行者にんにくは、北海道を代表する春の山菜です。大きく育つまでに5年ほどかかり、乱獲によって数が減少していることから今では「幻の山菜」と呼ばれています。なかなか目にする機会はありませんが、栽培方法が確立されているので、実は自宅で栽培を楽しむことができるんです。今回は、そんな行者にんにくの栽培方法や臭の押さえ方、収穫、保存方法などについてご紹介します。
行者にんにくの図鑑!学名・原産国・英名は?
- 学名
- Allium victorialis subsp. platyphyllum
- 科・属名
- ネギ科・ネギ属
- 英名
- Ascetic garlic
Alpine leek
- 原産地
- 日本、中国、ロシア、カナダ
- 開花期
- 7月
- 収穫期
- 4~5月
- 別名
- プクサ
キトビロ
アイヌネギ
山蒜(ヤマビル)
山ニンニク(ヤマニンニク)
行者にんにくとは?どんな花を咲かせるニンニク?
行者にんにくとは、ネギ科・ネギ属に分類される多年草です。奈良県以北の山林の湿った場所に自生しています。アイヌ民族がいる北海道でよく採れることから「アイヌネギ」とも呼ばれます。収穫した行者にんにくは、炒めものや天ぷら、軽くゆでて卵とじや和え物、みじん切りにして醤油漬けや味噌漬けなどに料理して楽しみます。
どんな花を咲かせる?
行者にんにくは、種まきから収穫までの期間が3〜5年かかります。草丈50~60cmに生長し、20〜30cmほどの長い葉っぱをつけ、茎の頂上には白いボール状の花を咲かせます。ただ、葉っぱが開く前の若芽を収穫するので、収穫するなら開花した花は見れません。
行者にんにくの臭いの特徴は?
行者にんにくは、株に近寄っただけでわかるほど強いにおいを放ちます。ニオイ成分のアリシン(硫化アリル)がたくさん含まれているため、ニンニクに似た味や臭いがします。あまりに臭いが気になって料理にはちょっと…という方は、たまごやセロリ、パセリと一緒に食べると臭いが和らぐのでおすすめです。
行者にんにくの栄養や効果・効能は?
行者にんにくは、疲労回復や滋養強壮にとても効果のある食材です。ビタミンB1の吸収を助けて免疫力を高める効果があるアリシンという成分は、にんにくの約4倍含まれています。このアリシンは、加熱するとスコルジニンという成分に変化し、血管が広がり血行をよくすることから、高血圧、冷え性、血小板凝集抑制などの効能も期待できます。さらに、キャベツの約10倍のβカロテン、みかんの約1.7倍のビタミンC、骨を丈夫にするビタミンKや、皮膚の健康維持に役立つB6など、美容と健康によい成分がたっぷり含まれています。
行者にんにくの栽培方法!育て方のポイントは?
暑さ対策をしながらやわらかい土で育てる
行者にんにくは、涼しい地域が原産の野菜で、夏の平均気温が25度以下の冷涼な気候を好みます。温かい地域では、遮光ネットを張るなど日陰を作る工夫をしてください。また、種まきから収穫まで3~5年と栽培期間が長いので、根がよく伸びて育ちやすいよう、堆肥をたっぷりと土に混ぜ込んでふかふかにしておきます。
行者にんにくの種まきや苗植えの時期と方法は?
7~8月頃が行者にんにくの種まきの適期です。発芽率が低いので、種をまく前に1日水に浸けておきます。土は、市販の種まき用培養土か、赤玉土や腐葉土がおすすめです。
- 育苗ポットや育苗箱に土を入れる
- 指で深さ0.5~1cmほどの穴を空ける
- 種に土を1~2cmほど厚めに被せる
- たっぷりと水やりをする
- 土の上にワラや腐葉土を被せて乾燥を防ぐ
- 土が乾いたら水やりをして、半日陰で管理する
- 茎が5cmほど生えたら、プランターや地面に植え替える
行者にんにくの苗植えの時期と方法は?
