キッチンで育てるハーブ(=キッチンハーブ)として人気が高く、ガーデニング初心者でも育てられるローズマリー。収穫した葉を料理の香りづけや香水の香料にしたり、観葉植物として育てたりされる、幅広く利用できる人気のハーブです。
今回はローズマリーを初めて栽培する方のために、苗の鉢植えや植え替えのコツなど、育て方をまとめてご紹介します。
ローズマリーとは?育て方が簡単なの?
ローズマリーはシソ科・マンネンロウ属のハーブです。ハーブと聞くと「鉢植えで育てる小さな植物」のイメージをもちますが、ローズマリーの本来の姿は2m近くまで伸びる常緑性の木です。
鉢に植えてもどんどん茎を伸ばして葉を生やすので、1年を通して葉を収穫したり、観葉植物として育てたりといろいろな使い方ができます。
ローズマリーを室内で育てるなら鉢植えがおすすめ
ローズマリーはバジルやパセリのように鉢植えでも育てやすいハーブの1つです。収穫をしても次々に茎や葉を生やして生長するため、切りすぎたからといって苗が枯れることがほとんどありません。
最近ではローズマリーの苗がきれいな鉢に植えた状態で販売されているので、1年を通して購入・栽培できます。初めてローズマリーを育てる方は鉢植えされた苗がおすすめです。
購入後に植え替えすることを前提としている「ポット苗」や「◯号苗」は、最初に植え替えに適した3〜5月、10〜11月のタイミングで購入する必要があるので、どちらかといえば園芸経験者に向いています。
苗から鉢に植え替える手順は、下記の「植え替え」をご紹介している部分に記述してあるので参考にしてください。
主に市販されているローズマリーの苗は、茎が上に向かって伸びる「立性(たちせい)」と呼ばれるタイプを選びましょう。
ローズマリーの育て方!室内で育てるポイントは?
ローズマリーは日光をたくさん浴びると生長が進みます。夏以外は日当たりのよい窓ぎわが最適です。夏の直射日光は強すぎるので少し暗い場所に移動させ、それ以外はできるだけ長い間日が当たる場所で管理しましょう。
風通しがよく乾燥した状態でたくさんの日光を浴びさせることが、ローズマリーを室内で長く育てるポイントです。
ローズマリーのお手入れ!水やりや肥料の与え方は?
ローズマリーは定期的に水や肥料を与えることでどんどん茎を伸ばして葉を生やします。日光と水さえあれば基本は元気に育つため、元気がなくなったときに肥料を追加で与えましょう。
水の与え方
鉢の土が乾燥して数日たってから、鉢底から流れ出るくらいたっぷりと水を与えてください。水やりの時間は朝方か夕方です。霧吹きは過湿のもとになるので必要ありません。土の乾燥が進むと葉っぱが細くなってくるので、それをサインに水やりをするとよいですよ。
肥料の与え方
ローズマリーは肥料がなくても元気に育ちます。ただ、数年育てた鉢など土の養分がほとんどなくなって茎がしおれてきたら肥料を与えましょう。植え替えのタイミングで肥料入りの培養土を利用するのでもかまいません。
肥料を与えるときは、薄めた液体肥料を水やりの代わりとして10日に1回の頻度か、規定のさらに2倍に薄めて5日に1回の頻度が目安です。
ローズマリーの育て方で注意したい病気や害虫は?
