秋のお彼岸の頃、田んぼのあぜ道や土手を真っ赤に染める彼岸花(ヒガンバナ)。曼珠沙華(まんじゅしゃげ)やリコリスとも呼ばれ、日本の秋を代表する花のひとつです。一方で「花言葉が怖い」「家に持ち帰ると火事になる」など、不吉なイメージをもつ方も多いのではないでしょうか?
この記事では、彼岸花の花言葉を色別に紹介し、怖い・不吉といわれる理由や名前の由来、開花時期、「花が咲く時期にないもの」の答えまで、水戸市植物公園の西川園長のお話を交えて解説します。
● この記事でわかること
- 花言葉:「情熱」「独立」「再会」「また会う日を楽しみに」など。色によって意味が異なります。
- 怖いといわれる理由:「あきらめ」「悲しい思い出」という花言葉や、毒・迷信・「死人花」などの別名によるもので、花言葉そのものに「死」の意味はありません。
- 開花時期:9月中旬~下旬。秋分の日(9月22~23日ごろ)前後が見頃です。
- 花が咲く時期にないもの:答えは「葉」。花が終わってから葉が伸びるため、花と葉を同時に見ることはありません。
- 正式名称:和名は「ヒガンバナ」、学名は「Lycoris radiata(リコリス・ラジアータ)」です。
彼岸花(曼珠沙華)の花言葉|色別の意味一覧

彼岸花全体の花言葉は「情熱」「独立」「再会」「あきらめ」「転生」「悲しい思い出」「思うはあなた一人」「また会う日を楽しみに」です。燃えるような赤い花色から「情熱」、毎年お彼岸の頃に必ず咲くことから「再会」「また会う日を楽しみに」といった花言葉が生まれたといわれています。
色別の花言葉
| 花の色 | 花言葉 |
|---|---|
| 赤 | 情熱/独立/再会/悲しい思い出 |
| 白 | 思うはあなた一人/また会う日を楽しみに |
| 黄 | 追想/深い思いやりの心 |
| ピンク | 快い楽しさ |
| オレンジ | 妖艶 |
赤い彼岸花には情熱的な花言葉が、白い彼岸花には一途な想いや再会を願う花言葉がつけられています。色によって印象が大きく変わるので、見かけた花の色で意味を調べてみるのも楽しいですよ。
彼岸花の花言葉は怖い?不吉・死のイメージがある理由
彼岸花の花言葉は前向きな意味が中心ですが、「怖い」「不吉」といわれることが少なくありません。その理由は、主に次の3つです。
「あきらめ」「悲しい思い出」など寂しさを連想させる花言葉がある
花言葉のなかでも「あきらめ」「悲しい思い出」は、さみしさや別れを連想させます。こうした花言葉が、お墓の近くに咲く姿やお彼岸(先祖供養の時期)のイメージと重なり、「彼岸花の花言葉は怖い」といわれるようになりました。
彼岸花に「死」を意味する花言葉はある?
彼岸花に「死」そのものを意味する花言葉はありません。死のイメージがあるのは、「死人花(しびとばな)」「地獄花(じごくばな)」「幽霊花(ゆうれいばな)」といった別名や、墓地に植えられてきた歴史、全草に毒があることなどが理由です。
「家に持ち帰ると火事になる」などの迷信がある
彼岸花には、「家に持ち帰ると火事になる」「摘むと死人が出る」「摘むと手が腐る」といったいくつかの恐ろしい迷信があります。主な迷信と、その由来とされる理由は以下のとおりです。
- 家に持ち帰ると火事になる:燃え上がる炎のような赤い花姿から連想されたといわれています。
- 摘むと死人が出る・手が腐る:彼岸花は全草、とくに球根(鱗茎)にリコリンなどの有毒成分を含みます。子どもが触ったり口にしたりしないよう戒めるために広まったと考えられています。
- お墓に咲く「死人花」:土葬が主流だった時代、モグラやネズミなどから遺体を守るために墓地の周りへ植えられたとされ、死のイメージと結びつきました。
いずれも科学的な根拠はありませんが、毒から子どもや田畑を守るための先人の知恵だったともいえます。
彼岸花を贈り物にしても大丈夫?
彼岸花は決して怖い花言葉だけをもつ花ではありませんが、死や不吉な印象があることから、お祝いの贈り物として用いられることはほとんどありません。秋の花を贈りたいときは、ダリアやリンドウ、コスモスなど縁起のよい花を選ぶと安心です。
彼岸花の開花時期はいつ?見頃は9月中旬~下旬

