春の味覚として愛されているタラの芽は、タラノキの新芽です。もちっとした食感で、口の中に広がるほのかな苦みがあり、天ぷらやおひたしにして食べられます。日本全国に見られる丈夫な山菜で、自宅で栽培を楽しむこともできますよ。
今回は、そんなタラの芽が収穫できるタラノキの栽培について、育て方のポイントや挿し木で増やせるのかなどをご紹介します。
タラの芽とは?どんな山菜?
タラノキとは、ウコギ科・タラノキ属に分類される落葉性の低木です。春になって生えてくる新芽はタラの芽と呼ばれ、収穫して食べられます。
タラの芽は「山菜の王様」とも呼ばれ、少し苦味のある独特の味わいがします。タラノキ自体は、日本全国や東アジアの広い範囲に分布しています。
枝や幹には細かいトゲが生え、数少ない枝はまっすぐ立つように伸びます。樹高は2~4mで、枝の先端には5~10cmほどの楕円形の葉っぱをたくさんつけます。
枝先から広がる葉っぱはまるで羽のような姿で、秋になると紅葉します。
- 学名
- Aralia elata
- 科・属名
- ウコギ科・タラノキ属
- 英名
- Arlia
- 原産地
- 日本、東アジア
- 開花期
- 8月
- 収穫期
- 4月
- 別名
- 楤木(タラノキ)
タラの芽の栄養や効果・効能は?
タラの芽にはカリウムがたっぷりと含まれています。カリウムは、体の中にある塩分を外に出す働きがある栄養素で、高血圧やむくみの解消に役立ちます。
筋肉や髪の毛の元となるタンパク質、腸内環境を整える食物繊維、貧血予防に効果のある葉酸、骨や歯を丈夫にしてストレスも和らげるカルシウムなど、タラの芽は栄養満点な体によい食材です。
タラの芽を栽培しよう!まずは大切な土作りから
タラノキの根を育てるときは、市販の種まき用土または、水もちのよいピートモス5:赤玉土5くらいの割合で混ぜた土を用意します。
鉢植えなら赤玉土7~8:腐葉土や堆肥2~3の割合で混ぜた土または、市販の草花用培養土を使いましょう。
タラの芽用の土ができたら苗木を植えよう!
タラノキの苗木は、最初の1年間の管理が最も大切です。植えてからの1年間で収穫時のサイズが変わり、根の大きさも決まってきます。特に栄養分のある土作りと雑草取り、水やりなどがポイントです。
鉢植えの時期と方法
12~3月がタラノキの苗木を植える時期です。日当たりのよい場所で育てることがおいしいタラの芽を収穫するコツです。鉢植えは、8号以上の植木鉢に1株を目安に植えます。
- 鉢の底に軽石や鉢底石を敷く
- 土を鉢の1/3~1/2ほど入れる
- 鉢の中心に苗を置き、周りに土を入れる
- たっぷりと水やりをして苗を固定する
タラの芽のお手入れ!水やりの仕方、肥料の与え方は?
水の与え方
タラノキは乾燥を好みます。鉢植えやプランターでは、土の表面が乾いてから水やりをしましょう。夏は1日1回、冬は2~3日に1回くらいが目安です。
肥料の与え方
土に腐葉土を混ぜ込んでいたり、枯れ葉や枯れ木が積み重なってできた土地なら、3月と7月に完熟堆肥を根元にたっぷりとまくだけで十分大きく育ちます。
栄養が足りていないと感じたときは、3月と7月の同じタイミングで化成肥料を与えてください。
タラの芽が育ったら収穫しよう!収穫の時期と方法は?
収穫
タラノキの新芽が葉っぱになる前が、タラの芽の収穫目安です。清潔なハサミを使って、芽の茶色い付け根が少しついているくらいで切り取ります。
1年目の種根は1〜2個、2年目以降は3〜4個のタラの芽を残して、あとは全部収穫してください。残ったタラの芽は次の新芽を生やさせる枝に育てます。
収穫したタラの芽は、茶色の薄皮や枝の残った部分をナイフやカッターで落としてから、天ぷらなどにして楽しんでください。
また、タラの芽を収穫した枝を育てることはできないので、収穫後に処分します。
剪定
苗木を植えてから1〜2年間は収穫が剪定の代わりとなります。また、収穫とは別に苗木や苗木の周りから生えてきた枝が20cmまで生長したら、根元で切り落としましょう。
ふかしの枝となるメインの枝が3年目に生えてくるように剪定してください。
タラの芽の収穫量の増やす、ふかし栽培って?
