蘭は、野生種だけでも約1~3万種もあるといわれています。改良された園芸種をいれるとその数はとても多く、地球上で確認された植物(維管束植物)の1割近くが蘭ということになります。日本では、胡蝶蘭などが有名ですが、なぜそれほど種類があるのか、どんな種類が有名なのかなど、蘭の種類についてご紹介します。
蘭の種類は?
原産国(生息地)による分類
蘭は、日本やアメリカ、オーストラリア、アフリカ地域など世界各国に自生しています。種類の数が多過ぎることや、種類間での違いが少ないことから、「東洋蘭(東洋ラン)」と「洋蘭(洋ラン)」という生息地によって分けられることがよくあります。
東洋蘭は、日本や中国を原産地としている蘭のことで、それ以外の地域の蘭を日本では洋蘭と呼びます。園芸種としてよく市場に出回っているのは、洋蘭が多くなっています。
東洋蘭と洋蘭の代表的な種類
東洋蘭 | 寒蘭(カンラン)、春蘭(シュンラン)、風蘭(フウラン)、中国春蘭、蕙蘭(ケイラン) |
洋蘭 | 胡蝶蘭(コチョウラン)、カトレア、デンドロビウム、デンファレ、シンビジウム、オンシジウム、バンダ、パフィオペディラム |
根っこの生え方による分類
蘭は、土の中奥深くまで根を下ろす「地生蘭」と、木の幹や岩肌に張り付いて育つ「着生蘭」の2つの生育パターンがあります。地生蘭は、「バルブ(偽鱗茎、偽球茎)」と呼ばれる根っこや茎に水分を貯めこむタンクを作ります。着生蘭は、昼に気孔を閉じて水分の蒸発を防ぎ、夜にCAM型光合成を行うという特殊な性質をもちます。
8つの種類の分類
蘭の種類はたくさんありますが、園芸用として流通しているものは「カトレア」「リカステ」「オンシジウム」「ファレノプシス(胡蝶蘭)」「バンダ」「デンドロビウム」「シンビジウム」「パフィオペディラム」の8つがあります。
この8つは全て洋蘭ですが、8つの種類を以下で詳しくご紹介します。
蘭の代表的な8つの種類
胡蝶蘭(ファレノプシス/コチョウラン)
日本では、胡蝶蘭(コチョウラン)の名前で親しまれている種類の東洋蘭です。台湾、中国、オーストラリアに生息し、東洋蘭のグループ内では一番ポピュラーな品種として贈り物としても人気があります。
肉厚の葉っぱが左右に生え、茎は短くて見えない特徴があります。一般に出回っているものはほとんどが交配種で、花色や大きさによってさらに6つのグループに分けられます。
■胡蝶蘭(ファレノプシス/コチョウラン)のグループ
グループ | 特徴 |
白花 | 純白で形がよい花を付け、鉢花として最も人気がある |
ピンク、赤花 | 淡いピンク、濃ピンク、濃紅色の花を咲かせる |
黄花 | レモンイエローの花を咲かせる |
セミアルバ | 白色の花びらで、中心のリップが紅色 |
ストライプ・スポット | 花びらに細かく筋が入ったり、斑点が出たりする |
ミニ | 小輪でたくさんの花を咲かせる |
カトレア(カトレヤ)
蘭全体の中で一番メジャーな種類の着生蘭です。「洋蘭の女王」とも呼ばれ、中央・南アメリカに約30種が自生しています。「優美な貴婦人」「成熟した大人の魅力」「魔力」「魅惑的」といった花言葉をもち、贅沢で官能的な蘭としてヨーロッパ貴族たちに愛され、今でも格調高い花として人気があります。
また、樹木や岩肌など栄養が少ない環境でも生きられるよう、自分で養分を蓄えて育つ生命力の強い種類です。寿命がとても長いため、ガーデニングや栽培種としても人気が高く、育てやすいミニタイプも数多く出回っています。
デンドロビウム(デンドロビューム)
デンドロビウムは、熱帯アジアを中心にスリランカやネパール、サモアや日本、ニュージーランドなど幅広い範囲に自生している着生蘭です。高い木の枝の上に根を広げて着生するのが特長で、ギリシャ語で「木」を意味するデンドロと「生じる」を意味するビウムに由来して名付けられました。
蘭の中では、比較的育てやすい種類です。
デンファレ(デンドロビウム・ファレノプシス)
正式名称をデンドロビウム・ファレノプシスといい、デンファレの略称で親しまれている洋蘭です。オーストラリアからニューギニアにかけて原種が自生し、ハワイ、タイ、マレーシアなどで盛んに栽培されています。
白やピンクなどのかわいらしい花はアレンジしやすいため、切り花で最も使われています。
シンビジウム(シンビジューム)
シンビジウムは、主に東南アジアなどの熱帯から温帯に自生する地生蘭です。寒さにも比較的強いので、冬の贈答用鉢花として人気があります。
シンビジウムという名前は、ギリシャ語で舟を意味する「Kymbe」と形を意味する「eidos」に由来しています。正面から見ると丸くくぼんでいる花びらの形が舟底の形に似ているところから、その名称が付けられたといわれています。
オンシジウム(オンシジューム)
オンシジウムは、中南米の熱帯・亜熱帯地域に約400種分布している着生蘭です。枝分かれをした茎の先に、1~2cmほどの大きさの斑点が入った黄色い花を、垂れ下がるほどたくさん付けるという特徴があります。
花束やアレンジメントによく用いられる、一般的になじみのある蘭の種類です。
バンダ
バンダは、東南アジア原産の洋蘭です。樹木の上に太い根を張る着生蘭で、放っておくと2m近くまで生長します。紫、赤、黄、白など花色のバリエーションが豊富で、他の蘭にはあまり見られない青色があることが特徴です。
その大きく生長する姿から、サンスクリット語でまとわりつくを意味する「バンダカ」が名称の語源といわれています。
パフィオペディラム(パフィオ)
パフィオペディラムは、東南アジアや熱帯、亜熱帯アジアに約70種が自生する洋蘭です。基本的には薄暗い樹林の地面に根を張って育つ地生蘭ですが、着生蘭の品種もあります。花の一部が袋のようになる変わった姿をしており、ユニークな形や大きな花が好きな方に人気があります。
短い茎に咲く花は、1ヶ月ほど楽しむことができますよ。
色々な種類の蘭(ラン)の花を育てよう
今回紹介した蘭の種類は、たくさんある中のほんの一部です。植物の1割が蘭といわれるほど、過酷な環境でも適応・変化して育ち、また繁殖力や生命力が強い花は、蘭の他にはないかもしれませんね。
蘭が好きな方は、色々な種類を育ててみると、それぞれの違いがわかって、一層夢中になってしまうかもしれませんね。
更新日: 2023年01月04日
初回公開日: 2015年07月26日