春に生えた芽が天ぷらにして食べられるコシアブラ。タラの芽を「山菜の王様」と呼ぶのに対して、「山菜の女王」として親しまれるほど知名度の高い山菜です。ただ、自宅で育てて楽しむにはちょっとしたコツが必要。そこで今回は、コシアブラとはどんな植物か、苗木からはどうやって育てるのかなどをご紹介します。
コシアブラとはどんな樹木?
- 学名
- Acanthopanax sciadophylloides
- 科・属名
- ウコギ科・ウコギ属
- 英名
- ー
- 原産地
- 日本
- 開花期
- 8月
- 花の色
- 緑、黄緑
- 別名
- 漉油(コシアブラ)
ゴンゼツノキ
コシアブラとは、ウコギ科・ウコギ属に分類される落葉樹です。背丈は最大15〜20mほどと大きく生長します。枝に手のひら状にまとまってつく葉っぱは、さわやかな雰囲気。
そして、8月になるとクリーム色の控えめな花が茎の先にたくさんつき、その後黒い実がなります。このとき、茎が赤く色づく姿が秋らしく、四季折々の姿を楽しませてくれますよ。
山野に自生しており、日本各地で見かけることができます。芽が独特の苦味を持つ山菜として親しまれ、山菜採りにおもむく方も多いんです。
コシアブラの栽培はむずかしい?
人気の山菜であるコシアブラを自宅で栽培し、毎年収穫して楽しみたいという方も多くいます。本来は大きく生長する巨木であることから鉢植えには向きませんが、「数年楽しむ」と決めて小さな株を鉢植えで育てることは可能です。
株が大きく生長して管理しきれなくなったら、後述する分根で株を増やすと楽しみが広がります。また、庭など広いスペースのある方は、植え替えのタイミングで地植えに切り替えてもかまいません。
鉢でコシアブラを栽培するときに準備するものは?
- 苗木(ポット苗)
- 樹木専用培養土
- 苗よりも一回り大きな鉢
- 1mくらいの支柱
- 鉢底ネット
コシアブラを鉢植えにするときは、「ポット苗」と呼ばれる幼い苗木を購入して育てていきましょう。これなら、数年間は鉢植えを楽しめますよ。
コシアブラの苗木からの栽培方法は?
準備が整ったら、いよいよコシアブラの苗木を植えます。葉っぱが枯れ落ちる11月から、葉っぱが芽吹く前の3月の間が地面に植えるタイミングです。苗木はだいたいこの時期に販売されていることが多いので、購入したらすぐに植えてあげてください。
苗木を植える方法
- 鉢の穴に鉢底ネットをかぶせる
- 鉢の1/3ほど樹木の培養土を入れる
- 苗木をポットから取り出し、根に付いた土を軽く手でほぐす
- 苗木を鉢の中心に置く
- 根元が鉢の縁から下2〜3cmのところになるよう土を足し引きして高さを調節する
- 高さが決まったら、苗木の周りに土を入れていく
- 土の表面を割り箸などでつつき、根の間にも土が入るようにする
- 苗木がぐらついているようなら、横に支柱を立てて麻ヒモなどで結び合わせ株を支える
- たっぷりと水やりをする
コシアブラの鉢植えの管理方法は?
コシアブラの苗木を鉢に植えたら、置き場所を決め、水と肥料を与えて管理していきます。手間がかかると感じるかもしれませんが、こまめな管理が長く楽しむポイントですよ。
日差しのやわらかい場所に鉢を置く
コシアブラは強い日差しにあたると葉っぱが焼け落ちて枯れるので、鉢の置き場所をどこにするかが重要。やわらかな日差しが当たる、風通しのよい場所に置きましょう。
ひさしのあるベランダなど、直射日光が避けられる場所がおすすめです。
土の表面が乾いたら水やりをする
土の表面が乾いたら水やりのサインです。置き場所や土の種類によって乾き具合が違うので、何日ごとと決めず、土の乾き具合を見て水やりのタイミングを判断してください。
土は乾いていないけれど葉っぱが乾燥しているときは、霧吹きで株の周りや葉に水を吹きかけるとよいです。
肥料は2〜3月に与える
コシアブラは、もともと山野に自生している強い樹木なのでたくさんの肥料は必要ありません。新しい芽が生える2〜3月に置き型の固形肥料をから生え際から少し離れた場所に与えてください。
コシアブラの剪定の時期と方法は?いつから収穫できる?