苗木が育ってきたら収穫の一歩手前です。根から育てているなら2年目以降の苗木が対象になります。枝を細かく切り分けてタラの芽の収穫量を増やす「ふかし」を行いましょう。
切りそろえた枝の切り口は、上下とも斜めにしておきましょう。
- 15cmほどの長さで枝を切る
- 切った枝を水につけておく
- 枝を3頭分(5cm)にして、3本とも先端にわき芽が1つ残るようにする
- 発泡スチロールなどに枝を立てかけていく
- 5mmくらい容器に水を溜める
- 容器の上から段ボールなどを被せて光を遮る
- 水がなくなったら0.5〜1日かけて乾かし、また5mm水を入れる
- 2週間ほどたつと収穫できる
タラの芽の栽培で注意する病気や害虫は?
タラノキを栽培中は立ち枯れ病に注意してください。立ち枯れ病にかかると治すことが難しく、枝葉は変色し根は腐って枯れてしまいます。
近くの植物にまで二次被害が広がるので、病気にかかった植物の本体は土から抜き取りすぐに処分しましょう。
根が傷むと立ち枯れ病にかかりやすくなるので、手入れや掘り起こすときは丁寧に扱うことを心がけましょう。
タラの芽の増やし方!挿し木、根挿しの時期と方法は?
タラノキは、「根挿し」という繁殖方法で数を増やします。根挿しは、大きく育ったタラノキの根を切り分けて新しい苗木に育てる方法です。
根挿し以外ではほとんど発根しないタラノキは、大きくなった苗を株分けすることでしか苗木が作れません。
3月中旬~5月頃、市販の根を購入するか、自然のタラノキの根を用意します。雑草や病害虫に弱い植物なので、初めての方は地植えよりも育苗ポットで栽培したほうが安心です。
温度が管理できるなら、根の発芽温度である20度を維持してください。
- 根を5〜7cmに切り分ける
- 育苗ポットなら1/3〜2/3まで土を入れる
- 横向きに置いた根に2〜3cm土を被せる
- たっぷりと水やりをして日陰に置く
- 土が乾かないように水やりを続ける
- 30〜45日ほどで発芽したら、日当たりのよいところに移す
- 土の表面が乾いたら水を与えるようにする
- 枝葉が2~3本生えたら一回り大きな鉢か地面に植え替える
タラの芽の育て方で知っておきたいポイント3つ
1. 水はけと日当たりのよい環境
水はけのよい土に植え、日当たりのよい場所で育てることがタラノキを育てるポイントです。
2. 挿し木ではなく、根挿しで枝の数を増やす
タラノキは、「根挿し」という繁殖方法で数を増やします。根挿しは、大きく育ったタラノキの根を切り分けて新しい苗木に育てます。
根挿しのことを挿し木根以外ではほとんど発根しないタラノキは、大きくなった苗を株分けすることでしか苗木が作れません。
3. 毎年収穫したいなら根から育てる
早く収穫したいなら、1〜2ヶ月の期間で収穫できるようタラノキの枝から栽培をはじめます。毎年収穫を楽しみたいなら、2〜3年かけてじっくり育てましょう。
市販で「種根(しゅこん)」や「穂木」と表記されている根または苗木を購入して、タラの芽を生やす枝と次の苗木になる根を育てます。
ただし、根や苗木から育てると1年目の収穫量は少ないので注意してください。
タラの芽を栽培して春の訪れを味わおう
タラの芽は春の訪れを感じさせてくれる山菜です。タラノキが丈夫な樹木であることから、植物の栽培に慣れていない人でも気負わずに苗植えから収穫まで楽しめますよ。
いつもと違ったお酒のつまみがほしい方は、タラノキを栽培してみてはいかがでしょうか?自分で栽培した野菜や山菜が食卓にならぶと、いつもよりお酒やご飯が美味しく感じられるかもしれませんね。
更新日: 2018年06月01日
初回公開日: 2016年07月27日