野菜や園芸植物を増やす方法の中で、成功すれば最も生長が早く、丈夫に育つ方法が接ぎ木(つぎき)です。聞きなれない言葉なので、どんな方法なのかイメージがわきづらいですよね。また、挿し木に比べて効率的な増やし方ではないので、タイミングと準備が大切になってきます。
今回は、接ぎ木の方法や時期、管理の仕方、接ぎ木苗の管理の仕方やテープの使い方などをまとめました。
接ぎ木とは?
接ぎ木とは、近い分類の植物同士をつないで、1つの植物として育てる方法です。数を増やしたい植物(穂木:ほぎ)をある程度の大きさでカットし、土台となる植物(台木)に切れ目を入れて挿し込み、一定期間周りを保護し、融合させていきます。
接ぎ木をおこなうことで、病害虫に強い・花つきがいいといった台木の性質を穂木に受け継ぐことができます。また、穂木の残しておきたい性質を損なう心配もありません。さらに、台木が最初から根付いているので、生長が早いこともメリットです。
ただ、挿し木など他の増やし方に比べて手間がかかる、台木と穂木の相性が悪いと両方とも枯れてしまうといったデメリットもあります。増やしたい植物の性質に合った増やし方を選ぶことが大切です。
接ぎ木の仕方は?準備する物は?
接ぎ木には、植物を切るナイフや園芸ばさみの他に、接ぎ木テープや癒合剤が必要になります。接ぎ木テープとは、接合部分に巻いて植物同士をくっつけるテープのことです。接ぎ目に巻くことで切り口を保護し、水や雑菌の侵入を防いでくれます。
癒合剤は、台木と穂木の切り口部分に塗る薬剤で、傷口を早く癒やす他、接合しやすくなる効果があります。接ぎ木テープや癒合剤は、園芸店やホームセンター、インターネットサイトで購入できます。
接ぎ木の時期は?穂木の保存の仕方は?
接ぎ木は、3~4月、7~8月が適期です。穂木が秋冬に枯れてしまう植物の場合は、冬の剪定のときに穂木を切りとっておき、乾燥しないようにビニールで包んで冷蔵庫などで保存しておきましょう。
接ぎ木の方法は?みかんの木に向いているの?
接ぎ木にはいくつかの方法があり、台木や穂木の特徴によって適切な方法を選びましょう。今回は代表的な4つの方法を紹介します。
三角接ぎ
三角接ぎは、植物同士が接する部分を細長い三角形にすることで、密着部分を多くします。成功率が高く、最近では主流になっている方法です。三角接ぎに向いている植物は、ツバキやハイビスカス、イチジク、ウメ、アンズなどです。
1. 台木を用意する
2. 地上5cmくらいで台木を切る
3. 台木に斜めに刃を入れ、片側を切りとって逆三角形の切り口を作る
4. 穂木を台木に作った切り口の形に合うよう斜めに切る
5. 台木に穂木を密着させ、お互いの切り口をしっかりとくっつけ、園芸店などで市販されている接ぎ木テープを巻いて、動かないように固定する
6. 台木の切り口が乾燥しないように、ビニールなどで覆う
芽接ぎ
芽接ぎとは、台木に新芽の部分を刺し込む接ぎ木の1種です。8~9月頃が適期で、バラ、モモ、ブルーベリー、みかんなどの柑橘類が向いています。
1. 新しい枝についている芽の部分を下側からナイフを入れて切りとる
2. 台木にT字型の切り込みを入れ、皮をはぐ
3. 切りとった芽が外へ出ている状態で台木に差し込み、接ぎ木テープで固定する
種子接ぎ
種を台木にする方法が、種子接ぎです。暖かくなってきた3月頃に種子を巻き、4~6月に生長した種を使って種子接ぎをおこないます。もしくは、9月に採取した種を湿らした水ゴケに入れて保存しておき、4~6月に発根した種子でおこなってもかまいません。ツバキなどにおすすめの方法です。
1. 発芽、発根した種の部分を切り離す
2. 切りとった種の外側にナイフで切れ込みを入れる
3. 先端を削った穂木を種子に刺し込む
4. 清潔な赤玉土(小粒)に植えて、乾燥しないようにビニールなどで覆い、明るい日陰で育てる
根接ぎ
根接ぎとは、他の接ぎ木とは目的が異なり、台木の根張りを強くするためにおこなう方法です。根の張りが弱かったり、部分的になくなったりしているときに、根の生えた穂木を接いで新しい根として生長を促進させます。梨や山モミジ、ブドウなどに向いています。
1. 台木の根に近い皮の一部分を切りとる
2. 穂木の接合部分を切り口に合わせて切りとる
3. 台木の根を土に植えたまま穂木をくっつけて、接ぎ木テープや木工用ボンドで固定する
4. 接ぎ木した部分が土に埋まるよう、深めに植えつける
接ぎ木の仕方!苗の育て方は?
接ぎ木してできた苗を「接ぎ木苗」といいます。これは、自作したものだけでなく、市販されている接ぎ木の苗も指します。
接ぎ木苗は、日陰で管理して、接ぎ木部分に水が入らず乾燥しないよう、テープをしっかりと巻いておきます。接ぎ木後は、通常の植物を育てるのと同じように土の表面が乾いてから水やりをおこないます。ただし、芽が出てくるまでは高温多湿の環境をととのえて、乾燥しにくい状態を保つためにビニールをかけるなどして管理しましょう。
接ぎ木は、挿し木などに比べて成功率が低く、植物同士の相性が悪いと穂木と台木の両方が枯れてしまうのはよくあることです。近縁種との相性を事前に調べるようにしてください。
また、接ぎ木がうまくいっても、生長の過程で台木が生長してしまい、穂木が生長しないこともあるので、台木から芽が出てきたら摘芯をおこない、穂木へ栄養を回すようにすることも大切です。
接ぎ木の仕方は、苗の管理がポイント
接ぎ木は、繁殖が難しい品種や数が少なく貴重な品種を増やすときに利用される繁殖方法です。他の増やし方に比べて準備に時間がかり、量産できないため、1本1本気持ちを込めて育ててあげてくださいね。
また、たとえ上手に植物同士を接げたとしても安心はできません。接合部から水や雑菌が入らないよう管理し、台木が生長しすぎないよう気を配ることで、成功率を高めることができますよ。
更新日: 2019年12月21日
初回公開日: 2015年08月24日