カブは「日本書紀」や「万葉集」にも登場するほど古くから栽培されている野菜です。それぞれの地域に根付いてきた伝統的な地方種が多く、色や大きさはさまざまです。プランターでも栽培でき、種まきから収穫までの期間が短いことも家庭菜園で人気の理由。今回は、そんなカブの栽培について、育て方のポイントや種まきの方法などをご紹介します。
カブ(蕪)の花言葉は?
『慈愛』『晴れ晴れと』
カブの花言葉の正確な由来はわかっていません。ただ、カブは痩せた土地でも育てられることから、古代中国などでは、戦などで貧困に苦しむ人々や兵士の食料として愛されていたといわれています。そういった人々の生活に欠かせない野菜だったことにちなんで、「慈愛」という花言葉がつけられたのかもしれませんね。
カブ(蕪)の学名・原産国・英語
- 学名
- Brassica rapa L. var. rapa
Brassica rapa L. var. glabra
- 科・属名
- アブラナ科・アブラナ属
- 英名
- Turnip
- 原産地
- アフガニスタン、地中海沿岸
- 収穫期
- 5〜6月/10〜12月
- 開花期
- 3〜4月
- 花色
- 黄
- 別名
- カブラ
カブナ
カブラナ
スズナ(鈴菜/菘)
カブ(蕪)とは?どんな野菜?
カブとは、アブラナ科・アブラナ属のアブラナ属の1年草です。発祥はアフガニスタンとアジアの中東の2箇所といわれ、今では世界中で栽培される野菜です。大きな球形の根を収穫して食べるのが一般的ですが、最近では食物繊維やカロテン、ビタミンCが豊富なことから茎や葉っぱも食べられるようになりました。春に種をまけば、秋冬にかけて実が収穫でき、秋に種をまけば春から初夏にかけて収穫の時期を迎えます。
カブ(蕪)の種類や品種は?
カブは100種近くの品種があり、主に肥大化する根の大きさと形、色によって分類されます。また、私たちが普段食べている根の部分は、本来「胚軸(はいじく)」といって、主に茎に変化していく部分なんです。根は胚軸の下についているひげのような部分を指します。種類によっては、この胚軸が大根のように長くなったり、全く大きくならなかったりするんですよ。今回は、そのカブの種類の中でも代表的な4種についてご紹介します。
小かぶ
小かぶは、胚軸が5cmくらいの小型の種類の総称です。白い皮はやわらかく、実が引き締まっているのが特徴です。
中かぶ、大かぶ
胚軸が5〜15cmくらいを中かぶ、15cm以上を大かぶと呼びます。小かぶと同じように皮が白く、引き締まった実が特徴で、煮物や漬物など様々な料理に利用されます。ただ、皮が分厚いので調理のときは、厚めに皮をむくようにしましょう。
赤かぶ(赤蕪)
名前の通り、胚軸が赤〜赤紫色のカブの総称です。はっきりとした定義がないため、皮だけ赤いもの、中身も赤いもの、茎も赤いものなどの全体や一部を指すことがあります。代表的な品種には、滋賀県の万木(ゆるぎ)や山形県の温海(あつみ)、福島県の舘岩赤かぶなどがあります。
日野菜(ひのな/あかな)
漬物で有名な「日野菜漬け」の原料になっている滋賀県が原産の種類です。胚軸が細長く生長し、人参のような形をしています。
カブ(蕪)の育て方のポイントは?
カブは連作障害に気をつけて、涼しい気候の中で育てることが大切です。アブラナ科の野菜は連作障害を起こしやすいので、アブラナ科の植物を育てたことのない場所や清潔な土に植え付けていきましょう。また、生育適温は15~20度となっていますが、発芽には20~25度の温度を必要とするので、種をまいたら土の表面を寒冷紗で覆ったり、マルチングをしたりすると安心です。
カブ(蕪)の種まきの時期と方法は?
