香りのよさを活かしてさまざまな加工品に使われるハーブ。バジルやレモングラス、パセリ、ミントなど種類も豊富で、葉や茎などを収穫して料理に使ったり、ポプリやオイルに使ったりと楽しみ方もたくさんありますね。近年は家庭菜園でよく育てられているハーブ全般の育て方について、種や苗から栽培する方法をご紹介します。
ハーブってどんな植物?
ハーブとは、「香りがあって人の役に立つ植物の総称」です。ただ、これは日本での一般的な解釈で、海外では、香りに関係なく、たんに人に有用な植物のことだと考えられています。この広い意味で定義すると、種類は2万以上にのぼるといわれています。
アロマや食用として使われるイメージが強いですが、塗り薬、化粧品など様々な用途で人々の生活に浸透しています。
多様なハーブのなかには毒をもつ種類もあるので、育てる植物についてはあらかじめ調べておくと安心ですよ。
初心者なら室内で苗からハーブを育ててみよう
- 市販のハーブ用培養土
- 各ハーブの苗
- 鉢やプランター
- 鉢底ネット
- 鉢底石や軽石
- 細い棒
- 軍手
- ビニールシートや新聞紙
初心者で食用のハーブを育てたいなら、苗を購入し、鉢やプランターで育てるのがおすすめです。
苗だとあらかじめ芽が出た状態まで育てられているので、収穫までの手間が少なくすみます。また、鉢やプランターであれば屋内外の移動や温度調整しやすいメリットもあります。
土は市販のハーブ用培養土で問題ありません。多くの品種はこれを使って育てられますよ。肥料も混ぜられているので手軽に取り組めます。
ハーブを栽培する時期はいつ?
ハーブの栽培は種類によって時期もやり方もまちまち。一年を通じて収穫できるものもあれば、季節が限定されるものもあります。
ここでは、ハーブ全般に通じる大まかな流れをご紹介します。
■ ハーブを植える手順
- 作業をするスペースに新聞紙やビニールシートを敷く
- 鉢の底穴に鉢底ネットと軽石を敷く
- その上に培養土を鉢の1/3ほどまで入れる
- 苗を取り出し、根を傷めない程度に手でほぐして土を落とす
- ほぐれたら根を広げながら、新しい鉢の中心に置く
- 鉢の縁から2〜3cmほど下のところまで土を入れる
- 細い棒で土をつつき、根の隙間にまで土が入っていることを確認する
- 鉢の底から流れ出るくらいたっぷりと水を与える
■ 年間スケジュール
2〜4月:苗を植える
5〜6月:生長した枝や葉を少し摘み取る
7〜8月:梅雨など湿気で枯れた葉を摘み取る
9〜10月:収穫する
11〜1月:必要があれば植え替えをする
ハーブの日々の手入れの方法。水やりや肥料の与え方は?
多くのハーブは繁殖率が高く、手入れもそこまで難しくありません。基本をしっかりとおさえておきましょう。
水のやり方
土の表面が白く乾いてきたら、たっぷりと水を与えます。こまめに水やりをしすぎると、土の中がムレた状態が続いて根が腐る(根腐れ)ので注意してください。
また、花や葉っぱに水がかかると傷むので、根元に水を流しこむようにしましょう。
肥料の与え方
肥料を控えめにすると香りがよく育ちます。3〜7月は生長が活発な時期ですが、もし生育が悪いと感じたら、液体肥料を与えます。
肥料の成分は、葉を作るのに貢献する「チッ素」が多く含まれたものが望ましいです。
葉の摘み方(摘心)
高さが10~20cmほどになったら、若い芽を先端から摘み取ります。こうすることで、栄養が分散し、さらに新しい芽が左右に生えて、結果的に収穫量を増やすことができます。
また、花が咲くと栄養が花へと流れてしまい、葉っぱが茂らなくなってしまいます。つぼみがついたら取るようにしてください。
ハーブはどうやって収穫する?種も収穫できる?
