初めてユリの花を贈ろうと思ったとき、種類の多さに戸惑ったことがある方も多いのではないでしょうか。そのくらい種類が豊富で、日々新しい色や花姿の品種が誕生しています。今回は、そんなユリの種類や品種、カサブランカとの違いについてご紹介します。
ユリの種類は?下位分類の4つの亜属とは?
ユリは世界に100種以上の原種があるとされ、大きく4つに分けられます。
「ヤマユリ亜属」「テッポウユリ亜属」「カノコユリ亜属」「スカシユリ亜属」という4つの亜属は、1925年にWilson,E.H氏が発表した分類です。
今回は、4つの分類とそれぞれの代表原種についてご紹介します。
1. ヤマユリ(山ユリ)
ヤマユリは、ヤマユリ亜属の交配親となっている原種です。本州が原産地の日本固有種です。
直径25cmほどの大輪の花を咲かせ、白い花の中心には黄色の筋が入り、全体に赤褐色の斑が入っているのが特徴となっています。また、球根は「ユリ根」として食べられています。
ヤマユリ亜属は、漏斗状(ラッパ型)の花を横向き咲かせる特徴の系統で、花が大きく、甘い香りを発するものが多くあります。サクユリなどもこの系統に属します。
2. テッポウユリ(鉄砲ユリ)
テッポウユリは、テッポウユリ亜属の原種です。屋久島や沖縄などの南西諸島や台湾に分布しています。
先端の開いた筒状の白い花を横向きに咲かせる姿がラッパ銃に見えることから、この名前が付けられました。近い距離にたくさんの花を咲かせる性質があります。
テッポウユリ亜属は、このテッポウユリの花姿を受け継いでいる系統です。主にアジアに分布し、ササユリといった日本を代表する品種や、マドンナ・リリーがこの系統に属します。
3. ササユリ(笹ユリ)
ササユリは、テッポウユリ亜属の交配親となる原種の1つです。学名に「japonicum(日本産)」と付く日本を代表するユリでもあります。
花色は淡いピンクで、花粉が赤褐色をしているのが特徴です。葉や茎が笹に似ているオトメユリ(ヒメサユリ)の花粉は黄色をしています。
4. リーガル・リリー
リーガル・リリーはテッポウユリ亜属に分類される原種です。野生種の中ではウイルス病に比較的強いため園芸初心者に向いています。
花は短い筒状でラッパのように開き、花の内側は白く、基部は黄色、外側は桃紫色をしています。
5. スカシユリ(透ユリ)
スカシユリは、スカシユリ亜属の原種です。数枚の花びらは重ならず、付け根の部分が少し開いていて、オレンジや黄など、鮮やかな花色をしています。
スカシユリ亜属は、カップ(盃)状の花を上向きに咲かせるのが特徴の系統で、世界中に広く分布しています。スカシユリやエゾスカシユリ、ヒメユリが代表的な原種です。
6. オニユリ(鬼ユリ)
オニユリは、カノコユリ亜属の原種です。食用にするために、中国から日本へと伝わってきたといわれています。花びらは、オレンジ色で、黒い斑点が入っています。
カノコユリ亜属は、下向きに釣り鐘状の花を咲かせる系統です。カノコユリ、イトハユリなどはこの系統に分類されます。花びらが外側に丸まるのが特徴で、オニユリやクルマユリなどの原種が有名です。
7. タカサゴユリ(高砂百合)
タカサゴユリはテッポウユリ亜属の原種で台湾が原産です。大きなラッパ状の花を咲かせますが、テッポウユリそっくりの見た目で、違いがわかりづらいかもしれません。8〜9月に、道端にもよく咲いています。
ユリ(リリー)の園芸品種は?
