紫苑は、冬に地上部の茎葉が枯れつつも、春になると芽吹いて秋に花を咲かせる宿根草です。宿根アスターと呼ばれる仲間の1つとしても知られており、秋に紫苑の花が咲くことで、本格的な秋の気配が感じられるでしょう。今回は、そんな紫苑の花言葉や別名、見頃の季節、育て方などについてご紹介します。
紫苑(シオン)の花言葉
『追憶』『追想』『遠方にある人を思う』『君を忘れない』
紫苑の花言葉は、今昔物語を元に作られたとされます。母を亡くした兄弟の物語です。はじめのうちは墓参りを欠かさなかった二人ですが、仕事が忙しくなった兄は、忘れ草を墓前に植えて次第に墓参りをしなくなりました。
弟は、紫苑(忘れな草)を墓前に植えて、どんなときでも毎日欠かさず墓参りを続けました。これを見ていた鬼はすっかり感心して弟に予知能力を授け、弟はその力で幸せに暮らしたという話です。母を想う気持ちの表れが、これらの花言葉を生んだのかもしれません。
紫苑(シオン)の花の色や別名は?
- 学名
- Aster tataricus
- 科・属名
- キク科・シオン属
- 英名
- Tatarian aster
- 原産地
- 日本、シベリア、中国、朝鮮半島
- 開花期
- 9~10月
- 花の色
- 薄紫色
- 別名
- オニノシコグサ(鬼の醜草)
ジュウゴヤソウ(十五夜草)
紫苑(シオン)はどんな花?
秋には薄紫色で花径約3cmの一重の花を咲かせます。その草丈は180cmほどまで成長し、主に観賞用としてよく栽培されます。根や根茎には、咳止め・痰の除去・利尿作用があり、漢方に使われます。生薬名も同じで紫苑です。
名前の由来
紫苑は、大きな紫系の花が株にたくさん集まって咲く様子を草木が茂る様子を表した「苑」として漢字が当てられ『紫苑』とされました。
属名であるシオン(Aster)は、ギリシア語のaster(星)を語源として、星のように放射線状に伸びた花びらの姿からつけられました。
オニノシコグサ(鬼の醜草)は、今昔物語に因んだものです。ジュウゴヤソウ(十五夜草)は、十五夜頃に開花することが由来とされます。
紫苑(シオン)の開花時期と見頃の季節とは?
紫苑は、9~10月が開花の時期です。最盛期の見頃な季節は9月となり、花持ちの期間が5~7日程度となります。
紫苑(シオン)の花の種類は?
アスターの仲間である紫苑は、キク科の植物です。今回はいくつか代表的な仲間の種類をご紹介します。
ユウゼンギク
北アメリカ原産の種類です。花色が白、紫、赤、ピンクなどの小さな花が群がって咲きます。鉢植えや花壇には草丈は20cmほどのものを使うほか、切り花にも利用されます。
クジャクアスター
北アメリカ原産で、元はシロクジャクという白い花とユウゼンギクとの交配によって生まれました。ピンク、紫、藤色、青など花の色が豊富で、株が埋まるほどのボリュームがある2~3cmほどの小花が咲くのが特徴です。
クジャクソウ(シロクジャク)
白、ピンク、紫色の花色がある北アメリカ原産の種類です。背丈が高く、枝分かれした先に咲かせる花の様子がクジャクの羽に似ていることから名づけられました。切り花として広く流通しています。
ミカエルマス・デージー(ミケマルス・デージー)
北アメリカ原産の野生種です。園芸種ではユウゼンギクやネバリノギク、トラディスカンティーなどを掛け合わせたものを指します。草丈40~150cmほどで、小菊のような一重の花を咲かせ、主流の紫系に加え、白、ピンク、赤などの花色があります。
コンギク
日本原産の種類です。ノコンギクの栽培種で、草丈は30~100cmで花径3cm程度の美しい濃青紫色した花色の花を咲かせます。主流は濃青紫色で、白色の花もあります。
ノコンギク
日本原産の野菊の1種です。野山にいくと自生している姿が見られますよ。草丈は50~100cmほどで、花径3cm程度の白~淡紫色の典型的なキク型の花を咲かせます。
ダルマシオン
日本原産で、シオンよりも草丈が低く、コンパクトな株にまとまります。薄紫色の花びらで、切り花に最適な品種です。
アメリカシオン
北アメリカ原産の品種です。草丈が60~200cmほどの大型種で、8~10月にかけて直径約4cmとやや大きめの赤紫色をした花をつけます。別名、ネバリノギクとも呼ばれます。
紫苑(シオン)の育て方のポイントとは?