日々の手入れがうまくいき、順調に生長したらいよいよ収穫です。ハーブは数年にわたって収穫できるものが多く、また、数ヶ月にわたって収穫できるものも多いので、収穫量は常に調節しましょう。
葉を7〜8枚ほど残しながら摘み取るのがポイントですよ。今後の生長に必要な栄養を確保するため、光合成できる葉を残しておきましょう。
イタリアンパセリやバジルなど、種類によっては種を収穫することもできます。後ほど種から育てる方法(実生)もご紹介するので、興味があれば種をとっておいてチャレンジしてみてください。
ハーブの栽培で気をつける病気や害虫は?
植物を育てていれば病害虫の被害には一度は悩まされるものです。ハーブも同様に病害虫の被害にあうことがあります。ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。
アブラムシ
新芽や茎葉につきやすい害虫で、針を挿して栄養を吸い取り、植物を弱らせます。また、アブラムシの排泄物は、さらに別の病気、すす病を誘発します。大量に発生するので、見つけたらすぐに歯ブラシなどでこすり落としましょう。
ハダニ
梅雨など高温多湿の時期にあらわれる害虫で、葉裏に寄生して傷をつけて植物を弱らせます。水に弱いので、葉の表裏に霧吹きなどで水をかけると予防になりますよ。
これらの害虫を撃退するには薬剤を散布する方法もあります。しかし、収穫後に食材としてハーブを使用する予定であれば、できるだけ薬剤を使わないで取り除くのがよいでしょう。
また、病気とまではいきませんが、通気性が悪いと葉の色が黄色などに変色し、枯れることがあります。切り取って新しい芽が出てくるのを待つとよいですよ。
ハーブは植え替えが必要?
ハーブの生長はとても早く、すぐに根が密集して鉢の中で詰まってしまいます。そうすると、栄養が全体に行き渡らなくて枯れてしまうことも。これを「根詰まり」といいます。1~2年に1回、春か秋に植え替えを行って、大きい鉢へ交換してあげてください。方法は植える手順と同様です。
このときに、草のように地をはって生長するタイプのハーブは、生長を抑えるため、根を半分ほど切ってしまってもかまいません。木のように縦に生長するタイプのハーブは、中心の太い根を切らないように注意してください。
ハーブは自分で増やせる!増やし方は?
慣れてくると「ハーブの収穫量を増やしたい!」と考える方も多くなります。2つの方法で増やすことができ、1つは植物の一部を切り取って土に挿す「挿し木」、もう1つは根や茎ごと植物を分割する「株分け」という方法です。いずれも4~5月か、9~10月の気候が穏やかな時期が適しています。それぞれの手順は次のとおりです
挿し木
- 茎や枝、葉を切り取る。茎や枝であれば先端から6~10cmほどで切り取る
- その切り口を斜めにカットする
- 1時間ほど切り口を水につける
- 挿し木用培養土に挿し、たっぷり水を与える
- 風の当たらない明るい日陰で、土が乾かないよう水やりをして管理する
- 根が十分に生えたら、鉢や地面に植え替える
株分け
- 根を傷めないようにハーブを掘り上げる
- 古い土を半分以上落とす
- 茎と根をつかんで2~3個に分ける(難しい場合はハサミやナイフで切り分ける)
- 黒ずんでいる傷んだ古い根を切り落とす
- 新しい土へ植え替える
- たっぷり水を与える
手軽に育てられるハーブを育ててみよう
ハーブにはたくさんの種類があり、お茶や料理の香辛料、ポプリ、入浴剤など様々な使い方で楽しむことができます。
日々の手入れ、とくに水やりの頻度に注意しながら育てれば、比較的簡単に育てられるものが多いです。自分好みのハーブを見つけて、栽培をはじめてみてはいかがでしょうか。
更新日: 2023年02月08日
初回公開日: 2015年10月25日