球根から育てる植物は、1度は名前を聞いたことがあるようなものがたくさんあります。また、養分を内部に貯めていることから、育てやすいこともポイントです。中には、土を使わずに栽培できるものもありますよ。今回は、植え方や種類、保存の方法など、球根の栽培方法についてまとめました。
球根とは?形で種類が違うの?
球根とは、宿根草に分類される草花で、水分や養分を貯められるように根や茎、葉っぱが大きくなっている部分のことを指します。休眠期には球根の部分を残して他は枯れ落ちて栄養を温存し、育ちやすい季節になると再び育ちはじめます。
その見た目や性質から球根は、5つの種類に分けられます。以下にそれぞれの特徴をご紹介します。
1. 鱗茎(りんけい)
短い茎の周りに、養分を蓄えて多肉質になった葉っぱが重なり合い、球形もしくは卵型をしたものです。単に「球根」というと、鱗茎を指すことが多いです。多肉質になった葉っぱのかけらを「鱗片(りんぺん)」と呼びます。鱗片が球根から引きはがされても育つことが特徴です。
鱗茎の植物 | ユリ、タマネギ、チューリップ、ヒガンバナ、スイセン、ヒガンバナなど |
2. 球茎(きゅうけい)
地下茎という、地中に埋まる性質をもつ茎の1種です。茎がでんぷんなどの養分を蓄え、球形もしくは楕円形になります。後述する塊茎と似ていますが、表面が薄い皮で覆われているものを球茎と呼びます。
球茎の植物 | こんにゃく、サトイモ、グラジオラス、クロッカス、フリージア、アヤメなど |
3. 塊茎(かいけい)
球茎と同じく地下茎が肥大して球形になったもののうち、表面が薄い皮で包まれていないものを指します。
塊茎の植物 | ジャガイモ、シクラメン、アネモネ、ベゴニアなど |
4. 根茎(こんけい)
地下もしくは地表をはうように横に伸びる地下茎の1種で、パッと見は根のように見えます。棒もしくは塊になって肥大し、節から芽を出すのが特徴です。
根茎の植物 | ジャーマンアイリス、カキツバタ、カンナ、蓮、ショウガなど |
5. 塊根(かいこん)
大きくなった根がいくつもでき、塊のようになる地下茎の1種です。紡錘形をしているものが多く、中にでんぷんなどの養分を貯めこんでいます。
塊根の植物 | ダリア、サツマイモなど |
球根の育て方!植え付けの時期は?
原産地の環境によって「春植え」「夏植え」「秋植え」の3タイプがあります。種類が豊富なのは秋植え球根で、チューリップ、アネモネ、ヒヤシンスなど定番の植物の多くが当てはまります。夏植え球根のサフランなどは、土、水、肥料が一切なくても花を咲かせることができますよ。
1. 春植え
3月中旬~5月上旬頃に植え付けます。夏に花を咲かせ、秋になると地上部が枯れ、休眠して地中で冬を越します。熱帯原産のものの多くがこのタイプになります。
春植え球根 | グラジオラス、カラー、カンナ、ダリア、ベゴニア、アマリリスなど |
2. 夏植え
8月下旬~9月下旬に植え付けます。すると秋から花を咲かせ、その後葉っぱが出てきて、翌年の夏になると枯れてしまいます。通常、球根植物は休眠期に掘り上げますが、夏植えのものは掘り上げないものが多いです。
夏植え球根 | ヒガンバナ(リコリス)、サフラン、ネリネなど |
3. 秋植え
10~11月頃に植え付け、冬を越して翌春に花が咲き、夏に休眠するというサイクルで生長するタイプです。暑さに弱い反面寒さには強いものが多くあります。また、ある程度寒さに当たらないと花が咲かない場合があります。
秋植え球根 | チューリップ、アネモネ、アルストロメリア、スイセン、スノードロップ、ヒヤシンスなど |
球根の植え方は?
球根は、大きさや種類によって植え付ける深さも様々です。例えば、ユリやアヤメ科の植物は球根の高さの5倍ほど深く、ヒガンバナやアネモネは球根の高さの1~2倍と浅く植え付けます。今回は、一般的な球根の植え方をご紹介します。
1. 鉢やプランターに鉢底ネットを敷き、鉢底石を入れる
2. 鉢やプランターの縁から1~2cmほど下まで土を入れる
3. 球根同士の間隔を1~2個分空け、球根の高さの2~3倍の深さに植え付ける
球根の育て方!水で栽培できるの?
