秋から冬にかけて、野山の落ち葉の中でひっそりと花を咲かせるカンアオイ。その素朴で主張しすぎない姿が愛され、江戸時代から園芸用に栽培もされています。草丈が大きくならず、生長がゆっくりなので、じっくり植物を育てて楽しみたいという人向きです。今回は、そんなカンアオイの花言葉や育て方、種類などについてご紹介します。
カンアオイ(寒葵)の花言葉とは?
『秘められた恋』
土に埋まっているかのように、葉っぱの付け根に花が咲くその姿にちなんで「秘められた恋」という花言葉が付けられました。
カンアオイ(寒葵)の花の色や開花時期は?
- 学名
- Asarum nipponicum
Heterotropa nipponica
Asarum kooyanum var. nipponicum
- 科・属名
- ウマノスズクサ科・カンアオイ属
- 英名
- Asarum
- 原産地
- 日本
- 開花期
- 10~12月
- 花の色
- 黒紫
- 別名
- カントウカンアオイ
カンアオイ(寒葵)とは?どんな花を咲かせる?
カンアオイは、秋から冬にかけて山地や森林の落ち葉の中でひっそりと花を咲かせる多年草です。ウマノスズメクサ科・カンアオイ属に分類される植物の中でも、常緑性のものの総称とすることが多いです。
草丈は10~30cmと低く、1年中ハート型をした緑色の葉っぱを茂らせています。毎年夏が終わりを迎える頃、株元に小さな花芽が付き、秋になると先端が3つに裂けた筒状の小さな花を咲かせます。この花が枯れると、新しい葉っぱが生えて古い葉っぱと入れ替わるんですよ
カンアオイ(寒葵)の種類や品種は?
ヒメカンアオイ
本州中部から近畿地方、中国地方、四国へと広く分布するカンアオイの小型種です。丸みのあるハートの葉っぱがかわいらしく、11~3月に濃い紫色をした1.5cmほどの花を咲かせます。
オトメアオイ
関東地方南部や伊豆半島で見られる品種で、箱根の乙女岬で発見されたことから名付けられました。葉っぱに雲のような斑が入り、夏頃に小さな花が開きます。2007年から、環境省のレッドリストに準絶滅危惧種として登録されています。
コシノカンアオイ
東北地方や北陸の日本海側によく見られる大型種で、花は3~4cmとインパクト大。開花期は2~5月と他の品種にくらべて少し遅いです。
パンダカンアオイ
壺状の花の縁が恋紫色、その内側が白とパンダのようなコントラストが目を引く中国原産の品種です。草丈は10~20cmと低く、見た目がかわいらしいことから人気があります。
カンアオイ(寒葵)の育て方のポイントは?
年間をとおして日陰か50%の遮光をして過ごします。特に夏の強い日差しや、直射日光に当たると葉っぱが焼けてしまいます。また、乾燥に弱いので水もちのよい土の配合にするとうまくいきますよ。
カンアオイ(寒葵)の種まき、苗植えの時期と方法は?
種まき
一般に種は市販されていないので、育てていた株から採取したものを植え付けていきます。4月下旬~6月に種をとったら、清潔な培養土にまき、うっすら土を被せて乾燥しないように管理していきます。運がよければ0.5~1年ほどで発芽しますが、そもそも種ができづらいうえ、発芽率も低いので、気長に取り組んでみてくださいね。
苗植え
2~3月か9~10月が植え付けての適期です。強い日差しが苦手なので、地植えなら落葉樹の下など少し日が入る場所を選び、鉢植えなら陶器製の1回り大きな鉢に植え付けるといいですよ。
地下茎を土にあまり深く植えすぎないよう注意してください。また、冬は霜など凍害にあうと弱ってしまうので、鉢は屋内や軒下に移動させ、地植えは株元にマルチングを施しておくと安心です。
カンアオイ(寒葵)の土作り、水やり、肥料の与え方
土作り
乾燥を苦手とするので、水もちのよい土を好みます。ただ、水はけが多少ないと根腐れを起こしてしまうので注意してください。
鉢植えは、赤玉土(小粒)6:腐葉土3:軽石1か、桐生砂や日向土4:鹿沼土4:赤玉土1:腐葉土1の割合で混ぜた土がおすすめです。地植えは、掘り起こした土にたっぷりと腐葉土を混ぜておくとよいですよ。
水やり
乾燥を苦手とするので、土の乾き具合には気を配ります。ほんのり湿っているくらい常に水分を含ませておくことがコツです。
鉢植えは、土の表面が乾きはじめたら鉢の底から流れ出るくらいたっぷりと水を与えて管理します。地植えは、特に水やりの必要はありませんが、土が極端に乾いているときは水やりをしてください。
肥料の与え方
多くは必要ありません。3~6月と9~10月の間2週間に1回、チッ素・リン酸・カリウムがそれぞれ等量の液体肥料を規定の倍率で施します。それぞれ、同時に1回ずつゆっくりと効く緩効性化成肥料を土の上に置くとよいですよ。
カンアオイ(寒葵)の剪定の時期と方法は?
花が咲いた後に種が付いてしまうと、株が消耗して弱ってしまいます。種を採取しないときは、咲き終わった花をこまめに摘みとっていきます。
カンアオイ(寒葵)の植え替えの時期と方法は?
カンアオイの生育は遅いですが、土の状態を清潔に保ち、根の発達を促すために1~2年に1回、2~3月か9~10月に1回り大きな鉢へ植え替えていきます。株が大きくなりすぎているときは、同時に株分けで数を増やすこともできます。
カンアオイ(寒葵)の増やし方!株分けや根伏せの時期と方法は?
株分け
植え替えと同時の2~3月か9~10月に株分けをしていきます。目の位置から根をたどり、長い根が3本以上付いていれば、株分けできる大きさに生長した証拠。分けやすいところを手やナイフ、ハサミを使って切り分けていきましょう。その後は、苗と同じように植え付けて育てていきます。
根伏せ
植え替えのときに、根茎がたくさんあれば、芽が付いていなくても別の株として育てることもできます。白が強く、固い元気な根茎を選び、根を付けたまま節のところをナイフやハサミで切っていきます。そして根茎を土の深さ3~4cmのところに植えます。すると半年以上先になりますが、花を咲かせます。
カンアオイ(寒葵)の栽培で注意する病気や害虫は?
ヨトウムシやナメクジなど葉っぱを食べてしまう害虫が発生します。ヨトウムシは夜の間姿を現さず、土の中に潜っています。株の周りの土を掘り起こすと見つかるので、捕殺もしくは薬剤を散布しましょう。
また、カビを原因とする白絹病の発生も心配。夏に地際で糸のようなものが張っていたら発生を疑いましょう。定期的に殺菌剤をまくことで防除できますよ。
カンアオイ(寒葵)は不思議な花を咲かせる山野草
カンアオイは、常緑性の多年草で冬も美しい緑色の葉っぱを茂らせています。ハート形の葉っぱは、栽培が盛んに行われていた江戸時代から、見ている人に安らぎを与えてきたのかもしれませんね。庭に植え付ければ、冬の寂しい雰囲気も解消してくれますよ。
更新日: 2020年10月14日
初回公開日: 2016年05月15日