ユリは主に4つの亜属に分けられますが、固有の園芸品種は100以上あるといわれています。
上記でご紹介した原種たちを元に品種改良されて花色や花姿が組み合わさり、さまざまなバリエーションを楽しめるようになりました。
これらの園芸品種は原種をもとに細かく分類されます。今回は、1964年に英国王立園芸協会によって定められた9つの系統に分けて、ご紹介します。
1. アジアティック・ハイブリッド(エレガントリリー/スカシユリ:Asiatic Hybrid)
アジアティック・ハイブリッドは、オニユリやヒメユリなど、アジア原産のユリを中心に交配された品種群です。
さまざまな花色や花姿と、丈夫で栽培しやすい性質から、庭植えに適した品種とされています。
一般的にスカシユリやエレガントリリーと呼ばれることが多いのですが、原種のスカシユリの特徴を持ち合わせているものは多くありません。モナやサンシローといった品種があります。
2. マルタゴン・ハイブリッド(martagon Hybrid)
マルタゴン・ハイブリッドは、ヨーロッパに自生するマルタゴン・リリーという品種とタケシマユリを交配して作られた品種群です。
日本にはあまり出回っていない馴染みが薄いかもしれません。マルタゴンリリー、クルマユリなどとも呼ばれます。
3. キャンディダム・ハイブリッド(マドンナリリー・ハイブリッド:Caladium × hortulanum)
キャンディダム・ハイブリッドは、欧州原産のマドンナ・リリーと欧州原産の他の品種を掛けあわせて生み出された品種群です。
日本ではほぼ栽培されていないため、マルタゴンリリー同様あまり馴染みがないかもしれませんね。
4. アメリカン・ハイブリッド(american Hybrid)
アメリカン・ハイブリッドは、北アメリカ原産の品種同士を交配して作られた品種群です。花びらが外側に反り返っているのが特徴で、大きな花を下向きに咲かせます。こちらの品種も日本にはあまり出回っていません。
5. ロンギフローラム・ハイブリッド(L:longiflorum Hybrid)
ロンギフローラム・ハイブリッドは、テッポウユリやタカサゴユリを元に作られた品種群で、シンテッポウユリなどがよく知られています。品種群の名前が長いため、「L」という略称で呼ばれることがあります。
6. トランペット・オーレリアン・ハイブリッド(T:Aurelian Trumpet Hybrd)
トランペット・オーレリアン・ハイブリッドは、リーガル・リリーやキガノコユリなど中国・アジア原産の種を親とする品種群で、トラペットのような筒型の花を横向きに咲かせます。
アフリカンリリーやゴールデンスプレンダーはこの品種群に属します。こちらも名前が長いため、学名表記の際は「T」と省略されます。
7. オリエンタル・ハイブリッド(O:Oriental Hybrid)
オリエンタル・ハイブリッドは、ヤマユリやカノコユリなど日本固有種を元に作られた品種群です。香りの強い大輪を咲かせるのが特徴で、「ユリの女王」と呼ばれるカサブランカは、この仲間になります。
8. その他(LO、OT)
8つ目の分類は、5~7番の分類の品種を交配した品種群になります。例えば、ロンギフローラム・ハイブリッド(L)と、ロンギフローラム・ハイブリッド(O)を混ぜあわせた品種は、略称を合わせて「LOハイブリッド」と呼ばれます。このようにして、「OTハイブリッド」も作り出されています。
9. 原種およびその他の変種
上記の品種改良に属さない、原種や変種は第9の分類として分けられています。
ユリとカサブランカに違いはあるの?
カサブランカとはユリ科ユリ属に分類される園芸品種の1つです。そのため、カサブランカはユリの仲間ということになります。
ユリ属の中でのカサブランカの特徴を覚えておけば、カサブランカを見分けることができますよ。以下にカサブランカの特徴をまとめたので参考にしてみてください。
花びら | 白色 大きい(大輪) 生長とともに大きく外側に反る |
香り | 強い |
内側 | 小さな突起がある |
別名 | オリエンタル・ハイブリッドリリーと呼ばれる |
複雑なユリ(リリー)の種類を知ってガーデニングを楽しもう
今回ご紹介したように、ユリにはたくさんの種類があります。原種をそのまま楽しんだり、園芸品種を育ててみたり、ユリだけでも様々な楽しみ方がりますよ。
自分好みのユリを見つけて、ガーデニングに取り入れてみてくださいね。
更新日: 2021年09月01日
初回公開日: 2016年01月29日