彼岸花の開花時期は9月中旬~下旬で、秋分の日(毎年9月22~23日ごろ)前後に見頃を迎えます。名前のとおり「秋のお彼岸」に咲く花で、俳句では秋の季語として親しまれています。
開花は気温の影響を受けやすく、残暑が厳しい年は花茎の伸びが遅れて10月上旬ごろに見頃がずれ込むこともあります。また、品種改良された園芸品種のなかには、夏~秋に咲くものもあります。
雨のあとに一斉に咲く「雨後の彼岸花」
乾燥した日が続いたあとにまとまった雨が降ると、一斉に花茎を伸ばして咲く現象があります。これが「雨後の彼岸花」とも呼ばれる由縁です。彼岸花を見に出かけるなら、雨が止んだ数日後をねらうのがおすすめです。
彼岸花の花が咲く時期にないものは?答えは「葉」

彼岸花の花が咲く時期にないものは「葉」です。彼岸花は葉のない花茎だけを地面からまっすぐ伸ばして花を咲かせ、花が終わってから葉が伸びてきます。そのため、花と葉を同時に見ることはできません。
花と葉が出る時期の違い
| 時期 | 彼岸花の様子 |
|---|---|
| 9月中旬~下旬 | 葉のない花茎が伸びて花が咲く |
| 10月~翌3月ごろ | 花が終わったあとに細長い葉が伸び、冬のあいだ光合成をして球根に栄養を蓄える |
| 4~5月ごろ | 葉が枯れる |
| 夏 | 地上部がなくなり、球根の状態で休眠する |
「まず花が咲き、あとから葉が伸びる」という、一般的な草花とは逆の生態をもっています。葉と花を一緒に見ることがない性質から「葉見ず花見ず」と呼ばれ、昔の人は恐れをなして死人花(しびとばな)や地獄花(じごくばな)などと呼ぶこともありました。
彼岸花(曼珠沙華)とは?正式名称・別名と基本情報

彼岸花(ヒガンバナ)とは、ヒガンバナ科ヒガンバナ属(リコリス属)に分類される球根植物です。正式名称(標準和名)は「ヒガンバナ」、学名は「Lycoris radiata(リコリス・ラジアータ)」で、「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」は別名にあたります。日本や中国に広く自生し、秋のお彼岸の時期に赤い花を咲かせます。
- 学名
- Lycoris radiata
- 科・属名
- ヒガンバナ科・ヒガンバナ属
- 英名
- Red spider lily
- 原産地
- 中国(日本へは古い時代に渡来したとされる)
- 開花期
- 9月中旬~下旬(品種により7~10月)
- 花の色
- 赤、白、ピンク、黄、クリームなど
- 別名
- 曼珠沙華(まんじゅしゃげ/かんじゅしゃか)
死人花(しびとばな)
地獄花(じごくばな)
幽霊花(ゆうれいばな)
剃刀花(かみそりばな)
狐花(きつねばな)
捨子花(すてごばな)
毒花(どくばな)
痺れ花(しびればな)
天蓋花(てんがいばな)
狐の松明(きつねのたいまつ)
葉見ず花見ず(はみずはなみず)
雷花(かみなりばな)
レッドスパイダーリリー
ハリケーンリリー
マジックリリーなど
別名は地方によって1,000以上あるともいわれ、日本人の暮らしに身近な花だったことがうかがえます。
彼岸花・曼珠沙華・リコリスは同じ花?違いはあるの?

彼岸花・曼珠沙華・リコリスは、いずれも同じ植物を指します。彼岸花が和名、曼珠沙華が別名、リコリスが学名(属名)です。ただし「リコリス」は、ショウキズイセンやナツズイセンなどヒガンバナ属の植物全体を指して使われることも多く、園芸店では白や黄色の品種が「リコリス」の名で流通しています。
なお、甘草(かんぞう)の英名「Licorice(リコリス)」と同音のため混同されることがありますが、まったく別の植物です。
彼岸花(曼珠沙華)の意味とは?名前の由来
彼岸花という名前や別名には、それぞれ意味があります。「怖い」「不吉」といったイメージだけでなく、実はおめでたい意味をもつ名前もあります。
「彼岸花」の名前の意味・由来
秋のお彼岸(秋分の日を中日とした前後3日間、計7日間)の時期に花を咲かせることから「彼岸花」と名付けられたといわれています。また、球根に毒があり「食べると彼岸(あの世)へ行ってしまう」ことが名前の由来という説もあります。
「曼珠沙華」の意味
別名の「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」は、サンスクリット語で「天上に咲く花」を意味する言葉に由来します。仏教の経典では、おめでたいことが起こる前兆として天から降ってくる赤い花とされており、不吉なイメージとは反対の縁起のよい意味をもっています。
学名「リコリス・ラジアータ」の意味
学名の「Lycoris(リコリス)」はギリシャ神話に登場する海の女神の名前に、「radiata(ラジアータ)」は「放射状の」という意味で、細い花びらが放射状に広がる花姿に由来しています。
「死人花」「雷花」など怖い別名の由来
「死人花」「幽霊花」は墓地に多く咲くこと、「剃刀花」は細く反り返った花びらの形、「雷花」は雷のように突然地面から花茎が伸びて咲くことや、摘むと雷が落ちるという言い伝えに由来するといわれています。どれも彼岸花の独特な生態や姿から生まれた名前です。
彼岸花(曼珠沙華)の種類
彼岸花の仲間(ヒガンバナ属)には多くの品種があり、今も品種改良によって新しいものが生み出されています。赤色のイメージが強い彼岸花ですが、白、黄、オレンジ、ピンクなどの花色もあります。ここでは代表的な品種をご紹介します。
リコリス・アルビフローラ(白花曼珠沙華/白彼岸花)
白い花びらをしていることから白彼岸花とも呼ばれる品種です。花が咲いた後に葉がでる秋出葉型タイプで、花びらの縁がゆるやかな波を打って外側に反る特徴があります。
リコリス・オーレア(ショウキラン/ショウキズイセン)
黄色の花びらをした原種で、秋出葉型なので花が咲き終わった後に葉っぱが生えてきます。リコリス・アルビフローラと同様に、花びらが波を打って外に反り返る特徴があります。寒さにはやや弱く、主に四国や九州に自生している品種です。
彼岸花を自宅で育てたい方は、球根の植え付け時期や増やし方をまとめた彼岸花(曼珠沙華)の育て方もあわせてご覧ください。
彼岸花の毒と虫除け・モグラ除けの効果

