散る」が転じてつけられたという説や、茎に節(ふし)があることにちなんでいるという説などその由来には諸説あるようです。
藤(フジ)の花の育て方!種から育てられる?苗を植え付ける時期と方法は?
藤は種と苗から育てることができます。しかし、種はあまり市販されておらず、花が咲くまでに早くても3年かかることとから、はじめての方は苗から育てましょう。
鉢植え
落葉期の11~3月に苗を鉢や地面に植えていきます。水はけと水保ちがよければ、土質を選びません。苗の根がおさまる程度の大きさのものを選んで植えていきましょう。
大きすぎる鉢だと、根の生育は活発になりますが、花が咲かなくなってしまう可能性があるので注意してください。
土は、黒土を主体に、堆肥や腐葉土を混ぜ込んだものを用います。通気性が悪い場合は、川砂や鹿沼土も混ぜ合わせましょう。
地植え
日当たりのよい場所を選んであげることが大切です。日陰だと、花が咲かなくなってしまいます。事前に庭土を掘りあげ、堆肥や腐葉土を混ぜ込んでおいたものに植えていきましょう。
藤の根は繊細で、周りについている土は簡単に落ちてしまいます。しかし、根が傷つくと花が咲かなくなるので、植える際は鉢植え・地植えいずれの場合も根は丁寧に扱うようにしてください。
藤(フジ)の花の水やり、肥料の与え方は?
水やり
藤は、水が大好きな植物です。鉢植えの場合、土の表面が乾いたら鉢底から流れ出るくらいたっぷりと水を与えましょう。
春と秋は1~2日に1回、夏は1日1~2回、冬は乾燥したら水やりをするといいですよ。
地植えの場合は、基本的に水やりの必要はありませんが、夏は乾燥しているようなら朝か夕方に水やりをしてあげると安心です。
肥料
肥料は、12~2月の落葉期に骨粉や油かすなどの有機質肥料を株元にばらまきます。
ただ、肥料の窒素分が多いと葉ばかり茂り、花つきが悪くなるので、リン酸とカリウムを多く含むものを選んでください。
花後の管理
5月に咲いた花をそのままにしておくと、種の入ったサヤを実らせます。種がつくと木の生長を阻害するので、花が枯れてきたらこまめに花柄摘みを行いましょう。
種を採取したい場合は、最後の方の花房だけ残すようにしてください。
藤(フジ)の花の植え替え!時期と方法は?
2~4月が植え替えの適期です。鉢植えは、限られた中で育てられていることで花が咲きやすくなります。
2~3年に1回の頻度で植え替えを行いますが、大きすぎる鉢に植えないように注意しましょう。根がすっぽりおさまる程の大きさの鉢を選ぶのがポイントです。
藤(フジ)の花を剪定する時期と方法は?夏と冬で違うの?
藤はつるがどんどん伸びます。剪定せずそのままにしておくと葉が茂り、幹に日が当たらなくなってしまい、花が咲かなくなってしまいます。そのため、夏と秋の2回剪定を行いましょう。
夏の剪定
樹形を作ることと、花芽をたくさんつけさせる目的で行います。花後の5月下旬~6月下旬までに混み入っているつるや、重なっているつるを基部から剪定します。
また、幹から出ているつるや、地面から伸びるつるは、元から切り取りましょう。
さらに7月上旬頃に、春に伸びた枝で、まだ伸びる勢いの強いものは、先端を切るか手で摘み取り、適当な長さにします。
冬の剪定
樹のバランスを整えることが目的です。葉が落ちた後の11~3月に行いましょう。長く伸びすぎた枝や花芽のついていない枝を切り取ります。
花芽は葉芽に比べて丸みがあるので、ひと目で見分けることができますよ。
また、「ヤゴ」という勢いよく伸びる枝が株元や幹の途中から発生するので、見つけ次第付け根から切り落とします。
11月以降にその年に伸びた短いつるの基部につく花芽を3~4個残して、つるを切り詰めます。
ただ、庭植えいよく用いられるノダフジ系は、花芽と葉芽の区別がつきにくいので、見分けられないものに関しては大胆に切らない方が安心です。
藤(フジ)の花が咲かない原因は?
まず考えられる原因のひとつとして、根が傷ついたり切れてしまっている可能性があります。
藤は太い根を切られることを嫌がるので、地植えから鉢植えに植え替える時などは、根を切らずに深い位置から丁寧に掘り起こし、植えていきましょう。
もし根を切ってしまった場合、幹が腐ったり、何年も花が咲かなくなってしまう場合もあります。
また、木の生長に栄養が偏り、花があまり咲かないこともあります。この場合は、大きく生長した後で再び花をたくさんつけるようになるでしょう。
他にも、幹に日が当たらなかった場合も考えられます。
藤(フジ)の花の増やし方!挿し木の時期と方法は?
藤は種まき、挿し木、接ぎ木で増やすことができます。
挿し木
3~4月か、5月の花が終わった後から7月が適期です。太くて元気のいい充実した枝を、15~20cmほどの長さに切り取り、挿し穂を作ります。
赤玉土7:腐葉土3もしくは挿し木用の培養土に刺していきます。
その後、風通しのいい日陰で水切れしないように管理すると、1ヶ月ほどで発根するので、ある程度根が育ったら、鉢上げや定植させていきましょう。
接ぎ木
3月頃が適期です。ただ、台木の準備が難しく、技術を要するため一般的には行われません。
藤(フジ)の花の育て方で注意する病気や害虫は?
藤はこぶ病に注意する必要があります。こぶ病とは、梅雨時期~夏にかけて発生しやすい病気で、枝や幹にできたこぶが次第に大きくなり、空洞化してしまいます。
見つけ次第こぶを削り取りましょう。また、切り口には癒合剤を塗って雨や最近の侵入を防いでください。
春~夏には、ハマキムシやコガネムシ、アブラムシなど害虫の被害にもあいやすいのです。それぞれ、見つけ次第駆除し、殺虫剤を散布して防除してください。
藤(フジ)の花の育て方のポイントは?
藤は日当たりがよく生育が旺盛なので、1年間日光によく当てて育てれば鉢植え・地植えいずれの方法でも簡単に育てることがきます。
寒さにも強いので、戸外での冬越しも可能です。また、水を好むので、たっぷりと与えることが大切です。特に夏は水切れを起こしやすいので注意してください。
藤(フジ)の花の育て方を楽しもう
藤は、5月に紫色や白、ピンクの美しい花をたくさん咲かせます。
植えてからしばらくは、花が咲かなかったり、つるが伸びすぎたりして手入れの手間がかかりますが、美しい花を咲かせてくれますよ。焦らず、根気よく育ててみてくださいね。
更新日: 2022年05月06日
初回公開日: 2015年08月08日