植物を元気に育てるには、それぞれに合った環境を作ってあげることが大切です。中でも、植物が育つ土はアルカリ性や酸性といった酸性度合い(pH)が違い、異なる酸性度合いの土で育てると、生育が悪くなって枯れてしまうことも。消石灰は、土をアルカリ性に変えるために欠かせない土の1つです。今回は、消石灰とはどんなものなのか、生石灰との違い、効果や消毒・肥料としての使い方、価格についてご紹介します。
消石灰とは?
消石灰とは、水酸化カルシウムの別名です。水酸化カルシウムは、全国各地で採掘される石灰石に水を加え、熟成させることで粉末状になります。
こんにゃくの凝固剤といった食品、化粧品など生活用品、砂や改装中術物と練り合わせたものは、壁や天井に塗られる漆喰(しっくい)として多く利用されています。目に入ると有害なことから、今では使われなくなりつつありますが、学校のグラウンドに白線として引いていたのも消石灰なんですよ。
園芸では、土に少量を混ぜ込んで寝かせることで、アルカリ性(pH度数)を高める効果があります。中性やアルカリ性の土を好む植物を育てる場合や、長年雨で酸性度が高くなった庭の土を改良するために利用されます。
消石灰の消毒や肥料の効果は?pHは?
消石灰には肥料となる成分は含まれていませんが、pH12と強いアルカリ性であることから、園芸では酸性の土を中和するために用います。※pHの表は下にあります。
また、ウィルスや細菌は生きていられるpH域が決まっており、強い酸性もしくはアルカリ性の環境では死滅してしまうことから、土を消毒するために畜産農家や農家の方が利用します。2004年に流行した鳥インフルエンザを消毒するために使われたのも消石灰なんですよ。
土壌酸度 | pH値 |
酸性 | ~5 |
弱酸性 | 5.5~6 |
中性 | 6.5~7 |
アルカリ性 | 7.5~ |
消石灰と生石灰、苦土石灰との違いは?
生石灰
生石灰とは、酸化カルシウムのことです。石灰石に強い熱を加え、二酸化炭素を飛ばすことで生成され、食品の乾燥剤として広く普及しています。これに水を加えて作られたのが消石灰です。
水を加えると数100度にまで発熱するほど反応が強いことから、園芸には用いられることはありません。また、自宅で乾燥剤に水を加えても消石灰は作れず、発熱して危険なので注意してください。
苦土石灰
ドロマイトという鉱石を加熱し、砕いて粉または粒状にした肥料です。炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムが主成分となっており、土の性質を改良するとともに、植物の生育を促す肥料として園芸では利用されます。消石灰よりも反応が穏やかで、肥料としての効果もあることから、ガーデニングには欠かせない存在となっています。
消石灰の使い方、散布量は?
土を改良するときは、植物を植え付ける2週間前に消石灰をまき、1週間前に肥料を混ぜます。消石灰と肥料を同時に土に混ぜてしまうと、アンモニアガスを発生させるため、時間をおいて混ぜる必要があります。
アンモニアガスは、pHが7.5以上の土で発生しやすく、植物の体内に入って酸素を奪って枯らしてしまうので注意してください。
また、散布量の目安は、1㎡当たり60g~120gほどですが、最近では粉状ではなく、粒状になっている商品もあるので、使用前に説明書きを確認しましょう。
消石灰の使い方の注意点は?
アルカリ性であることから、粘膜や皮膚に直接触れると、炎症を引き起こす可能性があります。2011年には目に入って失明してしまった、という例も報告されています。消石灰の使用時には、マスクや長袖、手袋、保護メガネを着用しての作業を心がけてください。風に吹かれても舞いづらい粒状のものを使うと安心ですよ。
消石灰の価格は?
消石灰の価格は、大袋(10~20kg)で500~1,000円ほどが相場です。粉状の方が加工の工程があるため、100~200円程度割高になっています。
消石灰には消毒の効果がある
植物によって必要な成分や好む環境が違い、それぞれに合った環境を作ってあげることが、土作りの醍醐味です。消石灰は、土の性質を変える上では必要不可欠な存在です。
取り扱いに注意しながら、上手に利用して植物を元気に育ててくださいね。
更新日: 2019年11月29日
初回公開日: 2015年10月28日