凛として涼やかな樹形が美しいヒメシャラ。魅力はなんといっても初夏の可愛らしい花と、すべすべとした触り心地をした赤褐色の樹皮です。身近に置くのにふさわしい観賞価値がありながら育て方は簡単で、暑さの厳しい季節に爽やかな風を運んでくれますよ。
今回は、そんなヒメシャラの花言葉の意味や由来、種類や品種、育て方などをご紹介します。
ヒメシャラ(姫沙羅)の花言葉は?意味や由来は?
『愛らしさ』『謙虚』
花言葉の「愛らしさ」は、透きとおるような新緑の中に楚々とした白い花をつけることにちなみます。また、ナツツバキより花が小さく、茂った葉っぱに守られるようにつつましく咲く様子から「謙虚」という花言葉がつけられました。
ヒメシャラ(姫沙羅)とは?どんな花を咲かせる植物?
ヒメシャラは、ツバキ科・ナツツバキ属の落葉高木樹です。庭植えに人気のナツツバキの小型種で、またの名を「小夏椿(コナツツバキ)」、サルスベリのような木肌から「猿田木(サルタノキ)」とも呼ばれています。
樹木全体にやわらかい絹毛があり、成熟するにつれ樹皮の表面がはがれて光沢が増します。夏になると、直径2cm程度の白い5枚の花を咲かせ、がくよりも長い2つの苞が特徴です。秋には落ち着いた雰囲気の紅葉が見られ、10~11月頃にできる濃褐色の実は熟すと5つに裂けて翼のある種を落とします。
ヒメシャラ(姫沙羅)の学名・原産国・英語名は?
- 学名
- Stewartia monadelpha
- 科・属名
- ツバキ科・ナツツバキ属
- 英名
- japanese stuartia
tall stewartia
- 原産地
- 日本(本州、四国、九州)
- 開花期
- 5~7月
- 花の色
- 白
- 別名
- サルタノキ
コナツツバキ(小夏椿)
ナツツバキ(夏椿)
シャラノキ(沙羅の木)
ヒメシャラ(姫沙羅)の開花時期と見頃の季節は?
開花時期は6~7月頃です。葉っぱの付け根付近に小さな丸いつぼみをつけ、ナツツバキより1回り小ぶりの可憐な花を咲かせます。
ヒメシャラ(姫沙羅)の風水での意味は?
風水では、樹木を通過してとどく風は、ストレスを癒すといわれています。ヒメシャラを鬼門方位(北東)に植え付けると、邪気を浄化して心地良い風に変え、家族関係を円満にする効果がありますよ。
ヒメシャラ(姫沙羅)の種類や品種は?
ヒメシャラは日本原産の小型品種です。本州の関東以西の太平洋側、四国、九州の山林に自生します。主幹を垂直に伸ばす性質があり、コンパクトに植栽できるとしてシンボルツリーや盆栽に好まれます。東アジアと北アメリカに8種類の仲間が存在し、庭木や植木のほか、木材や彫刻材、たきぎ、炭など幅広い分野で利用されています。
下記に、ヒメシャラの近縁種をいくつかご紹介します。
夏椿(ナツツバキ)
樹高10~20mにもなる大木で、「沙羅の木」とも呼ばれます。花の直径は5~6cmほどで、花びらに繊細なしわが入り、赤みの少ない灰褐色の樹皮をもちます。葉っぱの縁がのこぎり歯のヒメシャラに対して、本種の葉先は丸みを帯びています。
英彦山姫沙羅(ヒコサンヒメシャラ)
名前は、発見地で日本二百名山にも数えられる福岡県の英彦山にちなむものです。樹皮に黒い縞模様、花びらに紅斑があり、がく片は苞とほぼ同じ長さ、花は夏椿とヒメシャラの中間くらいの大きさです。
東国姫娑羅(トウゴクヒメシャラ)
神奈川県の周辺にだけ生息する希少な品種です。英彦山ヒメシャラの一種でよく似ていますが、葉っぱの中脈に絹毛があることで見分けます。直径4cmほどの花を樹木の上部に集中的につけます。
ピンクナツツバキ
中国原産種。中国では「夏梅(シャラメイ)」と呼ばれ、「夏椿’夜明け前’」や「桃色夏椿」の別名もあります。花びらが部分的にピンク色に染まる愛らしい品種で、以前は希少でしたが近年は取り扱いが増えて入手しやすくなっています。
アメリカ夏椿 マラコデンドロン
アメリカ産のナツツバキで、小木のうちから花が咲きます。開花時期は9~10月と、日本産のものに比べてやや遅め。花つきがよく、青い雄しべをもつ日本では珍しい品種です。
常盤夏椿(トキワナツツバキ)
5~8月頃に開花する中国産のナツツバキ。ヒメシャラと同じくらいの大きさのよく似た花をつけますが、咲き始めの花びらがやや黄緑色を帯びているのが特徴です。
ヒメシャラ(姫沙羅)の育て方!種まきの方法は?
