春になると、幹や枝いっぱいに赤紫やピンクの花を咲かせるハナズオウ(花蘇芳)。葉が出る前に花が咲くので、シンプルな色合いと見た目が目を惹きます。古くから日本に自生していることもあり、病気の心配が少なく、耐寒性も高い育てやすい樹木ですよ。今回は、そんなハナズオウの花言葉や葉っぱの特徴、育て方、剪定の方法などをご紹介します。
ハナズオウ(花蘇芳)の花言葉とは?
『疑惑』『裏切り』『不信』『高貴』『喜び』『目覚め』『豊かな生涯』
ハナズオウの仲間であるセイヨウハナズオウは、イエス・キリストに仕える十二使徒の一人「ユダ」がキリストを裏切った後、命を絶った場所に生えていた木です。この話から、「疑惑」「裏切り」「不審」という花言葉がハナズオウにも付けられました。
このように、西洋では、怖くてネガティブなイメージの花言葉がついていますが、日本では、ハナズオウは春の訪れを象徴し、枝一面に花を咲かせることから、縁起の良い樹木とされています。「喜び」「目覚め」といった花言葉は、こうした春の訪れを感じさせることから付けられたと考えられています。
ハナズオウ(花蘇芳)とはどんな樹木?花や葉の特徴は?
ハナズオウは、中国北部から朝鮮半島にかけてを原産のマメ科・ハナズオウ属の落葉高木です。自生地では樹高10m以上に生長しますが、日本では樹高2~3mほどと低木で枝をほうき状に伸ばして育ちます。
早春の頃、葉っぱが付くよりも前に蝶のような形をした小さな花を枝や幹いっぱい密集させます。この花が枯れた後に、幅10cmほどのハート型の葉っぱを茂らせます。これと並行して、受粉したハアからサヤインゲンを短くしたようなサヤが作られます。中には5個くらいハナズオウの種が入っていますよ。
ハナズオウ(花蘇芳)の学名・原産国・英語
- 学名
- Cercis chinensis
- 科・属名
- マメ科・ハナズオウ属
※ジャケツイバラ属に分類されることもある
- 英名
- Cercis
- 原産地
- 中国~朝鮮半島
- 開花期
- 4月
- 花の色
- 赤紫、ピンク、白
- 別名
- スオウバナ
ハナズオウ(花蘇芳)の種類や品種は?
ハナズオウと同じハナズオウ属の中にはほかにも品種があります。以下に、代表的なものをいくつかご紹介します。
セイヨウハナズオウ
南ヨーロッパから西南アジアを原産とするハナズオウ属の高木です。花言葉の由来にもなっているユダのエピソードから、別名「ユダの木」とも呼ばれます
アメリカハナズオウ
アメリカハナズオウは、北アメリカ中部~東部に分布する同属の樹木です。ハナズオウに比べて花数は少ないですが、より寒さに強い性質をしています。
シロバナハナズオウ
ピンクや赤紫色の華やかなハナズオウとは対照的に、白く清楚な花を咲かせるハナズオウの品種です。性質などは通常のハナズオウと同じで、寒さにも暑さにも強く育てやすくなっています。
ハナズオウ(花蘇芳)の育て方のポイントは?
日当たりのよい場所で育てる
ハナズオウは日当たりのよい場所を好みます。日陰では花が咲かなくなってしまうので注意してください。ただ、葉っぱに斑の入った園芸用の品種は強い日差しに当たると葉焼けを起こすので、直射日光や西日の当たらない場所がベストです。
肥料は控えめに
ハナズオウも属するマメ科の植物は、根に「根粒菌」が住んでいます。根粒菌は空気中の窒素を取り込み、ハナズオウの栄養にしてくます。窒素は、植物の茎や葉っぱの生長を促す栄養素で、多すぎると逆に花が咲かなくなってしまうので、肥料は控えめに。
元気がないときだけ、1~2月か8月に化成肥料や油かすと骨粉を等量混ぜあわせた有機肥料を与えるくらいで十分です。
ハナズオウ(花蘇芳)の育て方の手順は?
- 葉っぱが枯れ落ちている11~12月か2~3月に苗植えをする
- 4月に花が咲く
- 花が咲き終わったら剪定をして樹形を整える
- 強剪定をするなら12~3月
- 根が鉢の中いっぱいに広がったら11~12月か2~3月に植え替える
ハナズオウ(花蘇芳)の苗植えの時期と方法は?
