壁面やグリーンカーテン、グラウンドカバーなどで用いられるつる性植物。今回は種類や特徴、つる性植物を植えるときの注意点などをおさえましょう。
また切り花に巻き付けるなどつる性植物のおしゃれな使い方例についても少しご紹介していますので、アイデアの参考にしてみてください。
つる性植物とは?
つる性植物とはつるを伸ばして、他の樹木やオブジェクトなどに絡み付き、それらを支えにすることで、上へ上へと茎を伸ばしていく植物のことです。
日本語では蔓草(つるくさ、まんそう)、葛(かずら・かつら)などと呼ばれています。
つる性植物の特徴
つる性植物の特徴に大きく分けて3つの性質に分かれています。
それは
1.自らの茎をらせん状に絡ませながら伸びていく
2.枝の部分に生えた小さな根を吸盤のように張り付かせながら上へ上へと上がっていく
3.巻きひげと呼ばれる茎の変化した部位を絡ませながら上へ伸びていく
1.の性質をもつ植物には、皆さんもよくご存じであるでしょう「アサガオ」などが挙げられます。ちなみにアサガオの茎をよく観察すると左巻きになっていますが、つる性植物の
ほとんどは、種類によって、右巻きか左巻きのどちらかになると、遺伝的に決まっています。
巻き方向が左右どちらかになる理由は、植物の生育条件や生育場所などには影響されないものです。
2.の性質をもつ植物には、建物の壁面などのカバーなどにも使われる「アイビー」や「ノウゼンカズラ」、「クレマチス」などがあります。アイビーなどの小さな根は吸盤として張りつきます。
そのため、植物自体が太く大きくなると、壁面を傷める原因にもなりますので、カバーグリーンとして利用するなどでない場合は、早めに取り除くことをおすすめします。
最後の3の性質では、キュウリやゴーヤーなどのほか、スイトピーなどのマメ科の植物も挙げられます。自らの茎を巻き付けるタイプとは違い、細いひげを巻き付けるので、生育する場合は、園芸用支柱や、育成ネットなどを用いて、しっかりと誘引させる必要があります。
つる性植物の種類
上記の特徴と合わせてつる性の植物にはいくつかの種類があることをご紹介していますが、再度つる性植物の種類をまとめてみますと、
1.「支柱やオベリスクなどに絡ませるもの」
2.「壁面に這わせるもの」
3.「紐やネットに絡ませるもの」などに分類することができます。
まず、支柱やオベリスクなど、人工的なオブジェに絡ませて育てる種類のつる性植物は、「モッコウバラ」、「ハゴロモジャスミン」「クレマチス」、「トケイソウ」などがあります。
このように物体に巻き付くタイプのものは、巻き戻しもできるので、生長途中に好みの形に仕立てることができます。巻き付きが緩い場合や、人工的に仕立てる場合は、麻ひもなど柔らかめの紐で誘引すると枝を傷めずに済みます。
このうち、「モッコウバラ」と「ハゴロモジャスミン」については、常緑草なので、1年を通して葉が茂っています。一方クレマチスやトケイソウなどは、落葉種なので、秋になると落葉し、苗自体が休眠期に入ります。
支柱等に巻き付いて伸びていく植物が適しています。巻きつくタイプのものは巻き戻しができるので、好みの形に仕立てることができます。仕立てる時や巻きつきがあまい枝は、枝を傷めないよう麻紐等柔らかい紐で誘引しましょう。
最後に3の紐やネットに絡ませるものは、支柱やオベリスクなどと同様に巻き付くタイプですが、こちらは茎ではなく、茎から伸ばした髭状のつるで巻き付くタイプなので、ネットに絡ませると適度なすき間を作りながら、自然なグリーンカーテンを作ることができます。
また花や食用になる実をつける植物も多いので、夏場の家庭菜園用で育てる植物としてもおすすめです。
つる性植物の注意点
ここまでで、つる性植物の特徴や種類についてご紹介しましたが、つる性植物は、植え方を間違えると、お庭をうっそうと茂らせてしまったり、日当たりが悪くなってしまったりすることがあるので注意しましょう。
壁面を傷つける恐れがある
ヘデラなどが壁に絡んだ壁面緑化に憧れる方もいらっしゃるかもしれません。しかしヘデラなどツタ類は吸盤状の小さな根は外壁に根「気根」が直接付着するため、植物が大きく育つにつれて張り付いた根をはがすのが大変になり、外壁や外構を傷めることがあります。
仮にヘデラを一度取り除いたとしても、一部分でも気根が残っていると、そこから水分を吸収し、大きくなっていきます。気根をはがすと跡が残りやすく、拭き付け剤と一緒に剥がれてしまうこともしばしばです。
そうなると、剥がした跡を直す手間もかかりますし、ご近所の壁に伸びていったり、根っこが家の中に入り込んで来たりすることも考えられますので、植え付け場所は慎重に選ばなければいけません。また植え付け前に壁面緑化用の壁に変えるなどの工夫も要します。安易な考えで、壁面緑化することだけは避けましょう。
蒸れに注意する
つる性植物を密に植えていると葉と葉のすき間がなくなり、植物自体が蒸れやすくなります。
そのため、うどんこ病やアブラムシなどが発生した場合に蔓延しやすく、病害虫に侵された苗を放っておくと全滅しかねません。そこで、伸びすぎた葉や茎は定期的にすかしたり、剪定で切り落としたりするなどこまめな管理が必要です。
つる性植物のおすすめの使い方
つる性植物の使い方の一つに「切り花」や「フラワーアレンジメント(室内装飾)」があります。常緑のヘデラやモッコウバラなどは切り花の周りに巻き付けることで、メインの花を引き立てたり、お花にグリーンの葉を沿えるなどナチュラルな雰囲気づくりに重要な役割を果たしてくれます。つる性植物の一般的な使い方としては以下のようなものがあります。
・クレマチス…フラワーアレンジメント、花束、ブーケ、フラワーリースなど
・リキュウソウ…フラワーアレンジメント、生け込み
・ハートカズラ…フラワーアレンジ面と、ブーケやリースなど
・グリーンネックレス…フラワーアレンジメント、ブーケ、寄せ植え、テラリウム
などつる性植物の雰囲気や特性に合わせたアレンジ方法があります。
つる性植物を育てて見よう
つる性植物でも小型種のヘデラなどは壁面やグラウンドカバー以外にもハンギングバスケットに植えてベランダや軒先に吊るすなど観葉植物のようにして楽しめます。
広いお庭や壁面があれば一度は植えて育ててみたいつる性植物。つる性植物の種類や特徴をおさえた上で植え付け、できるだけ長く育てられるような環境づくりを整えていきたいですね。
更新日: 2020年07月07日
初回公開日: 2020年07月07日