マングローブと聞くと、東南アジアやアフリカの熱帯雨林を思い浮かべるのではないでしょうか?まさに、マングローブとは特定の植物を指す言葉ではなく、湿地帯に生息する樹木の総称なんです。どんな植物が植えられているのかは検討もつきません。そこで今回は、マングローブとは何なのか、植えられている植物の種類、育て方についてご紹介します。
マングローブ(紅樹林)とは?塩性植物って何?
マングローブとは、熱帯や亜熱帯の、海水と淡水が混ざり合う「汽水」に生える植物の総称です。つまり、マングローブという品種があるわけではありません。日本では、沖縄県や鹿児島県に自生していますよ。
マングローブのように、塩分濃度の高い水の中でも生き延びる植物を「塩性植物」といいます。塩生植物の特徴は、「浸透圧」と「イオン特異」の2つのストレスに耐えられる点です。具体的には、体内の水の濃度を高めて塩水を吸収し、余分な塩分を排出することができます。次に、「浸透圧」と「イオン特異」についてご説明します。
浸透圧
「水切れ」が起こる現象で、実は、肥料焼けも同じ現象が起こっています。塩分の濃い水と普通の水を隣合わせると、普通の水が塩分の濃い水を薄めようと移動します。これを浸透圧といい、根の中の水分が、外の水を薄めようと移動することで根が「水切れ」状態になり、葉や茎が弱ります。
イオン特異
植物の中に塩分(ナトリウム)が入ると、酸素の働きを邪魔することがわかっています。つまり、塩分を吐き出す仕組みがなければ、植物は弱り、枯れてしまいます。
その点マングローブの樹木は、「葉っぱから塩分を排出」「根が塩分をろ過」「塩分が古い葉に集まって落葉」させるといった、何かしらの塩分を外に出す仕組みを持っています。ただ、その詳しいメカニズムについては解明されていません。
マングローブ(紅樹林)の特殊な根っこ
マングローブの特徴は、変わった形をした地上に出ている「呼吸根」といわれる根っこです。これによって、満潮のときでも完全に根が水に浸からず、酸素を吸収することができます。また、ぬかるみやすい泥土でも、根によって体を安定させることができます。
根の種類
● 支柱根(しちゅうこん):タコのように伸びている根
● 板根(ばんこん):板のようなものが波打つように地面から突き出している根
● 筍根(じゅんこん):地面から筍のような根っこが突き出している根
● 屈曲膝根(くっきょくしっこん):曲がりくねってひざのような形をした根
マングローブ(紅樹林)に植えられている植物の種類は?
全体で、50~120種ほどがマングローブに生息しています。ヒルギ科、クマツヅラ科、ハマザクロ科の3科に属する樹木をマングローブと呼ぶことが多いのですが、他にも、シクンシ科、ヤブコウジ科、イソマツ科、センダン科などのものもあります。
日本国内では、ヤエヤマヒルギ・オヒルギ・メヒルギ・ヒルギダマシ・ハマザクロ・ヒルギモドキ・ニッパヤシの5科7種が主な構成種です。
マングローブ(紅樹林)の育て方のポイントは?
高温多湿の環境で育つ樹木が多く、寒さに弱い傾向があるので、15度以上の気温で育てるのがよいですよ。また、土の状態は常に湿った状態を保つようにします。5月~10月中旬は屋外の日当たりのよい場所で、10月下旬~4月は15度以上の日当たりのよい室内で管理してください。
マングローブの育つ環境は、湿地
マングローブ(紅樹林)の種まきや苗植えの時期と方法は?
マングローブの種まきや植え付けは、気温と湿度が保てるようであれば1年中行うことができます。ただ、寒さに弱いので、真冬は植え付けしない方が無難です。また、気温を保てない屋外での地植えはできません。
種まき
1. 1.5Lペットボトルを半分に切り取り、容器を作る
2. 容器の1/3ほど川砂を入れ、2/3ほど水を入れる
3. 上下を間違えないように注意して種を容器に入れる
4. 日当たりがよくあたたかい場所に置き、水を随時腐らないよう取り替える
5. 2週間ほどで芽が出たら、鉢植えか水耕栽培する
水耕栽培(ハイドロカルチャー)
1. 深さのある容器に根腐れ防止剤を入れる
2. ハイドロボールを入れる
3. マングローブを1/3ほどハイドロボールに植えこむ
4. ハイドロボールの表面まで水を入れる
5. 乾燥させないように水の高さをキープする
鉢植え
1. 深めの穴の開いていない鉢を用意する
2. 鉢に川砂を入れる
3. 1/3ほど埋まるように苗を植え付ける
4. 茎が半分浸かるくらい水を入れ、日向で管理する
マングローブ(紅樹林)の土作り、水やり、肥料の与え方は?
土作り
清潔な川砂や砂利を用意してください。
水やり
根が常に水に浸かっている状態を維持しましょう。根腐れする心配はありません。乾燥しすぎると葉を落とすので、注意してください。エアコンで乾燥しやすい時期は、水やりと同時に霧吹きで葉に水を吹きかけます。
肥料の与え方
肥料は必要ありません。与えると、むしろ生育が悪くなって枯れることがあります。
マングローブ(紅樹林)の剪定の時期と方法は?
1mに生長するまで5~10年かかるくらい生育がゆっくりなので、ほとんど剪定をする必要はありません。長く伸びすぎた枝や幹だけを切り詰めていきましょう。木質化後であればどこからでも芽吹くようになるので、切る場所も神経質にならなくて大丈夫です。
マングローブ(紅樹林)の植え替え時期と方法は?
植え替えによるストレスで枯れてしまうことがあります。できるだけ植え替えはせず、そのまま育てるのがよいでしょう。ただし、根詰まりを起こすようであれば気候の穏やかな5~6月頃に、根を傷つけないよう気をつけながら、1回り大きな鉢へ植え替えます。
マングローブの増やし方!挿し木の時期と方法は?
種まきか挿し木で増やすことができます。種が実ったら、植え付け時と同じ手順で育てていきましょう。挿し木は、気温と湿度が確保できていればいつ行ってもかまいません。
挿し木
1. 枝を10~15cmの長さに切り取る
2. 川砂を育苗ポットやペットボトルの容器に入れる
3. 枝を土に挿す
4. 土が乾燥しないよう毎日水やりをしながら、15度以上の明るい場所で管理する
5. 2週間ほどで新しい芽が生えたら、鉢に植え替える
マングローブ(紅樹林)の栽培で注意する病気や害虫は?
マングローブは病気や害虫の心配はほとんどありません。ただ、春から秋にかけてカイガラムシがつくことがあります。カイガラムシに寄生されると、栄養が吸われて株が弱ってしまいます。見つけたらすぐに薬剤を散布するか、ブラシなどを使って株から引きはがしてください。
マングローブ(紅樹林)といえばヤエヤマヒルギ
近年、マングローブには海の水質浄化を果たす役割や、地球温暖化とかかわりがあることがわかってきました。また、津波を軽減する効果もあるとされます。そのため、東南アジアを中心に破壊されたマングローブを再生する動きが高まっています。日本では、沖縄県にある漫湖でマングローブばやしが植樹されています。
最近では、市場によく出回る「ヤエヤマヒルギ」が人気を集めているようです。あたたかい環境であれば、ぜひ、マングローブの栽培にチャレンジしてみてくださいね。
更新日: 2015年11月14日
初回公開日: 2015年11月14日