彩どり鮮やかできれいな花を咲かせるデンドロビウム。1,000種以上の原種があり、丈夫で育てやすいのが特徴のランです。たくさん花を咲かせるため、開花した姿は豪華で見ごたえがあるのですが、育て方が少し難しい花でもあります。今回は、そんなデンドロビウムの代表種であるノビル系を中心とした育て方について、植え替えの時期や方法などをご紹介します。
デンドロビウム(デンドロビューム)はどんな花を咲かせるの?
デンドロビウムは、耐寒性があり、株を凍らせなければ枯死することのない丈夫なランです。多肉状の茎に節があり、その節々に花芽をつけ開花します。通常の開花期は春ですが、園芸店では冬に満開の株が販売されていることも。
「ノビル」という原種をもとに交雑育種が行われたので、ノビル系(ノビルタイプ)と呼ばれます。品種数が多く、葉が落ちてから花が咲くものと、葉をつけたまま花が咲くものがありますよ。
デンドロビウムの育て方!苗植えの時期と方法は?
発芽しにくく、種をまいて育てるのがむずかしい花なので、基本的には苗から育てます。3月下旬~5月頃の暖かくなった時期に苗を鉢に植え付けましょう。新芽が出てくる4月が植え付けに適していますよ。
鉢植え
1. なるべく小さめの素焼き鉢を用意する
2. 鉢底ネットを敷き、1/4~1/3ほどまで砕いた発泡スチロールなどを敷く
3. 新芽の側から根を覆うように水苔を1周巻く
4. 鉢の直径と同じか、1.2倍ほどの長さの水苔を巻く
5. 水苔を持って鉢に入れる
6. バルブが真っ直ぐに立ち、根元が鉢の縁から2cm低い位置になるよう調節する
7. 指で押しながら水苔を追加し、竹ベラなどで表面を整える
8. 植え替え後10日ほどは、直射日光を避けて明るい日陰で管理する
9. 秋頃に茎が伸びたら、支柱を立てて姿を整える
水苔の代わりにベラボン(ヤシガラ)やバークチップ(ウッドチップ)を使う場合
ベラボンは、使用前のアク抜きが必要です。1週間ほど水につけておき、毎日水を交換します。水の代わりに40度くらいのお湯を使うとより効果的です。ベラボン単体で育てる場合は、やや固めに押さえつけて植えるようにしましょう。
バークチップは、水苔に比べて乾きやすいので、根腐れの心配がなく、低コストというメリットがあります。
まずは、ふるいでゴミを取り除いたバークチップ(中粒)にベラボンを加えて、水もちをよくしましょう。バークチップの場合は、素焼き鉢よりもブラスチック鉢がおすすめです。
1. 株を取り出し、根の周りの水苔をほぐしてすべて取り除く
2. バークチップを入れて、株を入れて鉢の縁から1cmほど下までバークチップを足していく
3. 割り箸などで突きながらバークチップを追加し、すき間をなくしていく
4. 水をかけてバークチップを固定させる
5. 植え付け後2〜3週間は、直射日光を避けて明るい日陰で管理する
デンドロビウムの育て方!土作り、水やり、肥料の時期と方法
土作り
水苔かバークチップ、ベラボン、ヤシガラを土壌とします。素焼き鉢には水苔を、プラスチック鉢には、細かい洋ラン用パークやバークチップやベラボンを使うのがおすすめです。水苔やベラボンは単体で使えますが、バークチップはベラボンと混ぜて水もちを少し改善すると安心です。
水やり
春から秋の生育期は、土が乾いたら水をたっぷりあげましょう。デンドロビウムは乾燥気味に育てることで、根が伸びる性質があるので、水の与えすぎには気をつけてください。10月からは少しずつ乾かし気味にして、バルブがやせてくる程度まで水やりを減らします。
花芽が見えはじめたら、再び水やりを多めにしましょう。ただし、どの時期も受け皿に水はためず、こまめに捨てるのを忘れないでください。
肥料
4~6月の間、月に1~2回ほど、発酵油かすに骨粉を混ぜたものを置き肥として根元に施します。または、液体肥料を週に1回程度与えてください。8月以降の肥料は必要ありません。肥料を与えすぎると、花芽がつきにくくなってしまいます。
デンドロビウムの植え替えの時期と方法は?