ローズマリーは育て方を間違えると、葉や茎が黄色く変色して枯れはじめます。ローズマリーが枯れる要因は次の5つです。
- 水をあげすぎた
- 根詰まりを起こした
- 根を傷つけた
- 葉や茎の数が多すぎた
- 病気や害虫の被害にあった
それぞれについて対処法をご紹介します。
1. 水のあげすぎによる「根腐れを起こした」場合
「日光によく当てている」「水やりもちゃんとしている」のに葉っぱが枯れはじめたのなら、それは水の与え過ぎによる根腐れかもしれません。できるだけ早く植え替えを行いましょう。
ローズマリーの鉢植えは、土が乾いたと思ってからさらに数日あけて水やりをします。目安は葉っぱが弱って細くなってからで、霧吹きなどは不要です。
2. 植え替えをしないために「根詰まりを起こした」場合
反対に植え替えをせずにいると新しい根の生長スペースが土の中でなくなり「根詰まり」状態になって枯れ始めることがあります。
根詰まりを解消するには「植え替え」が必要です。植え替えでは「植え替えて新しい土を入れること」と「鉢のサイズに合わせて根や茎、葉を減らすこと」が大切になってきます。
「鉢のサイズに合わせて根や茎、葉を減らすこと」というのは、「一回り大きな鉢に植え替える」か、「同じサイズの鉢に植え替えるなら根を1/3〜1/2ほど切って、葉や茎も同じ比率くらい減らすこと」を意味します。
3. 植え替えのときに「根を傷つけた」場合
植え替えの過程でローズマリーの根を傷つけると、根が吸水する量が減るので水が行き渡らない葉は枯れはじめます。
「根を傷つけた」と思ったり植え替え後に葉が枯れはじめたりしたら、少し葉を落としたり茎の数を減らしましょう。
植え替えのあとはどうしても根に負担がかかって調子をくずすことが多いので、植え替えと合わせて葉や茎を減らしておくのも1つの方法です。
4. 葉や茎の数が多すぎたことで「根の吸水が足りない」場合
ローズマリーをはじめ植物というのは、根と茎や葉のバランスが取れているのが自然な状態です。根が吸収した水を利用して茎や葉を生長させるためです。
ただ、生長が進む時期になると根や葉の生長に根の生長が追いつかないことがあり、「根が吸い上げる水の量が足りない状態」になって茎や葉が枯れはじめることがあります。
1番生長が進む時期、特に植え替えをしたわけでもないのに茎や葉が枯れはじめたら、この状態かもしれません。
対処法としてまずは、水を蒸発させる「葉」の数を減らしましょう。それでも元気にならない場合は茎の数も減らしてください。
根が弱って回復できずに全部が枯れることを見越して、もし余裕があれば早めに挿し木で次の苗を育てはじめるのが得策です。
5. 病気や害虫の被害にあった場合
ローズマリーは病気や害虫に強いハーブです。しかし、まれに「ヨコバイ」という害虫によって葉が黄色く変色することがあります。ヨコバイを見つけたら、以下の3つの対策で退治しましょう。
- 農業用の防虫ネットで覆う
- 被害が進んでいる場合は、茎や葉っぱを切り取るか苗ごと処分する
- 黄色の旗や粘着性のあるテープを設置して誘導、捕獲する
ローズマリーを収穫しよう!剪定のコツは?
ローズマリーを育てはじめて、茎が15cm以上育ってきたら収穫してみましょう。太い茎を残しつつそこから伸びた葉や小さな茎を10〜15cmほど切り取ります。切りとった葉はピザなどを焼くときに数枚ちらしてローズマリーの風味をつけたり、肉に揉み込んで臭みを消したり、料理に使ってみるのもよいかもしれませんね。
少しずつ収穫しないとローズマリーが枯れてしまうことがあるので、収穫は使う分だけにしておきましょう。
また収穫とは別で、定期的に見た目を整えたり、風通しをよくしたりするため葉や茎を切ってあげる「剪定(せんてい)」が必要になります。「古い茎」「収穫後に葉が生えてこない茎」「内向きや下向きの茎」「枯れている・細く弱っている茎」を見つけたら生え際から切って取り除きましょう。
夏場に弱いので7〜9月の間を避けて剪定してくださいね。木質化(もくしつか)した場合の剪定は、関連記事を参考にしてください。
余ったローズマリーの葉はどうやって保存するの?
収穫したローズマリーの葉は、乾燥させて乾燥剤と密閉容器にいれるか冷凍保存します。余った葉は冷凍保存しておきましょう。1ヶ月ほどは日持ちし、凍った状態で利用できるので解凍の必要はありません。
ローズマリーの保存方法
- 収穫した枝が汚れているなら水で洗って水気を切る
- 新聞紙でくるんで根本をゴムでまく
- ロープなどに逆さまに吊るすか、2〜3分だけ電子レンジにかけて乾燥させる
- 乾燥したゴム手袋をつけて枝から葉っぱをしごいて落とす
- 密閉できる容器や袋に乾燥剤と一緒に葉を入れて冷凍保存する
ローズマリーの栽培は、増やすのも楽しみの一つ
ローズマリーの栽培に慣れてきたら、苗を育てて数を増やしてみるのも楽しみの一つです。
1番簡単なのは収穫した茎を利用した挿し木という繁殖方法。2〜3月が挿し木を行う適した時期で、慣れてきたら9〜10月の間でも挿し木にチャレンジしてみましょう。
■ 用意するグッズ
- 鉢底に鉢底ネット、ハーブ用の培養土を入れた植木鉢
- 水を入れたコップ
- 清潔なハサミ
- ゴム手袋
- 茎の切り口に塗る薬剤(発根促進剤)
■ 手順
- ゴム手袋をつける
- 新しい芽をつけた茎をハサミで10cmほど切る
- 手で下半分の葉をこすって取り除く
- 茎をコップに入れて切り口を水に1時間ほど浸す
- 水から取り出して水気をとったら切り口に発根促進剤を塗る
- 土を入れた鉢の縁側の土に穴を指であけて茎を入れる
- 1ヶ月間ほど土が乾燥しないように水やりを続ける
- 根が生えたら土が乾燥してからの水やりに変える
- さらに1ヶ月後、ハーブ用の培養土を入れた植木鉢に挿し木を植え直す
- 通常の苗と同じように育てる
ローズマリーは種まきから栽培できる?
