日本人の心の花ともいえる桜。その中で、日本に最も多く植えられているのが、ソメイヨシノです。生長が早く、幼い木でも花を咲かせ、10年も経てば立派な樹木になります。ただ、虫や病気に弱いという特性も持っています。今回は、そんなソメイヨシノの苗木の植え方や挿し木の方法など、育て方についてご紹介します。
ソメイヨシノの育て方のポイントは?
剪定する時期を見誤らないことが、元気に育てるコツです。「桜切るバカ、梅切らぬバカ」ということわざもあるように、剪定した後は病気や害虫の被害にあいやすくなります。
ソメイヨシノの苗木の植え方と時期は?
ソメイヨシノは種をほとんど付けないことから、接ぎ木苗を購入して育てていきます。幹が太く、芽や枝の色つやがよい苗木を選びましょう。植え付けは、11~12月か、2月下旬~3月中旬が適期です。根を水に3時間から1晩浸けておくと、根ばりがよくなります。
鉢植えは、苗木よりも1~2回り大きな鉢を準備し、植え付けていきましょう。底に川砂やゴロ石を敷いておくと水はけがよくなりますよ。
地植えは、樹高が10~20m、幅が10m以上になることを考えて、広い土地を選んで植えます。幅50~60cm、深さ40~50cmの植え穴を掘り、土作りをしてから苗を植え、支柱を立てて支えておくと安心です。
ソメイヨシノの土作り・水やり・肥料の与え方
土作り
水はけと水もちのバランスがよい土を好みます。鉢植えは、赤玉土(中粒)3:川砂3:腐葉土2の割合で混ぜた土か、赤玉土(小粒)4:腐葉土3:黒土3の割合で混ぜた土がおすすめです。地植えは、堀り上げた土に腐葉土や完熟堆肥を2~3割混ぜておくとよいですよ。
水やり
地植えの場合は特に必要ありません。鉢植えの場合は、土の表面が乾いていたら、たっぷりと水を与えます。
肥料の与え方
植え付けるとき、土にゆっくりと効く緩効性化成肥料と堆肥を混ぜておきます。そして、2~3月と、5~6月に、同じ緩効性肥料か、有機質の肥料を施します。枝の先あたりの土に肥料をまくと、根にダメージを与えずにすみますよ。
ソメイヨシノの剪定の時期と方法は?
12~3月が適期です。基本的には自然な樹形で育てるようにし、余分な枝や病気にかかった枝、ヒコバエだけを剪定するようにしましょう。また、雑菌が入りやすいので、剪定が終わったら癒合剤をしっかりと切り口に塗っておきます。
ソメイヨシノの増やし方!挿し木や接ぎ木の時期と方法は?
ソメイヨシノは、挿し木や接ぎ木で株を増やすことができます。ただ、接ぎ木はオオシマザクラを種から育てたものを台木として使うのが一般的なので、一般家庭ではむずかしいとされています。まずは、挿し木ではじめてみましょう。
挿し木
2~3月に新芽の付いている枝を切り取るか、6~7月にその年に伸びた枝を使って挿し木していきます。いずれも、10~15cmの長さに切り取った枝を準備してください。また、親株の切り口には癒合剤を塗ります。
切り取った枝は、底に2~3cm砂を敷き、上に赤玉土や鹿沼土を入れた鉢に挿して育てます。切り口に発根剤を塗ると、根が生えやすくなりますよ。
接ぎ木
増やしたい枝を1月中旬~2月上旬に切り取っておき、オオシマザクラの台木を準備して、2~3月頃に接ぎ木をします。オオシマザクラの台木に切れ込みを入れ、その切れ込みに合わさるようソメイヨシノの枝先を切りそろえます。
切り口を合わせて、接ぎ木テープで固定し、接ぎ目を土に埋めれば完了です。土の表面を寒冷紗で覆っておくと、乾燥せず、生育がよくなりますよ。
ソメイヨシノの植え替えの時期と方法は?
鉢植えは、1~3年に1回、12~2月に植え替えをします。根が鉢底から出ていたり、水が土に染み込まなくなったりしたら、植え替えのサインです。根詰まりをすると株が弱って枯れてしまうので注意してください。
ソメイヨシノの育て方で注意する病害虫は?
てんぐ巣病
タフリナ菌というカビが引き起こす伝染病で、ソメイヨシノは特に感染しやすいとされています。てんぐ巣病にかかると、枝はたくさんの小枝を生やしながら大きなかたまりを作り、そのうち枯れてしまいます。また、病気にかかった枝は花を咲かせません。
病気の疑いのある部分は早めに切り取り、焼却処分しましょう。また、切り口には忘れずに癒合剤を塗って感染を防ぎましょう。
根頭がん腫病
根に発生した小さなこぶが、どんどん大きくなっていき、次第に生育が悪くなる土壌細菌による病気です。他の広葉樹にも寄生するので、病気にかかった株は掘り起こして焼却し、土壌消毒をして拡大するのを防ぎます。人が桜の株元を踏みつけることで根が弱ってしまうので、心配な場合は注意してください。
アメリカシロヒトリ
葉っぱを食べてしまう害虫で、桜の木全般に付きやすいとされています。見つけたらオルトランやスミオチンなどの薬剤を散布し、早めに駆除していきましょう。
ソメイヨシノを接ぎ木や挿し木で増やしてみよう
ソメイヨシノは、数本の原木の枝を挿し木や接ぎ木を繰り返して、数を増やし、日本中に広がっていった桜です。通常、生物は遺伝子が変化することで強くなっていきますが、ソメイヨシノは病気に弱い遺伝子をそのまま引き継いでいるため、病気や害虫に弱いのです。
種を付けにくく、自然に繁殖はできないので、1度植え付けたら大切に育てていきたいですね。
更新日: 2022年08月03日
初回公開日: 2015年11月21日