4~5月か9~11月頃に行者にんにくの苗を植えます。山野草や高山植物の販売店、ホームセンター、通販で苗を購入し、自生のものを採らないようにしてください。植え付け場所は、午前中のみ日の当たる半日陰が最適です。
プランター
深さ30cm以上、横幅60cm以上のプランターを用意します。株同士の間隔を5~10cm空け、密に植え付けていきます。土は、黒土または山野草用培土6割に、完熟堆肥と腐葉土を4割の水はけと水もちのバランスがよいものがよいです。鉢底石を容器の底に敷いたら土を入れ、苗の先端が2~3cm見えるよう植えます。
地植え
植える2週間前から土作りを始めます。養分が豊富な土を好むので、畑の土へ堆肥や腐葉土をたっぷりと加えて2週間ほど寝かせておきます。2週間後、幅60cm高さ10cmほどのうね作ります。あとは、5~10cm間隔で苗を植えます。
行者にんにくの水やり、肥料の与え方
水やり
プランター、地植えにかかわらず、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。行者にんにくは乾燥に弱いので、プランター栽培は特に水切れに気をつけてください。また、地上部が枯れていても根が生きているので、土が完全に乾かないよう水やりを続けます。
肥料の与え方
行者にんにくは、植える土にたっぷりと肥料や堆肥を混ぜ込んでいれば、追加の肥料を与えなくても元気に育ちます。ただ、プランター栽培をしていて、肥料が足りないと葉っぱの色が悪くなります。そんなときは液体肥料を水やり代わりに与えるか、発酵油かすを株元に置くと生育がよくなります。
行者にんにくの収穫や保存!適切な時期と方法は?
収穫
行者にんにくは、葉の枚数が3枚以上になったら収穫の目安です。種を植えてから約3〜5年ほどです。4月中旬~5月中旬頃、まだ葉の開いていないやわらかい若葉を折って収穫してください。葉の分かれ目からそっとつまみ、株元から2~3cmほどを残して外葉からはがしていきます。注意したいのは大量に収穫すると翌年から育ちにくくなることです。株ごと収穫してしまうと二度と生えてこなくなる可能性もあります。
保存
行者にんにくは、生の状態で新聞にくるんで野菜室に保存するか、料理で余った分は数十秒ゆでて水を切り、冷凍保存します。解凍するときは、お湯で10〜30秒ほどゆでます。行者にんにくの臭いが気になる方は、茎の赤い部分の皮をはがすと臭いがやらわぎます。
行者にんにくの増やし方!株分けの時期と方法は?
行者にんにくは、秋に株分けか種まきで数を増やします。株分けは、親株の周りに新しい茎が伸びてきたら、根を切らないように掘り上げ、手で割って分けて植えます。種まきは、花が咲き終わり、種の殻が割れるのを7月下旬頃まで待ってから採取します。殻が裂ける前に採種したものは、手でもんで殻を取り除いてからまいてください。
行者にんにくの栽培で注意する病気や害虫は?
行者にんにくは、ネギアブラムシやネギアザミウマといった害虫や、サビ病などの病気にかかることがあります。害虫は、寒冷紗などで株を覆って他の場所から飛んで来るのを防ぎます。また、植物自体に殺虫剤の成分を染み込ませて虫を寄せ付けない、浸透移行性の薬剤の散布も予防に効果的ですよ。サビ病は、葉の表面が変色する病気です。病気にかかったところは回復しないので、切り取って処分します。
行者にんにくは栽培に時間がかかる野菜
行者にんにくは、種まきから収穫まで3~5年と栽培期間がかかる野菜です。ただ、一度きちんと育てば、毎年収穫を楽しめる多年生の野菜でもあります。色々や料理の香りづけに加えて、その強い臭いを楽しんでみてください。希少価値も高いので、自宅で栽培すると特別感が味わえるのもうれしいですね。
更新日: 2016年07月21日
初回公開日: 2016年07月21日