初めてローズマリーを育てていると、「大きく育てる」ことや「収穫する」ことが、楽しくも重要な時間ですよね。ただ、一度経験すると、収穫や栽培は難しいものではない、と気づく方も多いはず。
そんな栽培や収穫の次のステップとして挑戦してほしいのが「繁殖(=数を増やすこと)」です。
初心者の方は挿し木で手軽に「繁殖」を経験して楽しんでほしいのですが、「もっと数を増やしたい」という方は少し難易度の高い「種まき」がおすすめです。
発芽するまでに1ヶ月、苗になるまで2年近くの時間がかかる反面、大量に栽培できるメリットがあります。
■ 用意するグッズ
- 種まき用の土を入れた植木鉢やプランター
- 水を入れた霧吹き
- 鉢底ネットとハーブ用培養土の入った植木鉢
■ 手順
- 4~5月か9~10月に種を用意する
- 水やりをして種まき用の土を湿らせる
- 軽く指で押して土に穴をほる
- 穴に種をまいて薄く土を被せる
- 土が乾燥しないように水やりをする
- 発芽して本葉が育ってきたら土が乾いてから水やりに変更する
- 本葉が20cmを超えたら一回り大きな鉢か庭に植え替える
ローズマリーの植え替えの時期と方法は?
ローズマリーを鉢に植えて育てていると1~2年で植え替えが必要になります。鉢の中では根が生長し続けているので、4~5月か9〜10月鉢の底を確認して根が出ていたり、土から根が見えはじめたりしたら植え替えのタイミングです。
■ 用意するグッズ
- 苗よりも一回り大きな鉢
- 鉢底ネットと鉢底石
- ハーブ用の培養土
■ 手順
- 水やりをやめてローズマリーの鉢の土を乾燥させておく
- 新しい植木鉢の鉢底に鉢底ネットと軽石をしき、土を1/3まで入れる
- 根を傷つけないようローズマリーを植木鉢から取り出す
- 黒ずんだ根があれば切り取る
- 新しい植木鉢にローズマリーを置く
- 周りに土を入れてローズマリーを固定する
- 水やりをして土を固める
ローズマリーは寄せ植えできる?相性がよい植物は?
ローズマリーの苗が手元にたくさんある方は、ローズマリーなどのハーブを合わせた寄せ植えにチャレンジしてみるのもよいかもしれません。寄せ植えとは、「開花期」や「生長のサイクル」が似た植物を同じ鉢やプランターへ一緒に植えることをいいます。
ローズマリーの寄せ植えのポイントは、3〜4月か9〜10月頃に行うこと、収穫の時期が近いことなどがあります。
苗の植え方は「植え替え」と基本は同じです。植える苗の数が多いので事前に「何の苗をどこに置くか」を決めておくとスムーズに作業が行えますよ。
配置のコツは、背丈の高い植物を1番奥に置くことです。相性がよい植物には、タイム、バジル、ラベンダー、セージ、フェンネル、チャイブ、パセリなどがあります。
ローズマリーを栽培してハーブライフを楽しもう
ローズマリーは苗が大きければ1ヶ月ほどで収穫が楽しめる栽培が簡単なハーブです。年間を通して収穫できるうえ、収穫した葉の使い道もさまざま。
料理好きな方はアクセントに、そうでない方は観葉植物として「ローズマリー」を栽培して、ハーブライフを楽しんでくださいね。
千葉県庁 参考文献:更新日: 2022年05月25日
初回公開日: 2015年05月11日