植物を植えたとたんに病害虫に侵されてしまった…となると、悲しい気持ちになりますよね。そんな失敗をしたくない方におすすめなのが、接ぎ木苗です。丈夫で病害虫に強く、ガーデニング初心者でも育てやすいとされています。今回は、接ぎ木苗とはどんなものなのか、台木に向く植物、育て方についてご紹介します。
接ぎ木苗とは?
接ぎ木苗とは、2つ以上の植物を人の手で接合して作る苗木のことです。本来育てたい植物に対して、別の強い植物をくっつけることで、特徴を残したまま生育のよい苗木を作り出すことができます。
台木や穂木とは?
台木とは、接ぎ木苗の根の部分となる土台の植物です。台木に対して、本来育てたい上部にある植物を穂木といいます。台木は、穂木に土から水分や栄養を送り、生育をよくしていきます。
接ぎ木苗のメリット・デメリット
メリット
連作障害に感染するリスクを軽減することが最大のメリットです。連作障害とは、繰り返し同じ土で同じ植物を育てることで発生する生育障害のことです。このとき、接ぎ木苗を使えば、地面に接している植物は前の年のものと違うことから、病気や害虫の被害を受けにくくなります。
この他にも、背の高すぎる植物をコンパクトにまとめる、果実を収穫するまでの期間を短縮するといった効果も期待できます。
デメリット
接ぎ木苗は、上下で違う植物をつなぎ合わせることから、植物同士の相性をきにしなければなりません。相性が悪いと、拒絶反応を起こして枯れてしまいます。また、花付きが悪くなる、実の味・色・形が違う、といった予想できない影響が植物に現れることも。さらに、接ぎ木苗を作るときに2つ以上の植物を育てる時間とコストがかかることもデメリットです。
台木に向いている植物は?
台木には病害虫への抵抗力が高く、根の強い植物が向いています。また、穂木と台木は異なる種類よりも近縁種同士の方が接合しやすいことから、果樹や花木では同じ科の植物同士を接ぎ木にすることがほとんどです。例えば、バラの台木にはノイバラがよく利用されます。
ただし、一部サボテン科とディディエレア科やカボチャとキュウリのように、異なる科の植物であっても融合することもあり、親和性については現在も研究が続けられています。
接ぎ木苗の育て方の時期と方法は?
台木は、種からでも育てられますが、接ぎ木として使えるようになるまで長い年月を必要とします。一般的にはまず挿し木で台木苗を育て、ある程度太くなったところで目的の品種を穂木として接ぎ木にします。早いもので1年ほどの育苗期間で台木に使えるほどに生長します。台木と穂木の準備ができたら、接ぎ木をして接ぎ木苗の完成です。
接ぎ木苗を植え付ける時期や方法は、それぞれの穂木と同じです。ただ、では深植えは禁物。まったく根がない状態の穂木でも、つなぎ目が地面に触れると発根してしまい、接ぎ木の意味がなくなってしまいます。少なくともつなぎ芽が地面から3~5cm上になるよう植え付けましょう。
反対に、台木から芽が生えてくることもあるので、そのときは出てきた芽をすべて摘み取ってください。ほうっておくと台木と穂木の特性が入り混じり、果実の形が悪くなったり、穂木と台木が合わさったような花が咲いたりします。
接ぎ木苗は穂木と台木の相性が大切
まったく別の植物同士をつなぎ合わせる作業は、どこか工作のような楽しみがあります。ミカンとレモンの接ぎ木苗からは、丸いレモンが実ったり、ピンク色のトマトに赤い実がなったり、接ぎ木からは生命力の神秘を肌で感じることができますよ。そうした予想外の作用も、接ぎ木ならではの楽しみなので、植物の育成に慣れてきたら、ぜひ1度はチャレンジしてみてくださいね。
更新日: 2015年12月17日
初回公開日: 2015年12月17日