奈良時代から生薬や鍼灸などの民間療法に利用されてきたビワ。常緑性で、温暖な地域であれば農薬を使わずに育てられますよ。初夏に収穫できるオレンジ色をした甘い果実は、生食だけでなくジャムなども人気です。今回は、剪定や種まき、苗木の植える時期と方法など、ビワの育て方についてご紹介します。
ビワ(枇杷)ってどんな植物?
ビワは、樹高2~5mに生長し、高いものだと10mほどの大きさになります。
楕円形をした肉厚な葉っぱには、葉脈がくっきりと浮き上がります。この特徴的な葉っぱの形が琵琶に似ていることが、名前の由来です。
12~2月に白い小さな花を咲かせ、結実して6月に収穫期を迎えます。オレンジ色の果実は薄い産毛で覆われており、食べると酸味が少なくわずかな渋味が特徴です。
もともと日本に自生していた種類は種が大きく果肉が少なかったことから、食用には向きませんでしたが、江戸時代に果樹としての品種がもたらされたことで果物としての栽培が開始されました。
ビワ(枇杷)の木の苗木の植え付けや種まきの時期と方法は?
苗木
苗木から育てる場合は、2月下旬~4月に、鉢や地面に植えて育てます。鉢植えは、7~8号鉢を準備し、植えていきましょう。
地植えは、日当たりと水はけのよい場所を選び、深さと幅40~50cmの植え穴を掘って植えてください。植えた後は、たっぷりと水を与えてください。
種まき
種まきは、5~6月が適期です。実をつけるまで8~10年ほどかかることから、じっくり育てたい方や、接ぎ木の台木として育てたい方におすすめです。
今回は、脱脂綿やスポンジを使って発根させる方法をご紹介しますが、洗った種を土の2~3cmの深さに植えてもかまいません。
1. 実から種を取り出し、水洗いして果肉をしっかり落とす
2. 種の周りの茶色い皮をむく
3. 水に湿らせ1~2cmの厚さの脱脂綿やスポンジを容器に入れる
4. 上に種を置く
5. 種が半分つかるくらい水を入れる
6. 1週間ほどして発根したら、育苗ポットなど小さな鉢に植え替える
7. 苗木が十分に育ったら、鉢や地面に植え替える
ビワ(枇杷)の木の土作り、水やり、肥料の時期と方法は?
土作り
ビワを植える土は、水はけのよい土が適しています。
鉢植えは、赤玉土(小粒)7~8:腐葉土2~3の割合で混ぜた土か、市販の果樹用培養土を使ってください。地植えは、植え穴を掘った土に腐葉土を2~3割混ぜておきましょう。
水やり
鉢植えは土の表面が乾いてからたっぷりと水を与えます。地植えは、特に水やりは必要ありません。ただ、日照りが続いたときは水やりをするとよいでしょう。
肥料
2~3月、6月、9月、11月の年4回、肥料を施します。2~3月と6月は速効性化成肥料を9月と11月は堆肥や油かす、骨粉、鶏糞などの有機質肥料を株から少し離れたところに施していきましょう。
ビワ(枇杷)の木の剪定の時期と方法は?
ビワは、枝を剪定して風通しをよくし、おいしい実を収穫するために摘蕾・摘果を行います。
剪定
枝の剪定時期は、木の成熟度合いによって違いがあります。まだ実をつけたことのない木は2月、実をつけるようになった木は8月下旬~9月に剪定していきましょう。
また、品種によって剪定後の樹形が違います。茂木などまっすぐ上に枝が生える品種は、横に伸びる枝を残す「変則主幹形」に仕立ててください。
一方、田中などのように枝が横に広がる品種は、「盃状形」に仕立てていきましょう。それぞれの品種に合った樹形に仕上がったら、混みあった枝を間引いて、幹に光が当たるようにすれば完了です。
花芽がその年に伸びた枝につくので、剪定のときに切り落とさないよう注意してください。
● 変則主幹形
幹を2~3mの高さで切り落とします。そして、横に広がる枝は3~4本、左右互い違いになるよう配置していきましょう。横に生える枝の上下間隔は、30~45cmほど空けるようにするとよいですよ。
● 盃状系
2~3本の枝で、盃のような形になるように樹形を整えていきます。そして、高さが1.8~2mほどになるよう、それよりも上にある枝は途中で切って高さを揃えください。
摘蕾・摘果
冬に咲いた花を全て結実させてしまうと、行き渡る栄養が分散し、個々の実が小さくなってしまいます。
蕾は、全体の1/3~1/2まで減らしましょう。蕾はかたまってついているので、それぞれに4~5個ほど残すようにするとよいですよ。
また、花数の少ない枝は、切り落としてしまってもかまいません。さらに、実が小さい段階で、数が多いようであれば、早めにもぎ取ってしまいます。
ビワ(枇杷)の木の植え替えの時期や方法は?
鉢植えは、根詰まりを防ぐために、2~3年に1回、1回り大きな鉢に植え替えをします。根を傷つけないよう鉢から株を掘り上げ、新しい土に植えてください。手順は、苗を植える時と同じです。
ビワ(枇杷)の木の増やし方!接ぎ木や挿し木の時期と方法は?
ビワは、種まき、接ぎ木、挿し木で数を増やすことができます。種まきは、上述した方法で行ってください。接ぎ木や挿し木は、2~3月が適期です。
接ぎ木
1. 種から育てた苗木を台木にする
2. 台木の幹を、高さ10~15cmのところで水平にカットする
3. 皮の内側3cmほどのところに、垂直に切り込みを入れる
4. 増やしたい株から、10cmほどの長さの枝を切り落として接ぎ穂を準備する
5. 接ぎ穂の切り口を斜めにカットし、1~2時間水に浸ける
6. 台木の切り込みに、接ぎ穂を差し込み、接ぎ木テープをまいて固定する
挿し木
10~15cmほどの長さの枝を準備し、切り口を斜めにカットしたら、赤玉土(小粒)や鹿沼土(小粒)に挿して育てます。
挿した枝は、鉢ごとビニール袋で包んで管理しましょう。土が乾かないよう水やりをして管理すれば、根が生えてきますよ。
ビワ(枇杷)の木の栽培で注意する病気や害虫は?
がん腫病
葉や幹、実、根に発生する細菌性の病気です。葉っぱに褐色の斑点が現れたり、幹にこぶができたりしたら、感染している可能性が高いです。
病気にかかっている部分は回復しないので、切り落として拡大を防ぎましょう。傷口から菌が入ってしまうので、幹や枝は剪定以外で傷つけないよう注意してください。
ビワ(枇杷)の木の育て方のポイントは?
水はけのよく、暖かい場所で育てるのがポイントです。他の果樹と違い、真冬に花を咲かせることから、実が未熟なときに寒い環境にあると、収穫量が減ってしまいます。
また、湿気に弱いので、土の水はけに注意し、剪定をして風通しをよくしましょう。
ビワ(枇杷)の実をたくさん収穫して楽しもう!
ビワは、他に比べて栽培が簡単な果樹です。想像よりもたくさんの実をつけ、収穫して楽しむことができますよ。
品種や苗木の生長度合いに合った剪定をするのはむずかしいかもしれませんが、そこさえマスターしてしまえば、後はそれほど手間をかけなくても育ちます。
庭に果樹を植えたいときは、まずはビワからはじめてみるのがおすすめです。
更新日: 2023年03月08日
初回公開日: 2015年12月07日