せっかく購入した大切なバラですが、「カミキリ虫」や「コガネムシの幼虫」等の病害虫の被害、また、管理不足やバラの寿命のために、枯れてしまうことがあります。その時、有名な名の知れたバラであれば、簡単に買いなおすことができますが、あまり人気のないバラなどは、企業の判断で生産をやめてしまうことがあります。もし枯れそうなバラで、先人の思い出がたくさん詰まった二度と手に入らない様なバラがあったとしたら…。
今回は、そんなバラ達を「挿し木」と「接ぎ木」で増やす方法と、「台木」の作り方などについて解説していきます。
バラの増やし方は「挿し木」「接ぎ木」「種まき」の3種類
バラを増やす方法には、「挿し木」と「接ぎ木」、「種まき」の3つがあります。
「挿し木」が最も簡単な増やし方となりますが、成長時間がとても長く、株を立派にするまで3~5年以上を要します。次に台木を使った「接ぎ木」は、技術的要求が求められプロやアマプロ達が行う増やし方となります。「接ぎ木」は、技術的には難しく誰でも簡単にとはいかない方法ですが、野生のバラの根の助けを借りるため、成長がとても速く、「挿し木」の3~5倍のスピードで成長するため1~2年で立派な株に仕立てることができます。プロが「挿し木方法」を用いないのにはそういった理由があるのです。
バラを挿し木で増やそう!時期は?
バラの挿し木に適した時期は、湿度の高い梅雨時期の「緑枝挿し」と冬の間に行う「休眠挿し」がありますが、冬の「休眠挿し」は温室などがないといけないため、また、成長期よりも時間がかかるため、あまりお勧めではありません。
一方、雨時期におこなう「緑枝挿し」は、生育期なので冬よりも早く生長するため、鉢植えにすぐできて、お手軽です。はじめての方は梅雨時期にチャレンジした方が成功率が高まります。
バラを挿し木で増やそう!準備するものは?
バラの枝 | その年に伸びた新しい枝を選びます。 長さは5~10cmくらいがよいです。 |
器 | 土を入れてバラの枝を挿す容器です。 枝がしっかりささるよう、広さのあるものがよいです。 |
土 | 市販されている「挿し木」用の培養土がおすすめです。 |
発根促進剤 | ルートンなど。切り口に塗ることで根を生やしやすくします。 |
よく切れるカッターかハサミ | 切り口に雑菌が入らないよう、清潔で切れ味のよい刃物で枝を切ります。 |
バラを挿し木で増やそう!方法は?
- 5枚葉を2個つけた枝を5~10cmくらいの長さに切り取る。
- 枝のトゲは付けたままで切り口を30分~1時間水につけて水揚げをする(枝の上下を間違えると芽が出てきません)。
- 切り口に発根促進剤をつける。
- 先端の葉っぱを2~3枚残し、他を切り落とす。
- 枝の切り口を斜めにカットする。
- 容器に土を入れる。
- 土の挿すところに割り箸で斜めに穴を空ける。
- バラの枝を斜めに挿し、周りの土を慣らして安定させる(枝の上下を間違えると芽が出てきません)。
- 半日陰へ移動させて、発根するまで水やりを続けて土が乾かないように管理。
- 根と新芽が生えてきたら鉢や庭の土に植え替える。
挿し木したバラに根が生えた後はどうする?
挿し木をはじめてしばらくたつと、新しい根が生え、新芽が葉の根元から出てきます。その後1ヶ月ほどしたら鉢上げ(植え替え)をしてください。
そしてほかの鉢植えと同じように管理すると、新しい土に根を張り、新芽が葉の枝元から出てきます。いきなり地植えはお勧めしません。2~3年以上かけて鉢で株が大きく育ってから地植えをしてください。
バラの接ぎ木!時期や台木の作り方は?
時期
バラの接ぎ木は、経験がある方や園芸が好きな方が、挿し木の次のステップとして取り組むことが多い増やし方です。
適期は真冬から初春。この時期は、台木となるノイバラが休眠から覚めるタイミングなので、※河川敷や郊外の野山で自生しているノイバラを見つけたときは、掘り出して自宅に仮植えしておきましょう。種を採取してノイバラを台木用に育ててもかまいません。
※ノイバラを採取する際は、その土地の地主に許可を取ってから採取してください。
バラの接ぎ木の準備!台木の作り方は?
