カイガラムシは庭木や果樹、観葉植物にくっついて植物を弱らせる害虫です。被害が拡大すると最悪の場合、植物が枯れてしまうこともあります。今回は、そんなカイガラムシの生態や駆除の仕方、予防策などをまとめました。
カイガラムシとは?幼虫や成虫の生態、種類は?
生態
カイガラムシとは、体長2~10mmほどの小さな虫で、葉っぱや茎に口ばしを挿して樹液を吸うことで成長します。また、植物に寄生した後はほとんど動くことがありません。
幼虫の間は、何も覆っていないので農薬や殺虫剤が効果的。ただ、成虫になるにつれ、余分な栄養や排泄物が蓄積して、体を覆う殻になります。殻が作られると薬剤が効かなくなってしまい、こすって落とすしか駆除する方法がなくなるので、駆除するタイミングがとても大切です。
種類
カイガラムシは、セミやアブラムシ、カメムシなどの仲間の昆虫です。熱帯から亜熱帯に広く分布し、カイガラムシ上科という分類には、全世界に7,000種以上、日本国内ではおよそ400種類が確認されています。植物の生える場所であれば、どこにでもいるというほど身近に潜む害虫です。
日本では、ハカマカイガラムシ科、ワタフキカイガラムシ科、コナカイガラムシ科、カタカイガラムシ科、マルカイガラムシ科がよく見られます。
カイガラムシが発生する原因は?どうやって植物に寄生する?
カイガラムシは、1年を通して活動と繁殖を繰り返す害虫です。春の暖かくなる5~7月に増殖が盛んになる種類が多く、冬場の寒い時期になると休眠します。
1. 衣服に付いて、部屋に持ち込んでしまう
風に運ばれてくることや自分の衣服についてそのまま持ち帰ることで、自宅の植物に寄生してしまいます。
2. 風通しが悪くほこりっぽい環境で増殖
風通しが悪くほこりっぽい場所や、暗くて狭い環境を好むので、植物が弱っていたり室内で置きっぱなしになっていたりすると、いつの間にかカイガラムシが大量に発生していたということがあります。
カイガラムシは種類によってはメスだけでも卵を生む?
カイガラムシの中には、メスだけで卵を産んで増殖できる種類もいるため、放置しておくとあっという間に増殖してしまいます。風通しや清潔な環境を心がけましょう。
カイガラムシの被害は?
カイガラムシの被害には、直接的なものと間接的なものがあります。直接的な被害は、メスの成虫が植物を吸汁することで生育を妨げることや、新しい枝や葉の成長が悪くなることです。その結果、枝枯れや衰弱、枯れるなどの被害を引き起こします。
間接的な被害は、カイガラムシの排泄物の甘いにおいに引き寄せられて、別の虫や菌が寄ってくることです。特に「すす病」を引き起こす「すす病菌」が寄ってきやすくなります。すす病に感染する原因のほとんどはカイガラムシで、葉っぱの表面にすすがかかったような灰色から黒色の模様が現れます。
カイガラムシの予防や駆除方法は?
カイガラムシの駆除には、殻を作る前に殺虫剤を使うか、殻ができた後に手作業取り除くかの2パターンがあります。成虫になると硬い殻に覆われるカイガラムシ。殻のせいで殺虫剤が効きにくいため、見つけた成虫はブラシでこすり落としましょう。幼虫の頃は殺虫剤が効果的です。
カイガラムシは成長段階によって対策が異なるため、他の虫に比べて予防しにくいのが特徴です。秋から冬にかけて、カイガラムシの動きが鈍くなる頃にマシン油乳剤などを散布して予防するとよいですよ。
また、カイガラムシの排泄物はすす病を誘発する恐れもあるので、定期的に葉っぱを確認して、早めに対処するのがポイントです。
着色料の原料になるカイガラムシ
カイガラムシは、ガーデニングにおいてやっかいな害虫ですが、人々の生活の中にはカイガラムシを利用した製品があることをご存知でしょうか。
例えば、乾燥したコチニールカイガラムシは「コチニール色素」と表記される着色料の原料で、粉末状にして利用されます。食紅や口紅、アイシャドーなどの化粧品に使われているんですよ。また、ラックカイガラムシは「ラック色素」という食品や高級塗料、チョコレートのコーティングなどに利用されています。
カイガラムシは成虫ではなく幼虫のうちに駆除しよう
カイガラムシは、植物が生えていればどこにいてもおかしくないほど、生息範囲の広い害虫です。あらゆる被子植物に寄生し、栄養分を吸い取って生きています。
ハダニなどと違い、葉水では対策ができないので、発生しやすい期間に薬剤を散布するか、手作業で幼虫を駆除するのが最も有効な駆除手段ですよ。また、過湿を好むので、風通しのいい環境で植物を育ててあげてくださいね。
更新日: 2018年07月30日
初回公開日: 2015年08月15日