「シャクヤクと比べると、育てるのがむずかしい」といわれる牡丹ですが、庭植えにすればそれほど管理が大変なわけではありません。大きく豪華な牡丹の花は、きっと庭の主役になってくれますよ。また、鉢植えで育てることもできます。今回は、牡丹の種まきや苗植えの栽培方法をはじめ、水やり、肥料、植え替え、接ぎ木の方法や時期をご紹介します。
牡丹(ボタン)の育て方!牡丹は苗から育てよう
牡丹は、種と苗から育てることができます。ただ、種から育てると花が咲くまで5〜10年ほどの時間がかかり、かつ栽培がむずかしいため、専門家以外は苗から育てるのが一般的です。
もし、時間をかけてでもオリジナルの品種を作りたいときは、接ぎ木で生長を早めて3〜5年ほどで開花させることを目指すのがよいかもしれません。
ただし、新種の花が咲くのは1,000分の1以下の確率といわれています。
牡丹(ボタン)の苗の選び方は?接ぎ木苗の育て方は?
元気な苗の選び方
花芽があって幹が太く、枝がバランスよく分かれている苗がおすすめです。葉っぱがついているときは、苗を上から見て、大きな葉がたくさんついているかを確認してみましう。
葉の大きさや数は、地下の根の太さや数と比例するので、地上が元気な苗ほど大きく生長します。
接ぎ木苗を育てるポイント
10月頃に苗を購入するときは、シャクヤクを接ぎ木にした「接木苗」が多く出回るようになります。接ぎ木より下の茎や根はまだ牡丹ではないので、シャクヤクの芽が出てくることがありますが、全て取り除くようにしましょう。
接木苗の生長した根(シャクヤクの根)を2〜3年放置すると、牡丹が負けてシャクヤクの苗に戻ってしまうので注意してください。
シャクヤクと牡丹の両方の芽が地中から出てくることがあるので、先端がほうき状のボタンの芽を残し、先端が尖っているシャクヤクの芽は摘み取りましょう。
ただし、時間が経つとシャクヤクもすぐにほうき状になって見分けられなくなるので、接ぎ木苗を植えてからしばらくは、こまめに観察することが大切です。
牡丹(ボタン)の苗植え!鉢植えと地植えの時期と方法は?
一般的なガーデニングや園芸では使わないため、牡丹の種はほぼ流通していません。市販で苗を購入し、栽培していきましょう。種がほしいときは、開花を終えた後につけるさやから種を入手できます。
鉢植え
- 植え替えを嫌うので10〜12号鉢、最低でも8号鉢を用意する
- 9~10月頃、苗を購入する
- 鉢底に鉢底石、土の順に1/3ほど入れる
- 苗(接ぎ木苗なら接ぎ木部分)が地中5cmの深さになるよう植える
- 春と秋は、屋外の日が十分に当たる場所で管理し、夏は明るい日陰、冬は風の当たらない温かい場所がおすすめです。
地植え
- 西日を避け、日当たりと風通しのよい場所で深さ30~50cmほどの穴を掘る
- 掘り上げた土に腐葉土や堆肥などを3割ほど混ぜて、1〜2週間寝かせる
- 穴の底には、発酵済みの油かすや骨粉、完熟たい肥、ボカシ肥などを一握りほど入れる
※土の中には、悪玉菌が増殖するので、不用意に未発酵の有機物を入れてはいけません。 - 苗を穴に植える
- 接ぎ木苗であれば、接ぎ木部分が全部うまり、さらに5~10cmほど土を盛っていく
- 株を中心に直径50cmほどの土の表面を腐葉土や落ち葉などの有機物コップ1杯(200g)ほどで覆う
- さらに肥料のうえに土を被せる
牡丹(ボタン)の育て方!土作り、肥料、水やりの方法は?
土作り
牡丹は、水はけと水もちのよい土を好むので、赤玉土(小粒)6:腐葉土3:もみ殻くん炭1の割合で混ぜた土がおすすめです。
さらに川砂を1割ほど混ぜ込むと、水はけが一層よくなりますよ。粘土質の土地では、その層を壊さないかぎり牡丹は育ちません。
地植えのときは、まず土の質を確認します。細い支柱をさして、支柱が通りにくい部分がないかチェックしてみましょう。
以前に重機などを使用したことがあると、粘土質(硬土)になっている可能性があります。
水やり
地植えは、水やりの必要はありません。ただ、夏の時期にあまりにも乾燥した期間が続いたときは、日没後から朝方にかけて、少量の水をゆっくり地中深くまでしみわたるように与えてください。
普段の水やりでは表面しか濡れず、蒸れたりして病気の発生原因となって、逆効果になってしまいます。鉢植えは、4~9月の間、土の表面が乾いたら水をたっぷりあげてください。
秋から冬にかけては、休眠期に向かってあまり水を必要としないので、極端に乾燥しない程度に水やりを控えましょう。
土の上に腐葉土や落ち葉、刈り草等の有機物を被せておくと、乾燥がゆっくりになるのでおすすめです。
肥料
植え付けるときに、土に緩効性肥料をコップ1〜1.5杯分ほど混ぜこんでおきます。窒素5:リン酸8:カリウム5の割合が理想です。
あとは、年に4回ほど株元へ緩行性肥料を施してください。生育の悪いときや悪天候が続いているときは、薄めた液肥でミネラルやアミノ酸を与えるとよいですよ。
肥料がないと元気に育たたなくなりますが、植え付けのときからたくさん肥料をあたえると、栄養のある環境に慣れて、その後の生長が悪くなります。
最初は、できるだけ成分の少ないものを施すのがポイントです。
- 1回目は3月初旬、窒素8:リン酸8:カリウム8
- 2回目は5月下旬、窒素3:リン酸6:カリウム5
- 3回目は9月中旬、窒素8:リン酸16:カリウム10
- 4回目は10月下旬、窒素5:リン酸10:カリウム8
牡丹(ボタン)の植え替えの時期と方法は?