彼岸花は全草、とくに球根(鱗茎)にリコリンなどのアルカロイド系の有毒成分を含みます。地中に潜むモグラやネズミは、ほかの植物の根はかじっても彼岸花の球根はかじらないといわれ、昔から田んぼのあぜや墓地の周りに植えられてきました。
観賞するぶんには問題ありませんが、誤って口にすると吐き気や下痢などの中毒症状を起こすおそれがあります。触ったあとは手を洗い、小さな子どもやペットが口にしないよう注意しましょう。毒の詳しい症状や対処法はヒガンバナ(曼珠沙華)の毒は危険?で解説しています。
水戸市植物公園 西川園長の”彼岸花コラム”

彼岸花は食用は厳禁ですが、飢饉の時に球根の毒を水で流して利用したり、水戸黄門の命令で発行した家庭の医学書「救民妙薬」では、球根をすり下ろして患部に当てて湿布剤としました。何もなく本当に困った時、役立つ植物かもしれませんね。
彼岸花の名所|関東なら埼玉県の巾着田が有名
彼岸花の群生を一望できる名所は全国にあります。見頃は例年9月中旬~下旬なので、お出かけ前に各スポットの開花情報をチェックしておきましょう。
ひだか巾着田曼珠沙華公園(埼玉県日高市)
関東で彼岸花の名所といえば「巾着田(きんちゃくだ)」が一番有名です。高麗川に囲まれた一帯に500万本ともいわれる彼岸花が咲き誇り、日本最大級の群生地として知られています。コスモスなども咲き、自然豊かな環境で秋の花を楽しめます。
矢勝川堤(愛知県半田市)
童話作家・新美南吉の『ごんぎつね』に登場する彼岸花の風景で知られるスポットです。川沿いの堤防が赤い彼岸花で彩られます。
つづら棚田(福岡県うきは市)
「日本の棚田百選」に選ばれた棚田で、石積みの棚田のあぜを彼岸花が赤く縁取る景色が楽しめます。
彼岸花(曼珠沙華)に関するよくある質問
Q. 彼岸花の花が咲く時期にないものは何ですか?
A. 「葉」です。彼岸花は花が咲き終わってから葉が伸びるため、花と葉を同時に見ることはありません。葉は秋から冬にかけて茂り、翌年の春に枯れます。
Q. 彼岸花はいつ咲きますか?
A. 9月中旬~下旬、秋分の日前後に咲きます。残暑が厳しい年は10月上旬ごろまでずれ込むこともあります。
Q. 彼岸花の正式名称は?
A. 標準和名は「ヒガンバナ」、学名は「Lycoris radiata(リコリス・ラジアータ)」です。「曼珠沙華」は別名です。
Q. 彼岸花の花言葉は怖いのですか?
A. 花言葉そのものは「情熱」「再会」「また会う日を楽しみに」など前向きなものが中心です。「あきらめ」「悲しい思い出」といった花言葉や、迷信・毒のイメージから怖いといわれることがあります。
Q. 彼岸花に「死」を意味する花言葉はありますか?
A. ありません。「死人花」などの別名や墓地に植えられてきた歴史から、死のイメージが結びついています。
Q. 彼岸花を家に持ち帰ると火事になるのは本当?
A. 科学的な根拠はなく、炎のような花姿から生まれた迷信です。ただし全草に毒があるため、触った後は手を洗い、子どもやペットが口にしないよう注意しましょう。
秋に咲くほかの花も知りたい方は、9月に咲く花一覧や、彼岸花の仲間であるネリネ(ダイヤモンドリリー)の花言葉と育て方もチェックしてみてください。