3月中旬~4月頃か、9~10月上旬頃が種まきの適期です。カブは直根性で移植を嫌うので、プランターや畑に種を直接まいて育てます。発芽後は3回間引くタイミングがあり、徐々に苗の間隔を広げていきます。まず、本葉1~2枚で3cm間隔、次に本葉3~4枚で6cm間隔、最後に本葉5~6枚で12cm間隔になるように間引いてください。間引いた苗は、サラダやお味噌汁の具材として楽しめますよ。
鉢・プランター植え
60cmプランターに5~6株、10号鉢に2~3株が最終的な数の目安です。容器の底が見えなくなるくらいの鉢底石を敷き、縁から下2~3cmほどまで土を入れます。そこに深さ1cmのスジを付け、種が重ならないようスジまきにしていきます。間隔が10~15cmほどとれるようなら、複数本スジを作ってもかまいません。たっぷりと水やりをして、発芽するまでは土が乾かないよう水を与えて管理していきます。
地植え
幅60~80cm、高さ10~15cmの畝を立て、15~30cm間隔に深さ1cmほどのスジを作って種をスジまきにしていきます。木材や支柱を使ってまきスジを作るとよいですよ。そして、指先で溝を埋めるように土を被せたら、たっぷりと水やりをします。
カブ(蕪)の土作り、水やり、肥料の与え方
土作り
鉢・プランター植えは、市販の野菜用培養土か、赤玉土6:砂2:バーミキュライト3の割合で混ぜた土にスプーン大さじ1杯(約10g)の苦土石灰を混ぜたものを使います。
地植えは、植え付けの2週間前までに1㎡当たりコップ1杯くらい(100~150g)の苦土石灰、1週間前までに1㎡当たり2kgの堆肥を混ぜ込んでよく耕して寝かせておきましょう。植え付けの際には、畝を立てます。
水やり
発芽するまでは土を乾燥させないように水やりをしていきます。そして、発芽後したら、地植えの場合特に水やりの必要はありません。鉢・プランター植えは、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。冬は土が乾きにくいので、やや乾かし気味に管理すると根腐れを予防できますよ。
肥料
植え付けタイミングで、土に野菜用の肥料を混ぜ込んで置きます。そして、本葉が3~4枚の頃と本葉5~6枚の頃の2回、化成肥料を株の近くの土に混ぜ込み、軽く土寄せをすると生育がよくなります。本葉が5~6枚目のときの肥料は、1週間毎に2~3回薄めた液体肥料を施してもかまいません。
カブ(蕪)の収穫の時期と方法は?
カブの収穫時期は、5〜6月と10〜12月頃です。ただし、小かぶなどは種まきから40〜50日ほどで収穫できるので、胚軸の直径で判断します。大カブは直径13~15cm、中カブは直径10~12cm、小カブは直径5~6cmくらいになったら、葉っぱの付け根をつかんで土から引き抜いてください。
時期が遅れるとつるが割れやすくなるので、収穫間近になったら毎日観察することがポイントです。種まきから1ヶ月くらいたったら、根の大きさを日々観察するようにするとよいですよ。収穫したカブは、葉っぱと根を切り離し、別々に冷蔵庫で保管すると長持ちします。
カブ(蕪)の栽培で注意する病気や害虫は?
過去にアブラナ科の植物を育てた場所で栽培すると、連作障害に寄って根こぶ病にかかる可能性があります。ダイコンやブロッコリー、キャベツなどを栽培した畑へ植え付けるのは避けましょう。
また、春植えはキスジノミハムシなど害虫の被害にあいやすくなります。種まきのときに土に混ぜ込むタイプの浸透移行性殺虫剤を散布すると予防につながりますが、はじめての栽培のときは秋に種をまいた方が被害を少なくできます。
カブ(蕪)の栽培には病気への対策が不可欠
カブの栽培では、ウイルス、細菌、糸状菌などへの対策が重要です。抵抗性のある品種を栽培することが一番の予防ですから、種類や品種選びは慎重にしてください。家庭菜園では、育てやすく病害に強い「スワン」「耐病ひかり」などが人気。種を購入するときは、種袋に抵抗性を示す「CR」の記載があるものを選ぶと安心して栽培に取り組めますよ。
更新日: 2016年06月01日
初回公開日: 2016年06月01日