種まき手順
1. 花が咲いた後、種を取り出して2~3日乾燥させ、ビニール袋に入れて冷蔵庫で春まで保管する
2. 底の浅い鉢やセルトレイに赤玉土(小粒)か種まき用の土を入れる
3. 土に種をまいてたっぷり水やりをする
4. 土が乾燥しないように管理して、本葉が4~5枚に育ったら植え替える
ヒメシャラ(姫沙羅)の育て方!鉢植え、地植えの時期と方法は?
休眠期の10~12月、または2~3月頃が適期です。地植えは半日陰の場所を選んで、根鉢の2倍ほどの大きさの植え穴を掘ります。苗を植え付けて、株を支えるために支柱を立てましょう。
鉢植えは、鉢底石、土を入れた後に苗を植え付けます。ただ、浅鉢の場合は夏は半日陰、冬はマルチングで防寒対策をして、育てるようにしましょう。
ヒメシャラ(姫沙羅)の土作り、水やり、肥料の時期と方法は?
土作り
庭土または黒土に、バーク堆肥や腐葉土を2~3割すき込んだ用土を使います。盆栽には、赤玉土4:黒土4:桐生砂2を混ぜた水はけのよい土が適しています。
水やり
水切れに弱く、土が乾きすぎると葉っぱがうつむいて枯れ込んできます。地植えはほぼ降雨だけで育ちますが、植え付けてから1年ほどは晴天が続いたら水やりをしてください。鉢植えは表土が乾きはじめたら水を与えます。
肥料
肥料はそれほど必要ありません。寒肥として1~2月頃に油かすや堆肥、化成肥料を適量施し、花後に少量の礼肥を与えておけば大丈夫です。
ヒメシャラ(姫沙羅)の剪定の時期と方法は?
ヒメシャラは自然な樹形が美しく、剪定をせずにありのままの姿を観賞します。萌芽力も弱いので、無理に切ると枯れることもあります。剪定をするにしても、混みあっている細枝を軽く間引く程度にとどめましょう。
ヒメシャラ(姫沙羅)の植え替えの時期と方法は?
植え付け後2~3年が経過した鉢植えは、土粒が崩れて水はけが悪くなります。2~3月の休眠期に、1回り大きい鉢に植え替えましょう。地植えは生長すると移植が難しくなります。
ヒメシャラ(姫沙羅)の増やし方!挿し木の時期と方法は?
ヒメシャラは、種まきと挿し木で数を増やすことができます。種まきは植え付け時と同じ時期と方法で行います。
挿し木
6~7月頃、新しく生えた枝を切り取って、挿し木にします。切り口を30分ほど水につけて、発根促進剤のルートンなどをつけます。その後、土に挿してから水やりをして、土が乾燥しないように管理します。十分に発根したら、植え替えましょう。
ヒメシャラ(姫沙羅)の寄せ植えの時期と方法は?
根元の乾燥を嫌うので、地際を埋めてくれる寄せ植えはおすすめです。よく茂る山野草や虫のつきにくい常緑低木をそばに植えると、幹の美しさを引き立てながら西日が根元に当たるのを防いでくれますよ。
ヒメシャラ(姫沙羅)の栽培で注意する病気や害虫は?
チャドクガ
4~10月に年2回発生する有毒の毛虫で、ツバキ科の植物の葉っぱを好んで食害します。集団生活を行う幼虫のうちに枝ごと取り除くのが確実ですが、拡散してしまったら殺虫剤を使用します。抜け殻、死骸にも毒があるので、素手で触らないように注意します。
カイガラムシ
幼虫には殺虫剤の散布、成虫はハブラシでこすり落とすか浸透移行性の薬剤を使います。風通しをよくしてこまめな駆除を行えば、生育に影響するほどの致命的なダメージは受けません。
ヒメシャラ(姫沙羅)の育て方のポイント!
午前中に日の当たる場所を好み、強い日差しと高温乾燥を苦手とします。適湿の土壌で西日を遮り、風通しのよい場所に植え付ければ、あとは放任気味の方がよく育ちます。生育はゆっくりですが、手入れが少なくてすむのでかえって手間がかかりません。
ヒメシャラ(姫沙羅)の木で園芸やガーデニングを楽しもう
盆栽で人気なだけあって、ヒメシャラは仕立てを楽しむ樹木でもあります。一本仕立て以外にも、根元から出た新芽を伸ばす株立ちは特におすすめです。数本の枝が繊細に立ち並ぶ木姿からは、凛とした和の風情が感じられますよ。
更新日: 2021年08月11日
初回公開日: 2016年01月02日