細い葉っぱを密に茂らせる針葉樹は、そばにいくとさわやかな気分になれますよね。これは、「フィトンチッド」という植物が放出する化学物質のためで、針葉樹はその発散量が多いとされているんですよ。今回は、そんな針葉樹とはどんな樹木なのか、広葉樹との違い、庭木におすすめの種類などをご紹介します。
針葉樹とは?特徴は?
針葉樹とは、針のように細く尖った葉っぱをもつ裸子植物の総称です。世界中の温帯~冷帯に約500種が分布していますが、主に涼しい場所を好みます。広葉樹も元をたどれば針葉樹が祖先で、恐竜時代にはシダ植物に代わって地球上に繁殖していました。
特徴
針葉樹のほとんどは常緑で、細い葉っぱで日光を得ようと上へ上へと伸びていきます。花も地味で目立たず、受粉を助けてくれる昆虫を惹きつけられないことから、小さくて軽い花粉を大量に作り、風に乗せて飛ばすことで別株へと届けます。
こうした繁殖方法をとる植物を「風媒花(ふうばいか)」といい、樹木の中では針葉樹に多くみられる特徴となっています。
針葉樹と広葉樹との違いは?
広葉樹は、細胞によって割り当てられている仕事が違う分業制なのに対して、針葉樹の構造はシンプルです。水分や栄養を株に行き渡らせ、樹体の維持をまとめて担う「仮道管」と呼ばれる1つの細胞が90%以上を占めています。
細胞が少ないことから、一般に広葉樹よりも比重が軽くなります。また、細胞の種類が少ないのでやわらかく、木材の分野では広葉樹を「ハードウッド」、針葉樹を「ソフトウッド」と区別します。
庭木におすすめの針葉樹の種類は?
針葉樹は一般的に背の高いものが多く、育てるにはある程度のスペースが必要です。ただ、一度根付けば性質は丈夫なことから、育てること自体はそれほどむずかしくありませんよ。下記に、庭木におすすめの種類や代表品種を8種ご紹介します。
1. イヌマキ(槇の木)
イヌマキは、大気汚染や潮風に強く、生垣によく利用されている針葉樹です。樹高は15~20mと大きく生長し、松のような細長い葉っぱを茂らせます。雌雄異株で、雌株につく串団子のような実がかわいらしいですよ。
関東以南の暖かい地域に自生するため、寒さにはやや弱いところがあります。気温が十分に上がる5~6月に植え付け、冬は根元をマルチングすると安心です。枝を伸ばす力が強いので、毎年の剪定は欠かせません。
2. 松
日本画にも多く描かれ、古くから日本人に親しまれる松。樹齢が数百年と長く、種類によって1~50mと樹高も様々です。円錐形の樹形が美しく、生長するにしたがって広葉樹のように上下左右に枝を広げていきますよ。
水はけと日当たりのよい場所に植え、5月と11~12月の芽摘み作業で樹形を維持します。耐潮性の高い黒松、樹皮が赤褐色の赤松、生育の遅い五葉松など、用途に合わせた使い分けができ、自然樹形の美しいタギョウショウは洋風のお庭にもおすすめですよ。
3. カイヅカイブキ
カイヅカイブキは、洋風にも和風にも似合う、ビャクシンの枝変わり品種です。枝が巻き上がるように伸びる性質を生かし、高さ5m以下の円錐形に仕立てられることが多くあります。丸みのある鱗のような葉っぱが、他の針葉樹よりも優しい雰囲気を演出してくれますよ。
全体を刈り込むとき以外は芽摘みによる剪定が基本。ハサミを使った剪定は、葉先が傷んで美観を損ねてしまいます。日当たりのよい場所に植え付け、年に2~3回、株元に化成肥料を施しましょう。
4. カヤ
カヤは、大気汚染に強い性質をもち、都市部で人気の針葉樹です。幹は20mほどの高さまで伸び、幅も3mと大型。種は、炒ったものを食用にしたり、漢方薬として夜尿症や虫下しに利用されたりします。堅くて弾力のある材は、高級碁盤や将棋盤の材料としても有名ですよ。
日陰でもよく育ち、強剪定にも耐えます。ただ、大きく育つので、十分なスペースを確保しておきましょう。後は、余計な枝を毎年3~4月と10~11月に剪定すれば、ほとんど余計な手間はかかりません。
5. コニファー・ピラミダリス
コニファー・ピラミダリスは、イブキの園芸品種で、硬い銀青色の葉っぱを密に茂らせます。幹は垂直に伸びて横には張らず、放っておいても自然と円錐形に生長します。コニファーの中では樹高が低く、庭植えでも3m程度にまとまるので扱いやすいですよ。
葉っぱを密に茂らせる分、乾燥や蒸れに弱いことが特徴です。3~4月か9~10月に植え付け、剪定を行い、できるだけ湿度が高くならない環境を作ってあげることが大切になります。
6. イチイ(アララギ)
イチイは、寒さに強い針葉樹で、雪が枝に積もっても折れないほど丈夫なことから、寒冷地の庭木や垣根に人気となっています。また、生長も穏やかで、寿命が長いことから、シンボルツリーにもおすすめです。真っ赤に熟した実がキラキラした姿も美しいですよ。
強い日差しに当たると弱ってしまうので、直射日光を避けられる場所に植えましょう。一度根付いてしまえば、毎年7月と11月に剪定をして、自分好みの樹形に仕立てていきます。
7. コウヤマキ
コウヤマキは、日本を原産とする1属1種のスギ科の常緑樹です。和歌山県高野山の苗木が特に人気で、若木の頃は生長が遅く、手もかかりません。世界三大造園木の1つとされていますよ。
剪定は飛び出した枝を切り戻す程度でよく、放っておいた方が持ち味を生かせます。ただし、根は再生しづらいので、根付いた後の移植はむずかしくなっています。育てるのに適した場所を選び、腐葉土を十分に混ぜ込んで、水もちのよい土に植え付けます。
8. ナギ
針葉樹には珍しく、幅広い葉っぱを浸けるナギ。古くから人々の信仰の対象とされ、多くの神社のご神木として植えられています。また、「凪」という字から、船乗りの災難除けにも使われてきました。
日光のよく当たる場所で育て、若木は冬の防寒を忘れずに。それ以外は、病害虫の心配もなく、剪定の必要もほとんどありません。
針葉樹の種類は豊富
もともと、庭木といえば松やヒノキなど、日本古来の針葉樹が多く利用されていました。近年は、洋風住宅に似合う広葉樹やその園芸品種が豊富に出回り、針葉樹の出番が少なくなってきています。
和洋のバランスがとれたお庭は、誰の目にも魅力的に映るもの。針葉樹を1株植えて、庭に和のテイストを取り入れてみると、今までとは違った景観が楽しめるかもしれませんよ。
更新日: 2021年06月09日
初回公開日: 2016年01月27日