とても丈夫な植物なので、環境が合えば手間があまりかからずによく育ちます。日当たりがよく、水はけのよい土壌で育てるのがポイントです。
紫苑(シオン)の種まき・苗植えの時期と方法とは?
紫苑は、種の流通が少ないので苗から育てましょう。植え付けは、3~4月に行うか、10月頃に行うのが適しています。株が大きく育ちますので、地植えに向いています。鉢植えも可能ですが、草丈が高くなるので、風で倒れないようにしっかりとした深めの素焼き鉢を使うのがおすすめです。
鉢植え
1. 10~11号鉢(10ℓ以上)を用意する
2. 市販の草花用の培養土、または、赤玉土(小粒)6:腐葉土4を混ぜた土を入れる
3. 緩効性の化成肥料を土に混ぜて施して植え付ける
地植え
日当たりがと水はけのよい、適度に湿り気のある土壌の場所を選びます。水はけが悪いようであれば、腐葉土を混ぜ込みましょう。
花壇に植える場合は、草丈が高くなるので、後方に植え付けるようにすると見栄えがよくなります。
1. 深さ30cmほどの植え穴を掘る
2. 堆肥とゆっくりと効く化成肥料を少し、掘り上げた土の3割程度入れる
3. 庭土とよく混ぜ合わせる
4. 株間を20~30cmほど間隔ほどあけて植え付ける
紫苑(シオン)の水やりと肥料の時期・方法は?
水やり
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたらたっぷり水を与えます。夏場はよく水を吸い上げる上に、土の乾きがはやくなるので注意しましょう。冬場は葉が枯れ、乾くのも遅くなるので生育期より回数を抑え、春になって芽が出始めたら、徐々に回数を増やして水を与えます。
地植えの場合は、植え付けてから2週間ほど乾かしすぎに注意し、あとは雨が降らず乾きすぎるときに与える程度で大丈夫です。
肥料
基本的に、多くの肥料は必要ありません。鉢植えには3~6月と9月頃に緩効性化成肥料を置き肥するか、液体肥料を定期的に与えます。地植えには3~4月頃に骨粉入りの固形油粕などまいておきましょう。
紫苑(シオン)の剪定の時期と方法は?
草丈が40~50cmになったら摘芯をやりましょう。草丈が高くなりやすいので、花が終わって枯れ始めたら、株元から5cm程度を残して切り取ります。耐寒性が強く、冬越しが可能で、春になると新芽が株元から伸びてきます。
紫苑(シオン)の植え替え時期と方法は?
3~4月もしくは、9~10月に植え替えを行います。
鉢植え
根詰まりを起こさないように、毎年植え替えを行います。株が増えるので、株分けをしながら植え替えましょう。鉢から抜いたら、2~3株ずつ植え付けます。
地植え
3~4年ほどしたら株が混み合いますので、株分けを兼ねて植え替えをします。同じ場所は、連作障害を起こして生育が悪くなりますので、別の場所に2~3芽ほど分けて植えるとよいでしょう。
紫苑(シオン)の増やし方!株分けと挿し芽の時期と方法は?
株分け
植え替えのタイミングで、1株に2~3芽がつくようにナイフやハサミで切り分け、新たに植え付けます。
挿し芽
5月頃が適期です。5cm程度に枝を切り取って、下の方の節の葉を全て取り除いて、その部分が埋まるように土に挿します。土が乾かないように明るい日陰で管理しましょう。
紫苑(シオン)の育て方で注意する病害虫は?
アブラムシやハダニ、グンバイムシなどの害虫がつくことがあります。葉が吸汁されると葉色が悪くなり、最後には枯れてしまいます。葉裏にいることがあるので、発生してしまったら殺虫剤を散布して駆除しましょう。オルトラン粒剤を散布することで予防が可能です。
紫苑(シオン)の花言葉は歴史を感じるもの
紫苑の栽培は、今昔物語に登場するほど古く、元々薬用としていたものが、平安時代に観賞用として植えられるようになったとされます。現在、純然たる野生のものは減少しており、環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類(VU)に登録されているほどです。
山野草で出回ることが少ないかもしれませんが、入手することができたらぜひ新しいガーデニングの仲間に加えてみてください。
更新日: 2021年12月03日
初回公開日: 2015年10月06日