セッコクと日本人の関わりは深く、その歴史は平安時代までさかのぼります。日本最古の薬物辞典『本草和名』に登場し、江戸時代に入ってからは「長生草」の名前で栽培され、人気を集めたそうです。今回は、そんなセッコクがどんな蘭なのか、育て方や植え替え、花の種類・品種、図鑑情報などをご紹介します。
セッコク(長生蘭)とは?どんな花を咲かせる?
セッコクは、日本や朝鮮半島に自生する、着生ランです。岩の上や大木に着生して、花を咲かせます。デンドロビウムという蘭の7つある分類の1つ、「ノビル系」に属し、長生蘭(チョウセイラン)という名前でも知られています。
他にも、「岩薬(イワグスリ)」「少名彦薬根(すくなひこのくすね)」と呼ばれ、薬用植物として有名です。漢方では、開花前の全草を乾燥させたものを「石斛(せきこく)」と呼び、健胃、消炎、強壮などに有効な生薬として利用します。セッコクという呼び名は、この漢名がなまって定着したものといわれています。
セッコク(長生蘭)の図鑑!学名・原産国・英語名は?
- 学名
- Dendrobium moniliforme
- 科・属名
- ラン科・セッコク(デンドロビウム)属
- 英名
- Sekkoku
Japanese dendrobium
- 原産地
- 日本、朝鮮半島、中国
- 開花期
- 3~5月
- 花の色
- 緑、白、薄紅、黒紫、黄
- 別名
- セキコク
長生蘭(チョウセイラン)
少彦薬根(クナヒコナノクスネ)
岩薬(イワグスリ)
セッコク(長生蘭)の花言葉や意味・由来は?
『私を元気づける』『あなたを元気づける』『豊かな笑顔』
古くから薬効のある植物として親しまれてきたことにちなんで、「私を元気づける」「あなたを元気づける」といった花言葉がつけられています。
セッコク(長生蘭)の開花時期と見頃の季節は?
4~6月にかけて、白、薄紅、薄紫、黄といった色とりどりの花をつけます。花の大きさは2~3cmほどで、香りがよく、最盛期を迎える5月頃には、様々な品種を集めた展示会が全国各地で開かれます。石の上や木の幹など、様々な場所に着生させて、ガーデニングを楽しめますよ。
セッコク(長生蘭)の種類は?
日本独自の改良が進められた古典園芸植物であり、国内には100種類ほどが存在します。そのほとんどは、長生蘭と呼ばれる園芸品種で、江戸時代から新種が生み出され続けてきました。
万里紅(まんりこう)
スミレのように鮮やかな赤紫色の花が美しい、九州産紅花系の代表品種。セッコクといえばこの品種を指すことが多いですよ。
雷山
万里紅と同じ九州産で、紅花系を代表する品種です。万里紅よりも小型で節間が狭く、全体的に締まった印象があります。
紅牡丹
和歌山県産の紅花系です。花びらがフリル状になる牡丹咲きで、つややかな葉にも牡丹のような味わいがあり、花も葉っぱも楽しめる贅沢な品種です。
土佐っ子
高知県産で、花全体が乳白色の品種です。花のふちがほんのりと薄ピンク色で、中心部分が紅をさしたような濃赤色になります。
香雪
高知県産の白花系品種です。花つきがよく、純白できれいな花びらが落ち着いた雰囲気です。
昴
乳桃色の女性的な色味が特徴の品種です。ふわふわとしたガーゼのような花びらが独特の雰囲気を醸し出し、優しい咲き姿に癒やされますよ。
微笑(ほほえみ)
内側は薄黄色、外側は薄紫色の複色品種です。和室や日本庭園によく似合う、淡い色合いが特徴です。
黄蝶
色鮮やかな黄花系で、草丈が低い希少品種です。めしべの周りにわずかに入った赤いすじがアクセントになっています。
セッコク(長生蘭)の育て方!鉢植え、地植えの時期と方法は?
4~6月か、9月中旬~10月中旬を目安に植え付けます。セッコクはほとんど種をつけず、発芽しにくいため、苗を植えて育てます。
鉢植え
鉢植えの容器は、素焼き鉢、蘭鉢、盆鉢、山草用の焼き締め鉢など、通気性のよい鉢を用意します。まずは、着生する土台を作って、根を固定してから鉢に入れます。
1. 鉢の2/3ほどの長さの割り箸や木片を束ねてワイヤーで巻き、苔玉の芯をつくる
2. 芯に水苔を巻いて苔玉を作る
3. 苗の根を広げて、苔玉の上にかぶせる
4. 根の周りに水苔を巻き、根全体を水苔で覆う
5. 苗を鉢に入れ、ぐらつくようなら周囲に水苔を足して固める
※ 1の芯作りは飛ばして、水苔だけでも育成可能です。
地植え(石付け、庭木付け、ヘゴ板付け)
庭の大木や苔の生えた石に着生させます。活着しやすくするために、根を少量の水苔で包み、しっかりと根付くまでビニール紐や針金を巻いて固定してください。
セッコク(長生蘭)の育て方!土作り・水やり・肥料の時期と方法は?
