丈夫なツルを伸ばして生長し、見事な花を咲かせるクレマチス。「ツル性植物の女王」という別名をもち、世界中の人々に愛されています。ただ、種類が豊富でそれぞれ花の咲く時期や育て方もちがうので、注意しなければなりません。
今回は、種類ごとの違いを交えながら、剪定や挿し木、植え替えの時期や方法といったクレマチスの育て方をご紹介します。
クレマチスとは?どんな種類があるの?
クレマチスとは、北半球の各国に野生で生えている植物です。樹木など、近くのものにツルを絡ませて生長する「ツル性植物」に分類されます。
クレイマチスは大きい物だと5m以上になることから、長く栽培しているものはアーチ状に仕立てて楽しまれますよ。
日本原産の「カザグルマ」、中国原産の「テッセン」、欧米原産の「インテグリフォリア」などいくつかの原種を元に品種改良が進められ、今では230以上の品種があります。
クレマチスの育て方で必要なものは?
- クレマチスの苗(ポット苗)
- 苗よりも一回り大きな鉢
- クレマチス専用培養土
- 鉢底ネット
- 鉢底石
- あんどん仕立て用の支柱
はじめてクレマチスを栽培するときは、様々なグッズを準備します。中でも忘れてはいけないのが「あんどん仕立て用の支柱」です。
数本の支柱を輪っかで囲ったもので、上の写真のように朝顔の鉢に設置されているのを見かけたことがあるのではないでしょうか?
クレマチスは苗の状態だとツルはほとんど伸びておらず、他の植物の苗と見た目は変わりません。しかし、育て続けていくとツルが四方八方に伸びて収集がつかなくなってしまいます。
あんどん仕立て用の支柱にツルを絡ませれば、植物全体に日が当たり、美しい花をたくさん咲かせますよ。
クレマチスの苗植えの時期は種類によって違う?
クレマチスは花の咲かせ方によって「旧枝咲き」「新枝咲き」「新旧枝咲き」の3つの種類に分けられています。それぞれ、花の芽をつける場所や時期に違いがあるため、苗を植える時期も少しちがいます。苗を植えるときは、どの種類なのかお店の人に確認しておきましょう。
以下に、それぞれの種類の特徴と、苗植えの時期をご紹介します。また、代表的な品種は他の記事でもご紹介していますので、参考にしてみてくださいね。
枝咲き
新しく伸びたツルからは芽が出ず、前年に生えたツルから花を咲かせるタイプです。生長期を迎える直前の2〜3月が苗を植えるのに適した時期ですよ。
枝咲き
新しく生えたツルからしか花を咲かせないタイプです。1〜3月に苗を植えると、春から新しい芽が育ち、夏にはたくさんの花を咲かせます。
新旧枝咲き
旧枝咲きと新枝咲き両方の性質を併せ持ったタイプで、どんなツルにも花を咲かせます。1月中旬〜3月中旬が苗植えの時期です。
クレマチスの苗植えの方法は?
クレマチスの種類がわかり、準備も整ったら、いよいよ苗植えを以下の手順ですすめていきます。
- 鉢の底穴を鉢底ネットで覆う
- 鉢の底面に鉢底石を敷き詰める
- 鉢の1/3ほど土を入れる
- 苗をポットから出し、根に絡んだ土を軽くほぐして落とす
- 鉢の中心に苗を置き、1つ目の節が埋まるくらいに苗の高さを調節する
(※上記イラスト参照) - 苗の周りに土を入れていく
- 土の表面を割り箸などでつついて、隙間がないか確認する
- 鉢の底から流れ出るくらいたっぷりと水やりをする
- あんどん支柱を鉢の円周に合わせて立てる
クレマチスの鉢の管理方法は?
クレマチスの苗植えが終わったら、育ちやすい場所に置き、水と肥料を与えながら管理していきましょう。これらの方法や時期はどの種類も共通なので、むずかしくありませんよ。きちんと環境が整っていれば、翌年には花を咲かせるようになります。
鉢はよく日の当たる場所に置く
日光が当たらないと、弱々しく育って、翌年に花を咲かせないことがあります。1日最低4〜5時間は日光に当たる場所に置きましょう。ベランダや東向きの窓辺に置くのがおすすめです。
土の表面が乾いたら水やりをする
水分が足りていないと、クレマチスは枯れてしまいます。土の表面が乾いて白くなってきたら、たっぷりと水やりをしてください。季節ごとに水を吸う力が変わるので、何日おきと決めず、土をチェックする習慣をつけるとよいですよ。
ただし、受け皿に水がたまったままにしておくと病気や害虫を引き寄せる原因となるので、水やり後に必ず捨てるようにしてくださいね。
10月と3月に肥料を与える
クレマチスは長くツルを伸ばすためにたくさんの肥料を必要とします。10月と3月になったら「緩行性化成肥料」を鉢の縁に置きます。
緩行性化成肥料とはじわじわと肥料成分が溶け出し、長く効果が続く固形の化学肥料のことです。クレマチス専用のものも販売されていますよ。そして、花の芽が出てきたら開花まで7〜10日に液体肥料を水やり代わりに与えると、より元気になります。
クレマチスの育て方で注意する病害虫は?