ヒヤシンスやクロッカスなど秋植え球根の多くは、土や肥料を必要としない水耕栽培ができます。口の狭い瓶などの容器に水を入れ、上に球根を置けばよいだけです。
開始直後は球根の底が軽く浸かるくらい水を入れ、根が生えてきたら先端が水に浸かるように水位を調節するのがポイントです。根が生えた後、球根が水に浸かると腐ってしまうので気をつけましょう。1週間に1~2回ほど水をかえると生育がよくなりますよ。
球根の掘り上げ方は?
湿度の高い環境や乾燥に弱い球根は、休眠期に入ったら土から掘り上げ、植え付け時期がくるまで保存します。
掘り上げる前に、葉っぱを残して球根に栄養を蓄えておくことがポイントです。球根植物は光合成によって球根に栄養を貯蔵するので、花が終わった時に葉っぱも切ってしまうと翌年に花を咲かせなくなってしまいます。
一方、枯れた花をそのままにしておくと、病気や害虫の被害にあいやすくなり、種がついて栄養が奪われることに。枯れた花は、茎の根元から切り落としてしまいましょう。
また、葉っぱが自然に枯れてくるまでは、リン酸やカリ成分の多い速効性の肥料を施し、球根を太らせる手助けをしてあげるといいですよ。
掘り上げ方法
1. 花が咲き終わったら、葉っぱを残して茎を根元から切り取る
2. 7~10日に1回程度、薄めた液肥を株元に与えて球根を太らせる
3. 残した葉っぱが8割ほど枯れてきたら、球根を掘り上げる
球根の保存方法は?
球根の保存方法には、球根を乾燥させる「乾燥貯蔵」と球根を乾燥させない「湿潤貯蔵」の2つがあります。ほとんどの球根は乾燥させて保存しますが、中には皮が薄く、乾燥に弱いものもあるので注意してください。
掘り上げる前に、どちらのタイプの球根か確認しておきましょう。また、同時に分球して数を増やすこともできます。
乾燥貯蔵
- 葉や茎をつけたまま球根を掘り上げる
- 雨の当たらない日陰に7~10日球根を置き、よく乾かす
- 市販の球根消毒剤に15分ほど浸す
- ネットなどの網袋に入れる
- 風通しのよい日陰に吊るす
乾燥貯蔵の植物 | チューリップ、ヒヤシンス、ラナンキュラス、アネモネ、アイリス、クロッカス、ムスカリ、リコリスなど |
湿潤貯蔵
- 掘り上げる数日前から水やりをやめ、土を乾かす
- 球根を掘り上げ、表面についた土を落とす
- 球根から茎、葉、ヒゲ根、黒ずんだ古い皮を取り除き、市販の球根消毒剤で消毒する
- 湿らせたバーミキュライトや、おがくずにくるみ、ビニール袋に入れる
- 箱に入れて暖房の効いていない室内で管理する
湿潤貯蔵の植物 | ユリ、ダリア、カラー、ベゴニア、カンナ、サギソウ、アルストロメリアなど |
植えっぱなしにできる球根もある?
植えっぱなしにできる植物には、高温多湿に強い植物が多くあります。通常は乾燥貯蔵するチューリップなども、原種系なら地中で冬越しさせることも可能です。これらは、植え付けてから2~3年して株が混み合ってきたら、掘り上げて植え直せばいいので手間がかかりません。
植えっぱなしの植物 | スイセン、オキザリス、万能ネギ、スノーフレーク、ムスカリなど |
球根からの育て方を知って楽しもう
種から育てるのとは違った楽しみがある球根の栽培。球根自身が蓄えた栄養で花を咲かせてくれるので、水栽培や植えっぱなしにできるものがたくさんあるのも魅力です。
栽培セットなら1個からでも育てられるので、子供の頃を思い出しながら育ててみるのもすてきですね。
更新日: 2022年05月18日
初回公開日: 2015年12月20日