ハナズオウは、花の咲いた華やかな姿を楽しむために地植えで育てるのが一般的です。苗植えの適期は11~12月か2~3月の落葉期で、日当たりがよい場所と水はけのよい土を準備すれば元気に育ちますよ。植える場所の土が粘土質であれば、たっぷりと腐葉土や堆肥、川砂などを混ぜて耕しておくと安心です。
- 苗がすっぽりと入るくらいの穴を掘る
- 根に付いた土をほぐした苗を穴の中心に置く
- 掘り起こした土を埋め戻す
- 棒などでつついて、根と土をなじませる
- たっぷりと水やりをする
鉢植えにできる?
最終的には2~3mに生長しますが、木がまだ幼いうちはハナズオウの鉢植えも楽しめます。苗よりも一回りから二回り大きな鉢と、赤玉土(中粒)2:完熟腐葉土または樹皮堆肥1の割合で混ぜたものか、市販の草花用培養土を使ってください。植え付ける手順は地植えと同じですが、土を鉢に入れる前に鉢底石を敷いて水はけをよくしておきましょう。
ハナズオウ(花蘇芳)の水やり、肥料の与え方は?
水やりは土の表面が乾いてから
ハナズオウは鉢植え、地植えにかかわらず、苗植えの直後から2~4週の間は土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをします。その後、鉢植えは同じペースで水やりをしますが、地植えは降雨のみで育ててしまってかまいません。
肥料
根に住む根粒菌のおかげでたくさんの肥料を必要としません。元気がないときだけ、1~2月か8月に化成肥料や油かすと骨粉を等量混ぜあわせた有機肥料を与えてください。
ハナズオウ(花蘇芳)の剪定の時期と方法は?
ハナズオウは、前年以上前に伸びた枝へ翌年の花の芽8月に付きます。それ以降に枝を切ってしまうと花が咲かなくなってしまうので、花が咲き終わった5~7月に剪定をして樹形を整えていきます。遅くとも翌年の3月までには剪定を終えておくと安心です。
株元から伸びている「ひこばえ」という新たな幹は、地際から切り戻してしまいます。幹は丈夫なもの2~3本が適当です。また、伸びすぎている枝や絡みあった枝、内向きの枝は切りそろえていきます。これによって風通しがよくなって、病気や害虫を予防できます。
ハナズオウの育て方で注意する病気や害虫は?
ハナズオウは、病気にはほとんどかかりませんが、イラガ類やアメリカシロヒトリといった害虫の被害には注意が必要です。イラガ類は、葉っぱを食べてしまううえ、幼虫の体の毛に触れてしまうと腫れや痛みを引き起こします。
アメリカシロヒトリは、年2~3回温かい時期に発生し、葉っぱを食べます。いずれも、見つけたらすぐに効果のある農薬を使って退治していきましょう。剪定をすることで、害虫を見つけやすくするだけでなく、被害にあいづらくできますよ。
ハナズオウ(花蘇芳)の植え替えの時期と方法は?
ハナズオウの鉢植えをしばらく育て続けていると、根が鉢いっぱいに回って生育が悪くなってしまいます。水やりをしても土に染みこんでいかない、鉢の底から根がはみ出ているなど根詰まりの症状が見られたときは、11~12月か2~3月に一回り大きな鉢に植え替えます。
植え替えの手順は、苗植えの手順と同じです。背丈が高くなって収拾がつかなくなったときは、地植えにするのも一つの方法です。
ハナズオウの増やし方!種まきの時期と方法は?
ハナズオウは、種まきで数を増やしていくことができます。種まきの適期は、3~5月です。種はそのまま植えても発芽率が低いので、下処理として80度くらいのぬるま湯に一晩浸けておくか、皮にヤスリやナイフで傷を付けておきます。
- 10月頃に付いた豆のサヤを収穫する
- 2~3日陰干しで乾燥させる
- サヤから種を取り出す
- 茶封筒など通気性のよい袋に入れて、冷暗所で保管する
- 翌年の3~5月に種の下処理をする
- 種まき用培養土を入れた育苗ポットに種をまく
- 発芽するまで土が乾燥しないよう管理する
- 発芽したら、土が乾いたら水やりをするように切り替える
- 背丈が15~20cmに生長したら、苗植えと同じ手順で鉢や地面に植えていく
ハナズオウ(花蘇芳)は育てやすい落葉樹
ハナズオウは、いつ日本に入ってきたかは定かではありませんが、かなり古くから庭木として親しまれてきた落葉樹です。寒さにも暑さにも強く、病気の心配も少ないことから、はじめて庭に木を植えたいときにおすすめです。
また、樹高が2~3mほどにしかならないことも、気軽に取り入れやすいポイント。春に庭を華やかに彩りたいときは、ハナズオウの植栽を検討してみるのもよいかもしれませんね。
更新日: 2023年04月04日
初回公開日: 2016年08月07日