菖蒲は、昔からこどもの日(端午の節句)に菖蒲湯として利用されてきた、薬用効果のある多年草です。剣のような尖った葉っぱが特徴で、名前が似ているため、よく花菖蒲やアヤメ、カキツバタと混合してしまう植物でもあります。今回は、そんな花菖蒲やアヤメとは別物の「菖蒲」という植物についてご紹介します。
菖蒲(ショウブ)の花言葉
『優しい心』『あなたを信じます』『忍耐』『あきらめ』
菖蒲(ショウブ)の学名・原産国・英語
- 学名
- Acorus calamus L. var. angustatus Bess.
- 科・属名
- ショウブ科・ショウブ属
※サトイモ科・ショウブ属
- 英名
- sweet flag
- 原産地
- ヨーロッパ、アジア
- 開花期
- 5月
- 花の色
- 黄緑色
- 別名
- ニオイ菖蒲
白菖(ハクショウ)
葉菖蒲(ハ菖蒲)
香り菖蒲(カオリ菖蒲)
菖蒲(ショウブ)とは?葉からはどんな香りがする?
菖蒲は、ショウブ科ショウブ属(またはサトイモ科と分類することもある)に分けられる多年草です。池や沼の近くなどの湿地帯に生息しています。
菖蒲の葉はよい香りがするので、端午の節句のとき、葉をヨモギと一緒に束ねて風呂に入れる「菖蒲湯(しょうぶゆ)」として古くから利用されています。また、根は「白菖、菖蒲根」という漢方薬として利用されてきました。
菖蒲(ショウブ)の見頃の季節や開花時期は?
5~7月ごろになると、淡い黄緑色で棒状の花を咲かせます。ただし、葉と同じ緑系統の花色で、長さ5~10cm、太さ直径1cm前後と目立つような花ではないため、遠くからでは見分けがつかないかもしれません。
菖蒲(ショウブ)、花菖蒲(ハナショウブ)、アヤメの違いは?
菖蒲、花菖蒲、カキツバタ、アヤメの4種の花は、葉や花の色や形が似ていたり、別名や名前がかぶっていたり、まぎらわしいためよく間違えられていることがあります。例えば、アヤメは「文目、菖蒲、綾目」と書いて「アヤメ」と呼ばれます。
ただし、菖蒲の学名はAcorus(美しくない)で、アヤメ属は、Iris(虹のように美しい)という意味をもつように、学名に込められた意味はまったく違うことをご存知でしたでしょうか。以下に、4種の花びらの違いをご紹介します。
菖蒲(ショウブ)
菖蒲は、同じサトイモ科の蒲(ガマ)の穂のような、薄黄緑色の目立たない花を咲かせます。花弁もないので、よくよく見ないと見つからないほど地味な花です。つまり、色鮮やかな花びらをしている植物は、菖蒲ではありません。
花菖蒲(ハナショウブ)
花菖蒲は、花びらの付け根が黄色くなっているのが特徴です。
カキツバタ(杜若)
カキツバタは、花びらの付け根が白くなっているのが特徴です。
アヤメ(綾目、文目)
アヤメは、花びらの根本が網目状の線が入っているのが特徴です。
菖蒲、花菖蒲、アヤメの違いまとめ
花前 | 菖蒲 | 花菖蒲 | 杜若 (カキツバタ) |
文目 (アヤメ) |
科・属 | ショウブ科・ショウブ属 | アヤメ科・アヤメ属 | ||
生息地 | 池や沼の近くの湿地 | 草原などの乾いた土地 | ||
開花期 | 5〜7月 | 6月上旬~下旬 | ||
草丈(cm) | 70 | 80~100 | 50~80 | 30~60 |
花 | 薄黄緑色の棒状の花 | 花の付け根が黄色模様 | 花の付け根が白模様 | 花の付け根が網目状の模様 |
葉 | 根本から複数本生え、薬用効果がある | 面に1本、裏に2本の葉脈がある | 葉脈が目立たず、やや幅広 | 葉脈は目立たず、細い |
菖蒲(ショウブ)の葉や根の効能は?
昔から、漢方薬として用いられていた菖蒲。菖蒲の根茎(コンケイ)から取れる精油には、鎮静、鎮痛、去痰、咳をしずめ、血圧を下げる効果があります。また、胃炎や消化不良、健忘症やヒステリーといった症状にも効果的といわれています。
ただし、そのまま煎じて飲むと吐き気をもよおすことがあるので、乾燥させた根茎を粉末にしてオブラートで包んだり、カプセルに入れて服用しましょう。
また、乾燥させた根茎をガーゼなどに入れて煮だし、お風呂に入れれば、神経の緊張をほぐして、血行をよくし、体を暖めるので、神経痛、リューマチなどによく効きます。服用の量やタイミングは、お医者さんや薬剤師などに相談してからにしてくださいね。
菖蒲(ショウブ)の育て方のポイント!種まきや苗植えの時期と方法は?
日当たりがよく、水切れの起こさない環境で育てるのがポイントです。特に生育期の3~10月は、できるだけ屋外で日に当てるようにしましょう。
種まき
- 9~10月頃、トレーに、水を浸した綿やティッシュなどを敷く
- 種を乗せて明るい場所で管理する
- 発芽したら土に植え替え、土は受け皿に常に水をためて水切れがしないようにする
苗植え
- 3~4月頃、鉢に土を入れて苗を植える
- 鉢ごと沈められるよう、さらに一回り大きな鉢に水をくみ、株を植えた鉢を沈める
- 株元が必ず水につかるように水位を調節する
菖蒲(ショウブ)の土作り、水やり、肥料の時期と方法は?
土作り
一般的な赤玉土でもかまいませんが、できるだけ水持ちのよい湿地を好みます。田んぼの土などがおすすめです。
水やり
1年を通して水をきらさないようにしましょう。冬は枯れたようになりますが、宿根草なので、翌年もまた楽しめます。
肥料
3~9月は1、2カ月に1回、緩効性肥料または発酵済みの油かすを土の中に埋め込んでください。
菖蒲(ショウブ)の増やし方は?株分けの時期や方法
菖蒲は、株分けで増やすことができます。株が混み合いやすい春頃、1株から複数生えているもの株を分けて、新たに植え付けます。
菖蒲(ショウブ)とは湿地を好む植物!
菖蒲や花菖蒲との違いや育て方などは、お分かりいただけたでしょうか。花はけっして美しくありませんが、葉の香りがよくジャパニーズハーブとして、近年、その価値が見直されている菖蒲。川の近くで栽培したり、川の畔を散歩して花菖蒲やアヤメ、カキツバタとの違いを探してみてください。
更新日: 2021年12月03日
初回公開日: 2016年04月17日