バラの接ぎ木は、ノイバラの台木に枝を挿して数を増やします。事前に台木と接ぎ合わせるバラの枝を用意します。まずは台木の準備から。
ノイバラは、自生しているものを取りにいくか、種から育てましょう。ノイバラを用意できたら、土に植えた仮植え状態で保存しておきます。
1. 仮植えしていたノイバラを掘り起こし、根の部分をよく水で洗い流す。
2. 太めの根を残して、余分な根を切り取る。
3. 台木にする部分は小指より少し細めの枝を水平にカットする。
バラの接ぎ木の方法は?
続いて、挿し木と同じように枝の下を切り落としておきます。そして、以下の手順で枝に差し込みます。後は、鉢植えにしてある程度育て、十分育ってから大きな鉢や地植えに移行します。
1. 水平に切った台木の切り口から内側1/3ほどのところに、垂直に1.5cmほど切れ目を入れる。
2. 斜めの切り口を内向きに台木の切り口と合わせる。
3. 接ぎ合わせ部分を接ぎ木用ビニールテープで5~6回巻く。
4. 接ぎ木テープが解けないようしっかりと結ぶ。
接ぎ木したバラを鉢植えで育てる
バラの接ぎ木は、鉢に植えた後湿度の高い環境で管理することが大切です。適度にのぞけるよう、透明な袋を鉢に被せるとよいでしょう。
- 赤玉土(小粒)など肥料の入っていない培養土を用意する。
- 鉢やプランターに接ぎ口が見えないように接ぎ木の苗を植える。
- ビニール袋などで鉢を覆う。
- 温室や日当たりのよいところに移動させる。
- 伸びて葉が開きはじめる。
※このとき、木が黒ずんでシワが出ていたら失敗 - 葉が開きはじめたら、被せた袋を取り、外の環境で育てる。
- 蕾ができているなら摘み取り、成長を促す。
鉢植えで育てたバラを地植えにすることもできる
接ぎ木したバラが十分に育てば、地植えにして育てることができます。ここからは、挿し木と比べて管理の手間も少なくなり、接ぎ木のメリットが感じられます。地植えに植え替える作業は、桜が咲き始めた季節で遅霜の心配がなくなったら進めていきましょう。
- 幅と深さが30~50cm位穴をほり、腐葉土を入れる。
- 接ぎ口が見えるように接ぎ木した苗を植え、たっぷりと水やりをする。
- 植えた後は、四季の初め(春の初め、夏の初め、秋の初め)に直接触れないように有機質配合肥料を苗の周りに施す。
- 伸びてきた太い芽を育てつつ、初秋までこまめにつぼみを摘み取る。
- ある程度育ってきたら、通常のバラの苗木と同じように管理していく
種まきや芽接ぎでのバラの増やし方は?
バラの増やし方にはほかにも種から育てる実生法(みしょうほう)と、開花後の芽から育てる芽接ぎがあります。いずれも難易度が高いので、バラの栽培に慣れてきた方はぜひチャレンジしてみてください。
実生法(種まき)
種まき方法は芽吹かせるのがとてもむずかしく、他の種類のバラを受粉する可能性もあるので、親と同じ色や形のバラが育つとは限らないという特徴があります。専門家や経験者が交配によって「新しい品種」を生み出すときに行われる方法です。
芽接ぎ
芽接ぎは、開花してすぐのバラの芽を切り取って育てます。育て方は、接ぎ木と同じです。活力がある芽を利用するので、接ぎ木に比べて生長が早いといわれています。ただし、ちょうど良いタイミングで元気な芽を切り取るのは、とてもむずかしく、家庭でバラを増やすのには向きません。
バラを増やすなら挿し木が簡単
バラの挿し木や接ぎ木は、日頃の植物のお手入れとは違うので、最初はむずかしそうに見えますよね。ただ、バラの挿し木は成功率が高く、はじめての方でも簡単にチャレンジできますよ。
まずは、やってみましょう。最初の一歩が踏み出せるかがとても大切。後は、子供を育てるように愛情深く毎日お手入れをしていれば、自然とたくさんのバラに囲まれた生活が送れるようになっているかもしれませんね。
更新日: 2023年02月23日
初回公開日: 2015年05月22日