3月下旬~5月頃が植え替えに合った時期です。2〜3年に1度を目安に植え替えを行います。水や肥料の与えすぎでバルブや根が傷みはじめたら、植え替えや植え付けから2年未満でも、すぐに植え替えを行ってください。
花が咲き終わった後が植え替えのタイミングとしておすすめですが、開花期が遅くなった場合は、早めに花を切り落としてから植え替えをしましょう。植え替えの際は、水苔などの土壌も交換してください。
植え替えの方法
- なるべく小さめの素焼き鉢を用意する
- 新芽が伸びる側の縁にピンセットを差し込む
- バルブを持って株を取り出す
- 傷んだ根を取り除く
- 株はほぐさず、長い根も切らない
- 新しい水苔を根に巻き、鉢の内側に添って螺旋状に回しながら植える
デンドロビウムの剪定は必要?
一度花をつけると、その茎から花はもう咲きません。ただし、開花後1年くらいは茎の内部に栄養を蓄えており、新芽の生長に必要なので茎は切らないように注意してください。
開花後2年目以降、弱々しくて黄色に変色した古い茎を、植え替えのときに地面をはっている茎あたりから切り取りましょう。
花がら摘み
枯れてしまった花は、気づいたときに摘み取っていきましょう。しっかりと花茎から取らないと、残った部分から余分に発根して、株が弱ります。
高芽処理
高芽は株の生長の妨げとなりますが、増やす手段にもなるので、ある程度根が出てくるまで待ちます。4〜6月頃、葉が2〜3枚ついて根が出たら切り取って水苔などに植え付ければ増やすことができますよ。増やすつもりがなければ、根が出る前にナイフや指で取り除きましょう。
デンドロビウムの増やし方は?
デンドロビウムは、株分け、高芽取り、茎伏せで数を増やします。ただし、これらの作業は、病気の可能性を高め、根を傷つけて本体を枯らす可能性があります。園芸家や専門家でない限りあまり行われないので、その点に注意して取り組んでくださいね。
3月下旬~4月頃、鉢の中の状態がよくない、株が古くなりすぎて明らかに弱ってきている、鉢が大きすぎるなどの場合は、株分けによって改善を図ります。
株分け
植え替えや植え付けと合わせて行います。なるべく根を痛めないように気をつけましょう。清潔なハサミやカッターで、上の方を切り分け、根の方を丁寧に手で裂くように分けます。その後の植え付けは上述したとおりです。
高芽取り、茎伏せ
高芽取りや茎伏せは、春から秋の生育期の間が最適です。茎を3~5本ほど切り取りましょう。小さな鉢に水苔を入れ、茎を植え付けて発根を待ちます。葉が3~4枚つけいた頃、茎の途中から出てくる芽を切り取って、周りを水苔で包み、小さな鉢に植えて育ててください。
茎伏せは、後ろの茎を3節に切って、水苔の上に挿して、通常の株と同じように育てましょう。4ヶ月ほどで、新しい芽が出てきます。
デンドロビウムの育て方で注意する病気や害虫は?
ナメクジ、カイガラムシ
風通しが悪く、湿った場所にはナメクジが発生します。ナメクジは新芽や花芽を食べるので、見つけたらすぐに取り除くか殺虫剤を散布してください。新芽が出る春と、冬から春の花芽が生長する時期は、特に注意しましょう。
カイガラムシは1年中発生します。茎の汁を吸って株を弱らせるので、成虫になる前に殺虫剤をまくか、成虫になった後にブラシでこすり落としましょう。
デンドロビウム(デンドロビューム)の育て方のポイントは?
デンドロビウムは、水をたくさん与える時期と全く水を与えない時期を分け、一定期間の寒さにあてることが花を咲かせるポイントになります。原産地と似た温度や湿度と水分量があって初めて花を咲かすため、細かな手入れが必要です。
特に、ノビル系が育つ環境では、雨季、低温の乾季を過ごした後に花が咲くので、気温に合わせた水やりも大切になってきます。3月下旬~11月上旬までは外で管理し、冬の寒い間は室内の日当たりのよい場所で育てるのがおすすめ。
まずは、1年を通してたくさん日光をあて、5月初旬~9月初旬までは少し遮光をして、葉焼けを起こさないように気をつけましょう。
デンドロビウムの育て方は難しいけど…
デンドロビウムのように、山岳地で育つ花の育生は少し手間と知識が必要になります。特に、継続して園芸やガーデニングを楽しむには、花が枯れた後の管理も大切です。
とても美しい花を楽しませてくれるデンドロビウムは育て方が難しいのですが、花を咲かせた姿を見ると報われるはず。デンドロビウムを育てて、華やかなガーデニングライフを楽しんでくださいね。
更新日: 2023年04月20日
初回公開日: 2016年01月10日