地植え
牡丹は、植え付けを嫌うので、地植えに植え替えは必要ありません。ただ、植え付けてすぐに株が弱ってしまったときは、その場所が適していない証拠なので、10月頃に植え替えてください。
鉢植え
3~5年を目安に生育が悪くなったら10月頃に植え替えをします。
根の下の方についた土を落とし、黒か黒褐色に変色している根を1/3〜2/3ほど切り取ってから新しい土へ植え替えます。植え替えの手順は植え付けと同じです。
牡丹(ボタン)の剪定方法と時期は?
牡丹は、花が咲き終わった後そのまま放っておくと種ができてしまい、株が弱ってしまいます。そのため、花が終わったら思い切って花茎ごと切り落とす「花がら摘み」を行いましょう。
また、場合によっては芽かきなど季節ごとに剪定の手入れが必要になります。以下に月別の剪定方法をご紹介します。
5~6月:花がら摘み
株が弱るのを防ぐため、花の後は、種をつけさせないように花を花茎からおもいっきって切り取りましょう。
植え付け1年目は、特に花を咲かせると株が消耗するので、早めに花を切り取るのがポイントです。花と下の葉の間を剪定するのがポイントです。
また、台木のシャクヤクからひこばえ(新しい芽)が生えてくることがあるので、見つけたら、付け根から取り除いてください。
6月下旬
6月下旬頃からわき芽がつきはじめるので、取り除きます。放っておくと牡丹の背丈がどんどん高くなり、手入れが大変になります。
根元の3芽ほど残し、上の方にある芽は全てかき取る「芽かき」をするとよいですよ。特に、枝に支柱をしたままにしておくと背丈が高くなりやすくなるので注意してください。
9~10月
葉が黄色くなってくる頃に、細かい枝の剪定をします。翌年に花をつける新しい芽や葉の芽は残して、発芽しない枝だけ切り取るのがコツ。
全ての葉っぱと、変色した葉を下向きに生やす枝などを切り取ります。樹形を乱していてもできるだけ自然に生えた新しい枝は、残しておくのがポイントです。
翌年、発芽しなかったときに剪定するくらいの余裕をもちましょう。また、葉の元となる「葉芽」は全て切り落としてください。
花芽は、栄養を作りだす工場なので、1つでも多く残しておくのことで苗が長生きします。葉芽は三角形で小さく、花芽は丸くて大きい形をしています。
牡丹(ボタン)の増やし方!牡丹の接ぎ木は芍薬(シャクヤク)の木がおすすめ?
最近では、牡丹よりも生長の早いシャクヤクの根を利用して牡丹を育てるのがおすすめです。
牡丹の根で接木を行うと根がしっかり育つまで10年以上かかってしまいます。早く丈夫に育てるにはシャクヤクを用いましょう。
牡丹(ボタン)の増やし方!接ぎ木の時期と方法は?
- 8~9月頃、カミソリなどでシャクヤクのゴボウ根を切り取る
- 2〜3芽ついた新しく伸びた牡丹の枝を準備する
- シャクヤクの台木に挿し込み、ビニールテープや麻ひもで縛る
- 最後にテープなどで固定し、苗植えと同じ方法と植え付け、栽培する
牡丹(ボタン)の栽培で注意する病気や害虫は?
カニガラ入りの堆肥を土に混ぜておくと、虫の発生が少なくなるのでおすすめ。カニガラは、放線菌という微生物のえさになり、この放線菌が害虫の卵を食べてくれるため、害虫が増殖しなくなるのです。
農薬も使わなくて済むので、無農薬栽培に興味のある人はぜひチャレンジしてみてください。
アブラムシ
5~9月によく発生する害虫です。植物の栄養を奪ってしまい、生育を悪くしてしまいます。見つけたら殺虫剤を散布し、駆除していきましょう。
カイガラムシ
牡丹の幹や枝の分かれ目につく害虫です。冬の間に殺虫剤(石灰硫黄合剤)を散布して予防し、見つけた場合は歯ブラシなどで1匹ずつ駆除しましょう。
灰色カビ病
灰色カビ病は、気温があがり湿度が上昇する春に発生しやすくなります。病気になると、つぼみが開かなくなってしまうので、ケイ酸の水溶液(ケイ酸カリ黒糖液など)を葉っぱにふきかけて予防しましょう。
病気にかかると治せないので、すぐにその部分を切り取りましょう。
また、風通しが悪いとあっという間に被害が拡大するので、特に鉢植えは、風通しのよい場所に移動してベンレート水和剤などを散布しておきましょう。
牡丹(ボタン)は育てる手間がかかる分、美しい花を咲かせる
日当たりや水はけのよい土を好む牡丹。ここまでの育て方を見てみると、接ぎ木に使われているシャクヤクの処理や開花前の定期的な剪定など、手間がかかる花木という印象をうけますよね。
ただ、耐暑性や耐寒性が高く、しっかり育てられれば、毎年艶やかな花を楽しむことができますよ。見事な花を咲かせるために、ポイントをおさえて育ててみてくださいね。
更新日: 2022年06月15日
初回公開日: 2015年06月17日