コシアブラは生長段階に合わせて剪定をしていきます。きちんと剪定をすることで、新しい枝が生える芽を増やし、結果的に収穫できる芽の数を増やせます。
樹高が1mほどに育ったら、4〜5月に株の幹を水平に切り取ります。そしてその翌年、同じ高さのところで新しく伸びた枝を水平に切り落とします。そのさらに翌年からは4〜5月に芽を収穫して楽しめますよ。
コシアブラの山菜としての食べ方は?
山菜として食べられるコシアブラの芽は、保存がきかずスーパーで見かけることがあまりないことも、自宅で栽培したいと考える方が多い理由です。
3度目の剪定のタイミングを迎える4〜5月に清潔なハサミで芽を収穫し、揚げて天ぷらにしたり、茹でて和え物やおひたしにして食べることができます。採取した芽は苦味が強いので、下処理をしてアクを抜いて調理するとおいしくいただけます。
コシアブラの鉢植えは根詰まりしたら植え替える
数年鉢で育てたコシアブラには、鉢の底から根が出ていたり、土が水を吸い込まなかったりといった根詰まりの兆候が現れます。
根詰まりをそのままにしておくと枯れてしまうので、苗木を植える時期と手順を参照しながら、一回り大きな鉢へ植え替えていきましょう。
このとき、細い根を傷めると枯れてしまう可能性があるので、根に付いた古い土は軽く落とす程度にとどめてください。
コシアブラは植え替えるタイミングで地植えにもできる?
コシアブラが大きく生長してしまったという方で、庭があるなら地植えに切り替えるのも1つの方法です。株の大きさに合わせて穴を掘り、植えていきましょう。植え替えが完了してからは、1週間おきに2〜3回土の表面が乾いたら水やりをすれば、後はある程度放っておいてもかまいません。
- 鉢の土を完全に乾燥させる
- 株よりも一回り大きな穴を掘る
- コシアブラの株を植え穴に入れ、穴の直径や深さが十分にあるか確認する
- 掘り上げた土にたっぷりと腐葉土を混ぜる
- 根元が地表の高さになるよう、植え穴に4.の土を入れて高さを調節する
- 高さが決まったら、苗木の周りに土を入れていく
- 残った土を植え穴の円周上に高く盛り、土手をつくる
- 苗木の横に支柱を立て、麻ヒモなどで数か所結びつけて倒れないよう支える
- 7.で作った土手の中に水をたっぷりと注ぐ
- 1日ほどたち、土手の中の水が引いたら、株元に土を足して地面の高さを合わせる
鉢で育てられなくなったコシアブラはどうする?増やし方は?
鉢植えで育てきれなくなったコシアブラは、「分根(根伏せ)」にチャレンジして数を増やしながら新たに栽培を楽しめます。成功率は高くありませんが、コシアブラの鉢植えの処理に困ったときは、チャレンジしてみてもよいですよ。
分根とは、コシアブラの太い根をぶつ切りにし、土に植えて新しい株として育てる方法です。分根に使ったコシアブラは再び植えられなくなってしまいますが、数が増えると楽しみもさらにひろがりそうですね(※1)。
分根の手順
- 人の背丈ほどのコシアブラを、根が傷つかないよう気をつけながら土から掘り上げる
- 直径1cm以上ある太い根を3〜10cmずつに切り分けていく
- 深さ10cm以上の育苗ポットやプランターに赤玉土(小粒)を入れる
- 深さ1〜3cmのところに根を横向きに埋める
- 湿度が保てるビニールハウスや室内で土が乾燥しないように管理する
- 2〜4ヶ月後、切り分けた根から細い根が生えていたら、1つずつ育苗ポットに植え替えて育てる
収穫を楽しみにコシアブラの栽培にチャレンジしてみよう
山菜というと草花のイメージがありますよね。しかし、コシアブラは落葉樹で、大きく生長する高木です。そのため、鉢植えで楽しみたい方にとっては難易度が高いかもしれません。
ただ、春になると収穫できる芽はおいしく、山菜の中でもトップクラスの人気。うまく栽培できたときには芽を天ぷらやおひたしなどにして味わえる楽しみがありますよ。
山形県庁『分根によるコシアブラの増殖』 参考文献:更新日: 2023年02月22日
初回公開日: 2016年05月25日