黄色い実をたくさんつけるマルメロ。甘い香りを放つ実は、のどの痛みや風邪を治癒、予防する効果があるとされています。古くから中央アジアを中心に栽培され、江戸時代に日本へと伝わってきました。果樹の中でも、病気や害虫の心配がなく、育てやすいことで知られていますよ。今回は、そんなマルメロの育て方について、種まきや苗植えの時期と方法などをご紹介します。
マルメロの育て方のポイントは?
違う品種を2本以上植えることが実をつけさせるコツです。自家結実性が低く、1本だけ植えても実をつけることはほとんどありません。確実に実を収穫したいときは、違う品種の花粉を受粉させる必要があります。
マルメロの種まき、苗植えの時期と方法は?
種まき
マルメロは、実から取り出した種から育てることができます。ただ、実をつけるまでには何年もかかることから、種から育てられたものは、接ぎ木用の台木として利用されることがほとんどです。適期は、10~12月になります。
果肉をきれいに水洗いした種を、赤玉土(小粒)などの清潔な土にまいていきます。その後は、土が乾燥しないよう水やりをして管理し、樹高が20cmほどになったら鉢や地面に植え替えます。
苗植え
マルメロの苗は12~3月頃、鉢か地面に植え付けます。鉢植えは、7~8号に1株が植え付けの目安です。植え付けたら、樹高を鉢の3倍ほどの長さに切り詰めると生長が促せます。地植えは、樹高50~60cmほどの高さに切り戻し、苗よりも1回り大きな植え穴を掘って植えます。
マルメロの土作り、水やり、肥料の与え方
土作り
水はけと水もちのバランスがよい土であれば、特に土質を選びません。鉢植えは、赤玉土(小粒)7~8:腐葉土2~3の割合で混ぜた土か、市販の果樹用培養土を使います。地植えは、植え穴を掘った土に2~3割腐葉土や堆肥を混ぜあわせます。
水やり
鉢植えは、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。地植えは、根付くまでの2週間ほどは、土が乾いたら水やりをしますが、その後の水やりは日照りが続くとき以外必要ありません。
肥料の与え方
マルメロに肥料を与え過ぎると、果肉が変色することがあるので、控えめに施していきます。鉢植え、地植えともに、2月と10月に有機肥料か、速効性化成肥料を与えます。鉢植えは、生育の状態を見て、5月に同じ肥料を与えてもかまいません。
マルメロの剪定の時期と方法は?
葉っぱが枯れ落ちている12~2月が適期です。花芽は10cmほどの長さで、5~10枚ほど葉っぱをつけた枝の先端につくので、それ以外の枝を取り除いていきます。また、伸びすぎている枝にも花芽はつかないので、1/3~1/4ほどの長さに切り戻していきましょう。
マルメロの収穫までの手入れは?
受粉
4~5月に花が咲いたら、人工授粉を行います。違う品種の花粉か、梨の花粉を利用してもかまいません。雄しべについている花粉を筆などに取り、雌しべの先端にある柱頭につけていきます。
摘果
マルメロの実が必要以上に大きくなってしまうと、株の養分が奪われ、翌年に花つきや実つきが悪くなってしまいます。受粉をすませた実は、5月中に2~3回に分けて、余分な実を摘みとっていきましょう。「洋かりん」の品種であれば、葉っぱ60~70枚ほどに対して1個、「本かりん」の品種であれば、葉っぱ40枚に対して1個が適量です。残した実は、6月下旬までに袋をかぶせておくと、害虫の被害にあいづらくなります。
収穫
果実の色が緑から黄色へと変化し、甘い香りを放ちはじめたら、付け根から摘みとって収穫します。
マルメロの植え替えの時期と方法は?
根詰まりを防ぐ目的で、鉢植えは2~3年に1回、1回り大きな鉢に植え替えてください。適期は、12~2月です。植え替えの手順は、植え付け時と同じです。
マルメロの増やし方!挿し木の時期と方法は?
挿し木
2月中旬~下旬が適期です。新芽のついている、充実した枝を10~15cmの長さに切り取り、土に埋まる部分の葉っぱを取り除いてから、赤玉土(小粒)など清潔な土に挿していきましょう。根が十分に生えて、新芽が伸びてきたら、鉢か地面に植え替えます。
接ぎ木
2月中旬~3月中旬が適期です。台木には、種から育てたマルメロの苗か、梨の幼木を使います。
1. 台木を地上5~10cmところ水平に切る
2. 台木の切り口へ斜めに刃を入れ、逆三角形を作る
3. 増やす枝を10~15cmほどの長さに切り取る
4. 増やす枝の切り口を台木の切り口と合うよう整える
5. 増やす枝と台木の切り口を合わせ、接ぎ木テープなどで固定する
6. 切り口が乾燥しないよう、ビニール袋などで覆う
マルメロの栽培で注意する病気や害虫は?
マルメロの果実は、シンクイムシが入って中を食い尽くしてしまうことがあります。被害があっという間に広がるので、摘果後で残した実には袋がけをし、卵が産みつけられるのを防ぎます。また、サイアノックス水和剤や、アディオンフロアブル水和剤などを収穫までに何回かまくと、被害を減らすことができますよ。
マルメロは花も楽しめる果樹
マルメロは、本来樹高が高くなる果樹ですが、仕立て方によっては鉢植えでも果実を収穫して楽しむことができます。また、1本植えて花木として観賞する楽しみもありますよ。春に咲く白やピンクの花は、かわいらしく、見ている人を穏やかな気持ちにさせてくれます。病気や害虫の被害にもあいづらいので、まずは1本庭の仲間に加えてみてください。
更新日: 2016年02月03日
初回公開日: 2016年02月03日