クレマチスは決して弱い植物ではありませんが、夏の乾燥した時期になると「うどんこ病」にかかりやすくなります。また、新芽やツルにくっついて栄養を吸い取る「アブラムシ」や葉っぱを食べてしまう「ナメクジ」といった害虫にも注意が必要です。
うどん粉病が発生すると葉っぱや茎にうどんこをまぶしたような白い斑点がたくさん現れるので、すぐに気づきます。初期であれば発病した箇所を切り落とし、炭素カリウムを主成分とした薬剤を散布して駆除できます。
ただ、被害が進んでしまったものは回復しないので、土から抜き取って処分するほかありません。早めの対処が肝心です。
アブラムシは春〜秋、ナメクジはジメジメした初夏に発生する害虫です。いずれもクレマチスを枯れさせる原因となるので、見つけたら専用の殺虫剤で駆除していきましょう。
クレマチスのツルを誘引する時期と方法は?
クレマチスのようなツル性植物は、まめに手入れをしないとあらゆる方向に向かって伸びてしまいます。形が乱れるだけでなく、葉っぱやツルへ均等に日光があたらず弱々しく育ち、病気や害虫の被害にあうことも。
そのため、柵やフェンス、支柱などを建ててツルを絡ませる「誘引(ゆういん)」は欠かせない作業の1つです。
クレマチスの鉢植えの場合は、苗植えのときに設置したあんどん支柱にツルを誘引します。「旧枝咲き」の品種は通年、「新枝咲き」「新旧枝咲き」は、3~10月の間に行ってください。作業としては、あんどん仕立て用の支柱に絡ませるだけと簡単です。
あんどん仕立て用の支柱にツルがうまく絡ませられないときは、市販されている麻ヒモや誘引テープでゆるく結びつけてあげるとよいですよ。いろいろな方向に誘引せず、方向を決めてツルを絡ませていくのがコツです。
誘引がうまくできると、花の芽も生えやすくなり、開花期には美しい花を楽しめますよ。
クレマチスは種類によって剪定の時期や方法が違うの?
長く伸びたツルを誘引するだけでなく、カットして植物全体の形を整える「剪定(せんてい)」もクレマチスの栽培に必要な作業です。
種類ごとに花を咲かせる場所が異なるので、ツルを剪定する時期や方法も変わってきます。
間違った時期にツルを切りそろえてしまうと、花の芽を切り取ってしまったりダメージを与えたりするので、クレマチスの種類を確認したら、それぞれにあった方法で剪定を進めてください。
「旧枝咲き」の剪定方法
旧枝咲きは、花が咲く前の年のツルを残しておかないと、翌年花が咲かなくなってしまう種類です。そのため、古いツルを残すように剪定をします。
4〜5月の花が咲き終わった後はまだ新しい花の芽ができておらず、剪定に適した時期です。
花の下3〜5cmのところでツルを切りとります。このとき、長めにツルを切ってしまうと、翌年の花が咲かなくなるので注意してください。
「新枝咲き」の剪定方法
新枝咲きの剪定時期は、2〜3月と花が咲き終わった後の5〜8月です。
冬の剪定は、生え際から2〜3節(10〜15cm)上のところでバッサリとツルを切り落とします。これによって新しいツルが生え、春〜秋にかけて花を咲かせるようになります。そして、全体の7〜8割ほどの花が咲き終わったら、ツルの先を3〜10cm切りそろえて形を整えます。
新旧枝咲き」の剪定方法
新旧枝咲きのクレマチスは前の年に伸びたツルにも、新しく生えたツルにも花を咲かせる丈夫なものが多いです。苗植えから2年ほどたって十分生長したら、春と秋に剪定していきましょう。
まずは2〜3月に、ツルの先端を3〜5cmほど切りそろえます。そして5〜8月になって花が7〜8割ほど咲き終わったら、冬のときと同様にツルを3〜5cmほど切ります。
クレマチスの鉢植えを植え替える時期と方法は?
クレマチスを鉢植えで育てていると、数年で鉢の中いっぱいに根が周り、根詰まりを起こして枯れてしまいます。鉢の底穴から根が飛び出ている、土に水がなかなか染み込まないなどが根詰まりの兆候です。
根詰まりを防ぐために、クレマチスの鉢植えは2〜3年ごとに一回り大きな鉢へ植え替えをします。時期や手順は苗の植え方でご紹介したものと同じです。
クレマチスの挿し木での増やし方は?
長く育てているクレマチスに愛着が湧いてきたら、同じものを増やして楽しむこともできます。その一番簡単な方法が「挿し木」。土に挿して根を生やしたツルを、新たな苗として育てる方法です。
いろいろなところにお気に入りのクレマチスを飾りたい!という方はチャレンジしてみてください。ただ、絶対に成功するわけではないので、何本かのツルを用意して行うのがおすすめです。
- 5〜6月に今年伸びた新しいツルの堅い部分を10~15cmほど切り取る
- 先端についている葉っぱを2〜3枚残し、他を切り落とす
- 切り口にルートンなど発根剤をつける
- 赤玉土(小粒)や鹿沼土など清潔な土を鉢へ入れる
- 土に割り箸などで穴を空ける
- ツルを5〜8cmほど土に埋める
- たっぷりと水やりをする
- 土が乾かないよう水やりをしながら、うっすらと日が当たる場所で管理する
- 新しい芽と根が生えて苗に育ったら、それぞれを鉢へ植え替える
種類ごとの育て方の違いを知ればクレマチスがもっと好きになる
クレマチスは、きちんとツルを伸ばせば、毎年きれいな花を咲かせてくれる植物です。そこで大切になってくるのが、育てているクレマチスの種類を知ることです。最初はむずかしそうに感じるかもしれますが、種類さえおさえてしまえばあとは特にむずかしい作業はありません。
また、ツル性植物を育てるうえで基本となる作業がすべてつまっているので、ほかの植物への応用がきくようにもなりますよ。ガーデニングの入り口にクレマチスはぴったりです。
更新日: 2021年05月26日
初回公開日: 2015年06月23日