土作り
鉢植えの場合、水苔、大粒の硬質鹿沼土、軽石、洋ラン用の培養土を準備します。水苔の代わりに山砂や砂利も使えますが、その際は鉢底ネットやごろ土を敷いて通気性の確保を。
着生させる場合は、庭石、樹木、木炭、ヘゴ板などがおすすめです。着生植物は、宿った木の養分を奪わないので、庭木に植えても安心ですよ。
水やり
水苔がカラカラに乾いてからたっぷり水やりをします。石や樹木に着生させると乾きが早いため、水分が飛んだ状態になったら水に浸してしばらく吸水させます。セッコクは葉や茎からも水分を取り込むので、全体にまんべんなく水をかけましょう。
肥料
芽吹きはじめる6~7月頃、薄めた液体肥料を週2~3回水やり代わりに与えるか、霧吹きで葉っぱ全体に散布すると生育がよくなります。花つきが悪くなるので、その後の肥料は不要です。
セッコク(長生蘭)の育て方!根の処理や花がら摘みはどうする?
鉢から根が飛び出しているときは、休眠期に入る冬、株元に巻きつけるようにします。春~秋の生育が旺盛な時期に根を動かすと切れやすいので、涼しくなって勢いが落ちついてきた頃に触りましょう。また、枯れ葉や花がらもこまめ摘み取って、株の周りを清潔な状態にしておきます。
セッコク(長生蘭)の育て方!植え替えの時期・方法は?
水苔を使った鉢植えは、2年に1回のペースで植え替えます。水苔は、劣化すると腐敗しやすいので、ピンセットや割り箸で変色した部分を取り除き、新しいものを巻きつけましょう。庭木や庭石、ヘゴ板に直接はりつかせたものは植え替えなくても大丈夫です。
セッコク(長生蘭)の増やし方!株分け、高芽とり、矢ふせの時期と方法は?
株分け、高芽とり、矢ふせの3つの方法で増やせます。4~6月頃の花が終わった直後、新芽が出はじめるまでの間が、セッコクを増やす適期です。
株分け
花が咲くまでに生長した株のみ、植え替えと同時に根の一部を手で分けます。作業前に2~3週間水やりを控え、乾燥させておくと鉢から抜きやすくなります。
高芽とり
高芽とは、何らかの理由で花芽が生長しきれなかった節です。花を咲かせなかった節を選び、高芽をそっと根本から外し、軽く吸水させた水苔に包んで育てます。
矢ふせ
節から出ている短い茎をとって、湿らせた水苔へ横向きに置き、高芽を発生させます。ごろ石を敷いた浅鉢に、湿らせた水苔を詰め、花芽のない茎を並べて軽く押しつけます。常に少し湿った状態で管理し、茎が伸びてきたら鉢上げします。茎が長いときは数cmに短く切っても構いません。
セッコク(長生蘭)との寄せ植えに向いている植物は?
同じような環境を好む山野草との寄せ植えがおすすめです。ウランやセロジネなど、ラン科の着生植物との相性は抜群です。それぞれの葉の形を活かしたレイアウトを楽しんでみてください。
セッコク(長生蘭)を育てるとき、どんな病気・害虫に気をつける?
ウイルス病
葉のところどころに色抜けしたようなモザイク模様が現れます。根本的な治療・予防法はありません。周囲の株に伝染するので、病気になった苗はすみやかに処分します。葉焼けの一種である蛇皮斑と間違いやすいので、強い日差しに当てていないか確認しましょう。
黒斑病
葉に黒い斑点ができます。感染力があるので、株を隔離し、専用の殺菌剤で対処します。一度かかると治りにくいので、広がるようなら処分も検討してください。通気性をよくし、体力のある株を育てることが最善の予防策です。
ハダニ、アブラムシ、カイガラムシ
高温乾燥の環境で増殖します。大量発生すると葉がカスリ状になるなど、見た目が悪くなるので、早めに殺虫剤を散布します。風通しのよい場所に移動させ、周囲の植物を剪定するなどして予防してください。カイガラムシは成虫になると薬が効きにくいため、ブラシでこすり落とすなど手作業で駆除します。
セッコク(長生蘭)の育て方のポイントは?
セッコクは、日当たりと通気性がよい場所で、乾き気味に育て、秋に追肥しないことがポイントです。着生植物の性質上、水や栄養分を溜め込む太い茎(通称「バルブ」、セッコクは「矢」と呼ぶ)を持っています。
もともと、水や養分の少ない環境に適しており、湿った土や養分が多い状態が苦手。水はけがよく、半日以上日の当たる場所に置くのが理想です。
セッコク(長生蘭)は蘭の花の仲間種類
セッコクは、上から吊って育てるのがおすすめです。最近はこのタイプが人気で、あらかじめ仕立てられたものが園芸店で簡単に手に入ります。インテリア雑貨のように壁や庭木にかけるだけで、セッコク本来の山野草らしい姿を楽しめますよ。
更新日: 2018年08月28日
初回公開日: 2015年09月12日